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初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

Lesson 19 写真展を開く たくさんの人にプリントを見てもらう

写真展魅力

近年はインターネットで写真を見る機会が増えました。プロ、アマを問わず、世界中の写真家の作品も見られます。以前は写真集や写真展などでしか写真鑑賞はできず、しかも著名な写真家の作品に限られていました。オリジナルプリント(写真家が自分の作品として認めたプリントのこと)を見られるのは、もちろんいまでも写真展だけです。それらには作者のこだわりがたくさん詰まっていて、鑑賞することで刺激を受けたりいろいろな学びがあったりします。美術館やギャラリーなどに足を運んで、オリジナルプリントに直接目に触れる機会を作ると良いでしょう。

写真展を開催することで、自分の作品もたくさんの人に直接見てもらえます。作品やプリント制作の目標を写真展に設定することで、写真の楽しみ方が大きく広がります。ポートフォリオは目的に合わせて人に見てもらうのに対し、写真展は不特定多数の人が対象となります。しかも自分から見せに行くのではなく、わざわざ足を運んでもらうわけです。

写真展は1人で開催する「個展」と、複数人で開催する「グループ展」に分けられます。どちらもギャラリーなどのスペースを借りて開催しますが、個展のほうが作品数が多く費用もかかるなど負担が大きいです。グループ展は作品のサイズや点数に制限が生じるなど思い通りの展示ができないこともありますが、複数人で空間を共有するため負担は少なくなります。いきなり個展ではなく、まずは仲間と一緒にグループ展を開催するなど無理のないところから始めると良いでしょう。グループ展で経験を重ねながら、作品を増やしたり質を高めていったりすることができます。

写真展ではプリントに仕上げた作品を見てもらうだけでなく、来場者と会話を交わすことでさまざまな意見や感想を聞くことができます。写真の技術と表現、それぞれの面での良い部分や足りない部分を知ることにもつながります。それらを次の作品に向けての課題にするなど、展示を繰り返すことは写真のレベルアップにも効果的です。

展示する場所

写真専門のレンタルギャラリーが増えるなど、以前よりも写真展が開催しやすくなっています。写真教室の修了展以外にも、インターネットで知り合った仲間とグループ展を開催するなど、プリントで作品発表を行う人が増えています。まずは気軽に展示できる場所から挑戦すると良いでしょう。カメラメーカーなどのギャラリー公募、コマーシャルギャラリーでの作品の展示や販売はハードルが高いのですが、プリントでの作品制作を続けていくことで実現の可能性も見えてくるかもしれません。写真作品が展示されている場所は、美術館のほかに以下のような場所があります。

メーカーギャラリー カメラメーカーなどが運営するギャラリーです。基本的に自社製品の広報宣伝活動を主な目的としています。集客力があり、たくさんの人に作品を見てもらえるメリットがあります。公募により選ばれた作品が展示でき、ギャラリーの使用料が無料の場合が多いです。
キヤノンギャラリーについて詳しくはこちら >
コマーシャルギャラリー 作品の販売を目的として運営されているギャラリーです。企画展が多く、ギャラリーの契約作家など展示できる人は限られています。ポートフォリオレビューに参加するなどプレゼンテーションの機会があれば、展示へのチャンスが開けるかもしれません。
レンタルギャラリー 有料の貸しギャラリーです。東京や大阪に限らず日本全国にあります。規模や運営スタイルはいろいろですが、その多くは申し込みをすれば誰でも利用可能です。費用はかかりますが、個展やグループ展など作品発表の場として活用すると良いでしょう。
公営ギャラリー 自治体や公共団体が運営するギャラリーです。その地域の在住者や在勤者であれば利用できるところが多く、レンタルギャラリーより会場費が低めに設定されていたりします。ただし作品の販売ができないなどの制約がある場合もあります。
ギャラリーカフェ ギャラリーと飲食できるスペースが一緒になったカフェです。バーやレストランにも同様のスペースを併設しているところがあります。展示や鑑賞の方法に制限があるなど一般的なギャラリーより自由度は低めですが、会場費が安価であるなど費用面での魅力もあります。
自主ギャラリー 個人や仲間と共同で運営するギャラリーです。家賃や光熱費など維持費がかかりますが、自分たちのペースで写真展を開催できるなどのメリットがあります。スケジュールに空きがあるときは、レンタルギャラリーとして貸し出しを行っているところもあります。

