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初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

Lesson 25 画像編集のチェックポイント プリントの質を高めるRAW現像のヒント

RAWデータいて
まずはごしらえ

デジタルカメラとRAW現像ソフトの画像処理が異なる場合があります。レンズ補正やノイズ低減など、同時記録のJPEG形式の画像データではカメラ設定に従って画像処理が施されていますが、使用するRAW現像ソフトによってはそれらの効果が反映されないことがあります。カメラ側とは機能や処理などが異なる場合もあるため、RAW現像ソフトでRAWデータを開いたらまずそのあたりを確認し、必要に応じて手動で調整しましょう。RAW現像ソフトで最初に行いたい下ごしらえといえます。

レンズ補正

レンズ性能を活かした画像編集を心がけましょう。そのほうがシャープネスなどを適用するより自然な鮮鋭度が得られやすいです。レンズの光学特性により画面の四隅が暗くなったり、画像にゆがみが生じたりする現象はカメラのレンズ補正機能でも処理できますが、RAWデータの場合はRAW現像ソフトの機能を使用します。もちろんそれらをレンズの味としてプリント表現に活かしたい場合は、補正せずにそのまま残すことも可能です。

Digital Photo Professional

レンズ補正ツールパレット

絞りの影響により画像の鮮鋭さが低下する回折現象、色収差(被写体の輪郭などに発生する色のずれ)、色にじみ(高輝度部のエッジに発生することがある青や赤のにじみ)、周辺光量の低下、歪曲収差の補正ができます。基本的にはカメラのレンズ補正機能の設定内容が反映されますが、それよりも効果を強めるなど、Digital Photo Professionalではさらに細かい補正を行うことが可能です。[色にじみ][周辺光量][歪曲]はチェックを入れましょう。[回折補正]は回折補正機能があるカメラで撮影したRAWデータのみ補正が可能です。

キヤノンの対応レンズを使用すると[デジタルレンズオプティマイザ]にチェックが入ります。デジタルレンズオプティマイザとは、レンズの光学特性により生じる諸収差、回折現象、ローパスフィルターが起因する解像力の低下を補正する機能です。この機能を利用することで描写力が向上し、プリント品質を引き上げることが可能です。[回折補正]と[色収差]はデジタルレンズオプティマイザと同時に使用することはできません。

RAWデータを開いたときに[デジタルレンズオプティマイザ]にチェックが入っているかどうかを確認します。カメラで[しない]を選んで撮影したRAWデータも、チェックを入れると適用できます。チェックを入れられない場合は、更新ボタンをクリックしてレンズデータを追加します。

デジタルレンズオプティマイザの効果を適切に把握するために[シャープネス]のチェックを外します。カメラでは[しない][標準][強め]が選べますが、Digital Photo Professionalではスライダーを右に動かすと解像感が高まり、収差の補正も強まります。初期設定でテストプリントを行い、写真の絵柄やプリントの大きさなど必要に応じて効果を調整すると良いでしょう。

Adobe Photoshop Lightroom Classic

[レンズ補正]パネル

Adobe Photoshop Lightroom Classicにはレンズ補正のためのプロファイルが用意されています。[レンズ補正]パネルの[色収差を除去]と[プロファイル補正を使用]にチェックを入れると、色収差、歪曲収差、周辺光量低下が自動補正されます。気になる要素があれば、必要に応じて[補正量]の[ゆがみ][周辺光量補正]を手動で微調整をします。

[レンズプロファイル]の[メーカー][モデル][プロファイル]で選ばれている内容が間違っていないか確認をします。撮影で使用したレンズと異なる場合は選び直しましょう。レンズによっては、RAWデータに内蔵されたレンズプロファイルが自動で適用されて変更できない場合があります。

補正前 補正後

使用プリンター:PRO-S1
キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]

  • 補正前
  • 補正後

シャープネス

コントラストを上げて明るいところをより明るく、暗いところをより暗くして輪郭が鮮明に見えるようにする画像処理が「シャープネス」です。デジタルカメラ、RAW現像ソフトやフォトレタッチソフトに搭載されている機能です。強めて画像をシャープにしたり、弱めて柔らかな印象にできます。シャープネスを強め過ぎると輪郭やディテールが不自然に感じられるほか、ノイズも強調されてしまいます。

