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初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

Lesson 18 ポートフォリオを作る まとめた作品をプリントでプレゼンテーション

ポートフォリオとは

プリントに仕上げた作品をどのような形で人に見てもらうか、その方法はとても重要です。自分の写真表現を印象付けるために、見やすく伝わりやすいベストな方法を選択しましょう。

複数の写真をひとまとめにした作品は「ポートフォリオ」にするのが一般的です。ポートフォリオとは作品集のことで、もともとは紙挟み(書類などを挟んでおく文房具)や書類を入れる折りかばんなどを意味する言葉のようです。写真の世界でもプリントを保護して持ち運ぶため、そのように呼ばれ、作品のプレゼンテーションのための大切なツールとして多くの写真家が制作に取り組んでいます。ポートフォリオには投資家が所有する金融資産の一覧表や資産構成などを指すこともあるようですが、写真家にとっても同じような存在といえるでしょう。プレゼンテーションやコンテストに応募するためだけでなく、ポートフォリオそのものを作品として販売するケースもあります。

ポートフォリオの制作過程では、作品を客観的に見つめ直すきっかけにもなります。写真集やフォトブックのように製本したものとは違って、後から写真を入れ替えたり、順番を並び替えたり、プリントをやり直したりなどアップデートにも柔軟に対応できるので、作品の完成度を着実に高められるのです。

ポートフォリオ
形態

ポートフォリオにはブック式とケース式の主に2つのタイプがあります。どこで誰にプレゼンテーションを行うのかなど、ポートフォリオの用途や目的に応じて最適な形態を選びましょう。

ブック式はアルバムやバインダーなどを使用してプリントをファイリングしたものです。ページをめくりながら見るため、製本された写真集のようにストーリーなど作品の流れを伝えることができます。ケース式は化粧箱などにプリントを重ねて入れるほか、ブックマット(窓を開けた表側のボードと、プリントを支える裏側のボードをテープでつないで本のように開閉できるマット形式)に入った作品も収められます。プレゼンテーションの際は箱から取り出すため、プリントを並べて見せることも可能です。直接手に取ってもらい、プリントの風合いも感じてもらえるでしょう。

ブック式とケース式のどちらも市販されている写真用品の中から、プリントの整理や保管とプレゼンテーションの両立を考えて選ぶのがベストです。クリアファイルや書類ボックスといった事務用品は、プリントの保存性に不安があるほか、見た目や手にした印象などもいまひとつに感じられるため、プレゼンテーション用としてはお勧めできません。

ブック式

事務用品のクリアファイルは頼りない作りで、プリントを入れるポリプロピレン製の「リフィル」は透明度が低く薄めであるためプリントが傷みやすくなります。写真用品のポートフォリオ専用のファイルのほうがしっかりした作りで高級感もあります。開きの良い製品だと、両方のページのプリントが見やすいです。プリントを入れるリフィルはできるだけ高透明で、ページをめくるときにシワになりにくいものを選ぶと良いでしょう。

ケース式

プリントをそのまま箱に入れるため、用紙の質感など1枚1枚を手に取って見てもらうことができます。事務用品の書類ボックスとは違い、写真用品のものは内側に中性紙や無酸紙が貼ってあるため、プリントの劣化を抑えるなど保存性に優れています。保存用の「ストレージボックス」より、プレゼンテーション用の「ポートフォリオボックス」のほうが見た目が良く高級感もあります。作りも丈夫で持ち運びにも対応でき、プリントをしっかり守ってくれます。出し入れしやすく、箱の中でプリントを移動できるクライムシェル型の製品もあります。

ポートフォリオ
活用する

ポートフォリオの活用方法はいろいろあります。例えば写真展ではスペースの関係などですべての作品を展示できないことがあります。特にグループ展では出展者が複数いるため展示できる作品の数が少なくなりがちですが、ポートフォリオを会場に置くことで展示できなかった作品も見てもらえるようになります。

ポートフォリオは写真展を実現するために必要なツールです。ギャラリー公募で提出するポートフォリオは、ブック式とケース式のどちらの形態なのか基本的に決まっています。出展作品見本となるプリントのサイズなども指定されているので、応募要項をきちんと確認しましょう。六切(むつぎり)〜A4サイズのプリントを提出するケースが多いです。出版社などへの作品の持ち込みやポートフォリオレビューの場合はA4〜A3サイズくらいが一般的です。

ギャラリー公募

応募規定に沿った作品であることが前提になりますが、カメラメーカーなどのギャラリー公募に挑戦するときにもポートフォリオを活用します。これに選ばれるとギャラリー使用料が無料になるなどの特典付きで写真展が開催できます。有料のレンタルギャラリーの場合も、どのような写真展で使用するのか、ポートフォリオによる展示内容の確認が必要となるケースもあります。

