山岡 三和 写真展「父と還る」
公開日:2025年10月27日
父の故郷について、父が何度も私に話してくれた大好きな話があります。
幼い頃、私と姉が食べた枇杷の種を祖母が畑の畦道に植え、大切に育ててくれた大きな枇杷の木の話です。
豊かな土壌は、絶えることなく綿々と実りの季節を迎え続けます。
父はいつも嬉しそうに「食べるか?」と、少し乱暴にもぎ取った枇杷の実を私に差し出してくれます。
その祖母も亡くなって17年。父の故郷の田畑や家屋は、今、ゆっくりと原野へと還りつつあります。
父は朽ちてゆく故郷へ、以前にも増して通い続け、ただ黙々と草を刈り続けています。
多くの人々が新たな豊かさを希求した時代に故郷を離れた父。その父が今、「生まれた場所じゃけぇね。」と、土と共に生きた祖父母の面影が残るこの場所に通い続ける姿に、私は導かれ、父へカメラを向け続けました。
ファインダー越しに見つめる、私の知らない父の横顔。そして父の故郷の風景は、移ろいゆくことの喪失感と美しさを同時にまとい、今を生きる私に多くのことを語りかけてくるようでした。
父は何を思い、導かれ、待つ人のいない故郷へ通い続けているのだろうか。
答えのない問いに思いを馳せながら、これからも父と父の故郷を見つめ続けてゆきたい。
| 開催日程 | 会場 |
|---|---|
| 2026年1月6日(火)~1月17日(土) 10時30分~18時30分(日曜・月曜・祝日休館) |
キヤノンギャラリー銀座 |
| 2026年3月3日(火)~3月14日(土) 10時~18時(日曜・月曜・祝日休館) |
キヤノンギャラリー大阪 |
トークイベントのご案内
ギャラリートーク
- 会場
- キヤノンギャラリー銀座
- 日時
- 2026年1月9日(金)19時~20時
- 定員
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先着30名
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※
11月10日 10時より予約開始。下記の「申し込みページへ」のボタンよりお申し込みができます。
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- 観覧方法
- 事前予約
作家プロフィール
山岡 三和(やまおか みわ)
広島県生まれ
カリフォルニアに留学中に写真と出会う。
さまざまなジャンルの広告写真で活動する中、農家だった祖父母の死をきっかけに、耕作放棄地の問題に直面し、日本の農業を豊かにするために写真を撮ると決意する。
現在は、オイシックス・ラ・大地の専属フォトグラファーとして、食や耕す人の写真と映像をメインに活動中。
日本広告写真家協会正会員
受賞歴
2010年 APAアワード2010 写真作品部門 入選
2016年 APAアワード2016 写真作品部門 入選
2024年 第2回CANON GRAPHGATE 佳作
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