展示方法

写真展ではプリントだけでなく、額装などを含めた展示された状態のものが作品になります。額装にはプリントの保護や装飾などの目的がありますが、作品に合っているかどうかが一番のポイントになります。さらにはギャラリー空間とのバランスも大切です。写真は絵画などより情報量が多いため、できるだけシンプルな額装がお勧めです。

展示する作品の大きさもとても重要です。プリントに合わせて額装など大きさを考えるケースもありますが、展示作品の大きさを決めてから、それに合わせてプリントサイズを算出する方法もあります。規格サイズの額縁を購入したり、レンタルフレームを利用したりするときは後者で、額装が決まらないとプリントが始められないことになります。

写真作品の場合、フレームまたはパネルのどちらかの展示方法を選択するケースが多いです。材質、色、形状、構造などいろいろあり、それらの組み合わせ方でプリントの見え方は大きく変わります。写真展に限らず自宅に作品を飾るときも、これらを意識してみると良いでしょう。

フォトアクリル

プリントの表面にアクリル板を圧着する展示方法です。基本的に専門業者に加工を依頼することになります。アクリルにより用紙の風合いが感じられなくなりますが、作品に奥行きや立体感が生まれます。光の透過性が高くエッジも美しく仕上がります。裏側に木製の吊り枠(ゲタ)を取り付けることで、壁面から浮かせて展示できるようになります。

アルミマウント

アルミプレートやアルミ樹脂複合パネルにプリントを圧着する展示方法です。用紙の面質を活かした見せ方が可能で、平面性に優れているため大判プリントにも対応できますが、専門業者に加工を依頼することになります。裏側に木製の吊り枠(ゲタ)を取り付けることで、壁面から浮かせた展示もできます。ほかの素材でも同様の展示方法が可能ですが、ポリスチレン発泡パネル(ゲータボード)など平滑性がいまひとつのものだと、高光沢や薄手のプリントはその影響を受けやすくなります。ファインアート紙の場合、使われている基材によってはエッジが美しく仕上がらないこともあります。

ウッドフレーム

木製の額縁です。存在感のある作品になり、木材の種類や塗装を選んだり、フレームの幅や厚みにもこだわることができます。規格サイズの市販のものは選択肢が限られますが、額装業者に制作を依頼することで作品に合った見せ方が可能になります。「マット」と呼ばれる窓の開いた台紙を付けて額装するのが一般的です。マットを付けずに額装したい場合は、プリントの裏側を補強して平面性を出す裏打ち加工をすると良いでしょう。前面にガラスやアクリルを入れるかどうかでプリントの見え方が変わります。

アルミフレーム

アルミ製の額縁です。木製のものより安価で軽量です。色はシルバーとブラックが一般的ですが、光沢があるものとないもの、フレームの幅や形状などいろいろ選べます。ギャラリーや額装業者などのレンタルフレームサービスで利用できるのもほとんどがアルミフレームですが、細かい傷が付いているなど作品の印象が悪くなることもあります。ウッドフレームと同様、マットの有無、前面にガラスやアクリルを入れるかどうかなどでプリントの見せ方を変えることができます。

ウッドパネル

木製のパネルにプリントを貼り付ける、従来からあるオーソドックスな写真展示の方法です。最も安価に仕上げられます。大判プリントにも対応可能で、しかも軽量です。制作を依頼する業者によっては、側面の化粧テープの色を選べることもあります。規格サイズの市販品は量販店などで比較的入手しやすく、自分の手でパネル加工を行うこともできます。

マットパネル

木製のパネルの上にマットを貼り付ける、ウッドパネル同様に従来からある展示方法です。額縁のような雰囲気の見せ方を手軽に味わえます。規格サイズの市販品も入手しやすく、ウッドパネルより加工も簡単です。額装業者に制作を依頼すれば、マットや側面の化粧テープの色を選べたり、窓のサイズをプリントに合わせたりすることが可能です。