キヤノンギャラリーの公募の場合、応募時に提出する出展作品見本のプリントは30枚以上、50枚未満で、サイズは六切からA4サイズ程度となっています。そして必ずブック式ファイルに入れるよう明記されています。このほか作品のテーマと解説をまとめたA4用紙と、ギャラリー出展申込書の所定事項の記入が必要です。

出版社への作品持ち込み

小説家や漫画家志望の人が出版社に作品を持ち込むことがあります。写真家も同じで、雑誌に作品を掲載してもらいたいときなど、ポートフォリオを持って出版社の編集部に売り込みにいくケースは少なくありません。事前にアポイントを取ることが大切ですが、ポートフォリオを見てもらった結果、掲載してもらえることがあります。写真集を作りたいときも同様で、自費出版などどのような方法で実現可能なのか相談にのってもらうこともできます。編集者との面談になるため、掲載の可否だけでなく、どうすれば作品がもっと良くなるのかなどアドバイスをもらえることもあります。

ポートフォリオレビュー

フォトフェスティバルなどで行われている「ポートフォリオレビュー」というイベントがあります。近年は日本でも多く開催されるようになりました。コマーシャルギャラリーのギャラリスト、出版社の編集者、美術館のキュレーターといった写真業界のエキスパートの方たちが、新しい写真家との出会いを求めてレビュアーとして参加しています。ポートフォリオを使って作品を直接売り込める貴重な機会で、レビュアーの方に評価されれば写真集の出版、作品を販売するコマーシャルギャラリーでの写真展の開催、美術館への作品収蔵などの道が開けていきます。参加費が必要なケースもありますが、複数のレビュアーにプレゼンテーションできます。限られた時間となるため、しっかり準備を整えておくことが大切です。

ポートフォリオに入れる写真の枚数に特に決まりはありません。しかし少な過ぎると情報不足で作品の良さが伝わりにくいことがあります。反対に多過ぎると、審査員やレビュアーなど見る人の集中力が途中で切れてしまいやすくなります。枚数が多く感じるか、少なく感じるかは作品の内容によっても違ってくるでしょう。写真展を目指している場合は展示内容が分かる枚数が必要で、ギャラリー公募は30~50枚のケースが多いです。一般的には20〜30枚、ポートフォリオレビューでは20枚くらいが目安になりますが、それより枚数が多くても基本的に問題ないでしょう。

プリントと一緒に入れるものなど、ポートフォリオの用途や目的によって中身の構成が違います。タイトルやステートメント、プロフィールなどの文字情報を加えることで、ポートフォリオがより機能的になります。それらを印刷したページを挿入すると、作品の内容がより伝わりやすくなり効果的です。キャプションを入れる場合は写真とどのように組み合わせて見せるかがポイントです。プリントの余白に印字するのも良いでしょう。ギャラリー公募では、壁面のレイアウトなど展示プランの提出が必要となる場合もあります。

プリントにこだわった
ポートフォリオ

ブック式のポートフォリオはリフィルにプリントを入れてファイリングするため、半光沢紙もマット紙もすべて光沢紙と同じような見え方になってしまいます。プリントや用紙のこだわりが伝わりづらくなるのです。ケース式はプリントをそのまま収められますが、ブック式のような見せ方はできません。

プリントをそのままファイリングできる、用紙メーカーや写真用品メーカーなどから発売されているフォトアルバムキットがあります。必要なパーツがパッケージされているのでとても便利で、印刷から製本まで購入してすぐにできます。しかも高品位な仕上がりが得られるため、プリントにこだわったポートフォリオに最適です。

イルフォード ギャラリー
ファインアート アルバム

合成皮革のカバーは耐久性と撥水性に優れていてサイズが選べます。アルバムに綴じるための穴が開けられた専用のものになりますが、対応するファインアート紙が10種類以上用意されている点も魅力です。対応用紙はページを開きやすくする加工が施されています。

プリントに穴を開けてバインダーにセット

リフィルにプリントを入れるポートフォリオのような柔軟性を求めるなら、多穴バインダーを利用すると良いでしょう。用紙に穴を開けることになりますが、プリントが汚れたり傷んだりしたとき、印刷し直して差し替えることもできます。両面印刷に対応したファインアート紙もあります。

穴を開けるノド部分は余白を少し広めにし、両面印刷ではページの表裏で写真の天地が逆にならないように注意します。市販の多穴バインダー用パンチで穴を開けます。
多穴バインダーは事務用品ではなく、カバーがしっかりしたポートフォリオ用のものがお勧めです。穴の部分が傷みやすいので、用紙は厚手のものを選ぶと良いでしょう。
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あなたの写真が変わるプリント講座【上級編】Lesson 18 ポートフォリオを作る
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/print-howto/lesson18
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/print-howto/image/1.png?la=ja-JP&hash=0A7FFD82FECAE1787B196782EB84DD05
2023-10-20