写真をくっきりと見せるためにシャープネスはとても重要です。プリントが引き締まって見えるなどの効果がありますが、どれくらいの強さにするのかは被写体やシーン、用紙の種類、プリントの大きさなどによって判断が違ってきます。輪郭の縁取りが生じないような控えめな設定のプリントで確認し、もの足りなく感じたら強めに調整するのが良いでしょう。シャープネスを何段階か変えてみて、プリントで見比べて判断するのも有効です。

Digital Photo Professional

シャープネス/アンシャープマスク

Digital Photo Professionalでのシャープネスは、基本ツールパレットの詳細設定、ディテール調整ツールパレット、レンズ補正ツールパレットで調整できます。いずれも連動しているので、どのツールパレットで調整しても問題ありません。リストボックスから[シャープネス]または[アンシャープマスク]を選びます。[シャープネス]は[強さ]のみですが、[アンシャープマスク]は[強さ][細かさ][しきい値]と画像の鮮鋭度をより詳細に調整できます。画面の拡大率を[200%]くらいにしたほうが、輪郭の縁取りが生じていないかなどを確認しやすいです。

撮影時のカメラ設定に応じた設定値になります。調整したあとピクチャースタイルを変更すると、それに連動して設定値がリセットされます。まずは[強さ]を[0]にしてプリントで効果を確認するのがおすすめです。鮮鋭度が足りないと感じた場合は少し強めると良いでしょう。

Adobe Photoshop Lightroom Classic

[ディテール]パネル

[シャープ]の[適用量]の初期設定は[40]ですが、これを[0]にしてプリントで効果を確認するのがおすすめです。それでも描写が甘くなるわけではなく、むしろ輪郭など滑らかで自然な印象です。レンズ性能を活かした仕上がりが望めます。それでも鮮鋭度が足りないと感じた場合は少し強めると良いでしょう。

[適用量]を上げると明暗差が大きくなり、シャープさが増して見えます。シャープネスを適用するピクセルの幅を調整する[半径]では主に輪郭が強調されます。細かい絵柄は少なめ、そうでない絵柄は多めに調整されますが、上げすぎると不自然な仕上がりになるので要注意です。[ディテール]を上げると細かいディテールが強調されて鮮明になります。[マスク]でシャープネスを適用する領域を制限することで、平坦な部分でノイズが強調されるのを抑えることができます。

[シャープ]調整のヒント

[マスク]以外を最大値 [マスク]を調整 [ディテール]を調整 [半径]を調整 [適用量]を調整
  1. 1
    [マスク]以外を最大値
    [適用量][半径][ディテール]のスライダーを右端いっぱいまでドラッグして最大値にします。
  2. 2
    [マスク]を調整
    空など平坦な部分からざらつきがなくなるまで[マスク]のスライダーを右へドラッグします。
  3. 3
    [ディテール]を調整
    細部の縁取りがなくなるまで[ディテール]のスライダーを左へドラッグします。
  4. 4
    [半径]を調整
    輪郭の縁取りがなくなるまで[半径]のスライダーを左へドラッグします。
  5. 5
    [適用量]を調整
    輪郭が背景になじむまで[適用量]のスライダーを左へドラッグします。

[シャープ]は下の項目から順番に調整していくのがバランスよく自然に仕上げるポイントです。画面の拡大率を[200%]くらいにしたほうが、輪郭の縁取りが生じていないかなどを確認しやすいです。

強め 適正

使用プリンター:PRO-S1
キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]

  • 強め
  • 適正

強め/適正

シャープネスを強調しすぎて不自然な仕上がりのプリントを目にすることがあります。ピントの甘さをシャープネスで誤魔化そうとしているケースもありますが、モニター表示では正しく判断できません。最適な鑑賞距離からプリントを見て判断しましょう。プリントの鑑賞距離については、基礎知識編のLesson 3「 画素数と解像度」で解説しているので参考にしてください。