写真以外の展示でも良いので、日ごろから積極的にギャラリーへ足を運んでみましょう。作品を鑑賞するだけでなく、展示方法にも目を向けるといろいろと勉強になります。

フレームやパネルは写真やインテリア関連のショップ、量販店などでも入手できますが、市販品だとそれらにプリントのサイズや縦横比を合わせることになります。作品にぴったりの製品が見つけられれば良いのですが、額装を含めた作品制作の楽しさを知るうえでも、写真に合わせてオーダーするのがお勧めです。額装業者は全国にたくさんあり、絵画や書道など幅広く取り扱われていますが、できるだけ写真の展示に精通している工房を選ぶと良いでしょう。オンラインサービスを提供しているところもあります。

額装ヒント

ウッドフレームやアルミフレームを使用して展示する場合、「マット」と呼ばれる窓の開いた台紙にプリントを装着するのが一般的です。マットを制作する際にはサイズ、色、窓の大きさや位置などをきちんと決めておく必要があります。最適なマットの幅はプリントの大きさによって変わりますが、3inch(1inch=25.4mm)くらいが目安です。そこから計算すれば、プリントされた写真のサイズに合ったマットサイズ(=フレームの内寸)が決まります。市販のフレームを使用する場合は、そこから逆算してプリントする写真の大きさを決めることもできます。

マットの色も重要です。できるだけ写真より目立たないほうが良いです。「白」といってもいろいろで、余白出しをする場合はプリントの紙色とのバランスも考慮に入れましょう。紙色が明るければ、マットも明るめにするのがお勧めです。黒いマットは照明の反射などで表面の起毛や傷などが目立ちやすい傾向です。角度によってはグレーに見えるなど、写真の中の黒ほど締まらないので安易に選ぶと逆効果です。マットの芯は窓のエッジで見えるため、黒いマットは白と黒のどちらの芯を選ぶのかもポイントです。

マットを使用しないで額装することも可能です。プリントの平面性を出して波打たないようにボードなどに圧着する「裏打ち」と呼ばれる加工が必要になりますが、プリントの余白を活かしたり、余白なしで画面のすぐ外側がフレームという見せ方もできたりします。プリントの平滑性や見栄えも良くなります。

オーバーマットとブックマット

マットボードに窓を開け、裏からテープでプリントを固定するのが「オーバーマット」です。表面だけに被せるのでマットボードは1枚だけですが、取り外すときにプリントを傷付けてしまう可能性があります。裏打ち加工の場合は、プリントの上にオーバーマットを圧着する感じになります。

窓を開けたオーバーマットと、プリントを固定する台紙(アンダーマット)をテープで本のように綴じるのが「ブックマット」です。プリントはコーナーポケットを使って台紙に固定します。直接テープや接着剤を付けないためプリントを痛めず、鑑賞用と保存用を両立できます。フレームへの出し入れも2枚のマットボードに挟んだ状態で行うため、プリントに触れずに済みます。

被せと余白出し

マットの窓の内側に写真全体を収めるのが「被せ」、プリントの余白を見せるのが「余白出し」で、作品の印象を左右します。マットを被せる場合、開けた窓とプリントした写真の大きさが全く同じだと、少し位置がずれただけで余白が見えてしまいます。そのため窓は写真より2mmくらい小さめにして少し被せるようにします。

余白出しにする場合、その幅が1mm違うだけで作品の印象が大きく変わります。プリントやマットの大きさにより前後しますが、5~7mmくらいがバランス良く見える余白出しの目安です。なお、ブックマットはマットボードでプリントを挟むだけなので、ばたつきを抑えるために最低でも15mmくらいは余白を付けて印刷するようにします。余白出しの場合は、さらにそのぶんをプラスして余白の幅を決めましょう。

偏芯を付ける

マットボードに対し、窓を開ける位置を中心からずらして見た目のバランスを整えることを「偏芯」と呼んでいます。マットの窓が完全に真ん中だと、写真が少し下がって見えることがあります。そのようなときは窓の位置を少し上にすると良いでしょう。マットの上下の比率を46%:54%くらいにするとバランス良く見えるようになります。横位置や正方形の写真を縦向きのフレームにレイアウトするときはもう少し上にすることもあります。正方形の写真の場合は48%:52%くらいが目安です。

