vol.03 情動
公開日:2020年7月9日
喧騒に溢れる雑踏、複雑に絡み合う色彩、
息苦しいほどの熱気。
印度の強烈なエネルギーに触れるとき、
不思議と落ち着く。
それは猛烈な混沌の中心に、
「熱情」を見出すからかもしれない。
砂漠の荒野に埋もれる村で、混沌が渦巻く街角で、
夜明けの大地を走る夜行列車で。
印度の熱情は心の奥底へと浸透し、
私に写真を撮らせた。
写真は、熱情なのだ。
コルカタからラジャスタンまで旅した。
移動をするたびに、印度の景色は目まぐるしく変化していく。
情動とは、心の動きのこと。
写真家はそれが言語化される前に、写真に置き換える。
印度はその熱情をもって、私の心を揺さぶり続けた。
旅の最後。砂漠の真ん中で空を見上げた。
そこには、それまで一度も出会ったことのないような夕焼けがたゆたっていた。
写真は自身の心の投影なのだとしたら、このときの空は私の情動であった。
- 沖縄の海の世界に驚き、自身が見て感じたことを記憶に残そうと写真をはじめる。「大地と人の繋がり」を求めて世界中の国々を旅し、これまで訪れた国と地域は140を超す。2010年3月から世界一周の旅を敢行。北米、南米、アフリカ、ユーラシアなど、1021日で103カ国を巡る。