プリントサイズはもちろん、用紙が変わると見た目のシャープさも変化します。パンフォーカスの写真は画面全体がシャープに見えるようにする必要がありますが、そうでない写真はピントが合って見える範囲(被写界深度)の部分だけで十分です。空や背景ボケなどシャープに見えなくても良い部分は、シャープネスによりノイズが強調されることがあります。シャープネスは鮮鋭度を高めたい部分にだけかけるくらいがちょうど良いでしょう。

角度調整

画面が傾いていると構図が不安定に見えることがあります。特に水平線が写っている写真は、ほんのわずかな傾きも目に付いて、プリントだとさらに気になりやすいです。カメラの電子水準器機能を利用するなど、きちんと水平を整えて撮影をしてもわずかに傾いていることがあるので、グリッド線を表示して傾きを確認しましょう。少しでも傾きが気になる場合は角度を微調整し、画面に対して真っ直ぐになるようにします。ただし角度調整の度合いに応じて画像がトリミングされるため、そのぶんの画素数が減ります。

Digital Photo Professional

トリミング/角度調整ツールパレット

ツールパレット

[角度]に数値を入力して画像の角度調整を行います。-45度から+45度の範囲(0.01度単位)で調整でき、プラス側で時計方向、マイナス側で反時計方向に画像が回転します。[グリッドを表示する]にチェックを入れると、角度調整するときに画面にグリッドが表示されます。水平線がガイドラインと平行になるように調整しましょう。[グリッドの間隔]でグリッドの大きさを変えることができます。

Adobe Photoshop Lightroom Classic

[切り抜き]ツール

ツール

[角度]に数値を入力するか、スライダーを動かすとガイドラインが表示されます。水平線がガイドラインと平行になるように調整します。角度補正ツールで水平線上をドラッグし、ラインを引いて傾きを調整することもできます。

フリンジ軽減

撮影した画像の輪郭に沿って色の縁取りが出る現象が「フリンジ」です。色収差による色にじみや色ずれのほか、偽色、色むら、色モアレといった撮像素子の特性などが要因で発生するものもあります。レンズの色収差によるものはレンズ補正で軽減できますが、補正しきれなかったり、レンズ以外の要因で発生した色が残る場合はフリンジ軽減機能で取り除きます。

フリンジはプリントではすぐに分かりますが、パソコンのモニターから全体表示で画像を見ただけでは気づきにくいものです。100%表示でゴミの確認や補正をしているときに、被写体の輪郭などでフリンジを見つけることがあります。逆光時など明暗差が大きな部分や、大口径レンズを開放絞りで撮った画像でよく目にする現象なので、特にそれらの条件では忘れずに確認しておきましょう。

Digital Photo Professional

ディテール調整ツールパレット

[色モアレ低減]にチェックを入れ、スライダーを操作したり、設定値を入力して画像に発生した色モアレを低減することができます。画像によっては色あいが変化することがあります。

補正前/補正後

Adobe Photoshop Lightroom Classic

[レンズ補正]パネル

[レンズ補正]パネルの[手動]タブでフリンジカラーセレクターを選択し、スポイトで紫や緑のフリンジをクリックします。必要に応じて適用量や色相を微調整します。プレビューエリアを300%くらいにズームするとフリンジをクリックしやすくなりますが、画面で見えていないほかの部分の輪郭が不自然になっていることもあるので、表示位置を変えて確認するようにしましょう。

補正前/補正後

フリンジ同様、撮像素子に付着したゴミや汚れがないか画面の隅々までチェックします。空を飛んでいる虫や鳥、飛行機なども、鑑賞者がプリントで判別できないほど小さければゴミや汚れにしか見えないことがあります。それらをどうするか判断が難しいところですが、プリントで確認し必要に応じて消去するのも有効です。印刷面が汚れていたり、不純物が混入していることもあるので、給紙前の用紙のチェックも大切です。濃いインクが乗れば隠れてしまうなど、給紙する用紙の向きで解決できる場合もあります。

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あなたの写真が変わるプリント講座【実践編】Lesson 25 画像編集のチェックポイント
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/print-howto/lesson25
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/print-howto/image/1.png?la=ja-JP&hash=0A7FFD82FECAE1787B196782EB84DD05
2025-03-13