マットのレイアウト

フレームを横向きと縦向きのどちらで使用するか、それに対して写真をどのようにレイアウトするかによってマットの幅や窓の配置などのバランスも変わります。通常、横位置の写真はフレームは横向き、縦位置の写真はフレームは縦向きにしますが、横位置の写真でフレームを縦向きに使うのも有効です。写真は小さめになり、横方向への広がりがあまり感じられなくなりますが、個性的な見せ方になります。横位置と縦位置のどちらの写真もフレームを縦向きで統一すると、整然とした印象の展示になります。

プリントが外気にさらされていると傷みやすくなるため、ガラスやアクリルを前面に入れるのがお勧めです。プリントの風合いが感じられにくくなりますが、鑑賞者に不用意に触れられるのを防ぐこともできます。アクリルは軽くて割れにくく、紫外線の透過がガラスに比べて少ないのが特徴です。ただし傷が付きやすくたわむこともあり、静電気により埃が付着しやすいです。ガラスは傷付きにくく、たわむこともなく、静電気の心配もほとんどありません。しかし重くて割れやすく、紫外線を透過しやすい傾向です。普通のアクリルだと照明や窓からの外光の反射、映り込みなどが目障りに感じられるので、少し高価ですが低反射のものを入れるのがベストです。

展示レイアウト
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写真展では作品の内容やプリントのクオリティーはもちろん、展示のレイアウトや照明などスペースを上手に演出することも大切です。作品のテーマやコンセプトに合った見せ方にするなど、鑑賞者に自分の表現が伝わるような空間作りを心がけましょう。

展示レイアウトはあらかじめ決めておくことをお勧めします。写真展を行うギャラリーへ何度も足を運び、どのような見せ方にするのかイメージを明確にすると良いでしょう。展示する順番だけでなく作品の高さ、作品と作品の間隔なども重要です。例えば横一列で均等間隔に展示すると、一定のリズムで作品を見せられるようになります。鑑賞者の目線の高さは140〜145センチくらいが目安で、作品の中心がこの高さで揃うように展示します。

1段掛け

作品展示の基本形は横一列でのレイアウトです。作品と作品の間を均等間隔にすることで整然とした見せ方ができます。写真の横位置と縦位置、横向きと縦向きのフレーム、サイズの大小などが混在する場合は、作品の中心で高さを揃えるようにしましょう。高さは小さい作品を基準に決めるのがポイントです。

2段掛け

複数段で展示する場合は左右だけでなく、上下の間隔も大切です。上下左右の間隔を均等にしてグループを作るほか、意図的にくっつけたり、あるいは離したりして動きを付けるのも有効です。1段と2段を混在させたレイアウトも良いでしょう。作品の高さも重要で、下の段は低いぶんには見下ろしたり、少しかがんだりすれば良いだけですが、上の段は見上げるようになり、照明が映り込むなど写真が見づらくなることがあります。

展示レイアウトの図面作成

展示レイアウトの図面を作成することも大切です。インデックスプリントのコマをカットして、展示する順番が分かるように用紙の上に並べて貼り付けたものでも良いのですが、ギャラリーの図面を参考に、高さや間隔などをきちんと算出し記載したものを用意するのがベストです。厚紙などでギャラリーの模型を作ると、平面図では分かりづらい部分も確認しながら立体的にレイアウトを考えることができます。

2段掛け

レイアウトの図面があれば、後は実際の飾り付けのときにバランスを調節しながら作業を進めることができます。高さや間隔などできるだけ細かく決めておくことで、現場での作業の効率化が図れるだけでなく、より印象的な空間にするための余裕が生まれます。

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あなたの写真が変わるプリント講座【上級編】Lesson 19 写真展を開く
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/print-howto/lesson19
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/print-howto/image/1.png?la=ja-JP&hash=0A7FFD82FECAE1787B196782EB84DD05
2023-10-20