2020年キヤノンカレンダー 野町 和嘉 写真展:World Heritage Journey 世界遺産を訪ねて
公開日:2019年12月24日
最終更新日:2023年10月8日
本展は、写真家 野町和嘉氏による2020年版キヤノンマーケティングジャパン・カレンダー「World Heritage Journey 世界遺産を訪ねて」を飾る作品12点を含む、24点を展示する写真展です。
第3回目となる今年も、氏がヨーロッパ、アフリカ、アジア、北中米と幅広く世界を飛び回り、地球上の自然の神秘、文化と歴史を探求した作品の数々をご覧いただき展示します。
開催日程 | 会場 |
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2019年12月24日(火)~2020年2月17日(月)
※ 日曜・祝日休館 |
キヤノンオープンギャラリー1(品川) |
作家メッセージ
本年カレンダーに登場する世界遺産のなかで、私にとって思いの深い土地は10月のアイット-ベン-ハドゥの集落、モロッコである。モロッコを初めて訪れたのは1972年、20代半ばのことで、パリで手に入れたポンコツ車を駆っての旅だった。半世紀近くも昔のことであるから、北アフリカに関する旅の情報などほとんどなかった。高い壁で囲まれた迷宮のなかで人々が蠢くフェズの旧市街、そしてアトラス山脈のオアシスに聳える赤土を固めたカスバと呼ばれる城砦集落も、異次元世界の佇まいであった。モロッコとサハラ砂漠に魅せられその後何年も通うことになるが、あるとき山中のカスバに民泊させてもらったところ、寝袋の中に侵入した何匹もの蚤の襲来にパニックになったこともあった。
約20年のブランクを経て2012年に訪れてみると、重厚な扉と銃眼で武装していたカスバの多くが廃墟と化し、あるいはコンパクトなコンクリート造りの家に建て替えられ、すっかり雰囲気が変わっていた。唯一、1987年に文化遺産に登録されたことで、原形がしっかりと保たれているこのアイット-ベン-ハドゥの集落を例外として。
14年ぶりに訪れたインドのタージ・マハルでは、思ってもいなかった深い霧のなかにそそり立つ白亜の霊廟に遭遇し、息を呑んだ。背後を流れるヤムナー川の川面で発生した霧の層が霊廟の低層を覆うように流れ込んでいた。幻想的な光景とは対照的に、入場者は金属探知機による厳重なゲートを潜らなければならなかった。隣国との戦時体制下で、国内でもテロが頻発するインドにあって、他の世界遺産とは違って、至宝タージ・マハルは厳戒下に置かれていた。
サンフランシスコの空港からレンタカーで5時間走って到着したヨセミテ国立公園では冬の嵐に遭遇し、積雪の重みで落下した巨木の枝で道路があちことで封鎖され、さらに近づいてくる次の嵐を避けるために、2日間撮影しただけで早々に下山せざるを得なかった。
暗いジャングルを30分歩いて忽然と出現する、グアテマラ、ティカル国立公園のマヤ遺跡。北極圏に近く樹木がほとんど育たないアイスランドで、岩場の低木に色づいた鮮やかな紅葉ほか、多彩な世界遺産を堪能していただければ幸いです。
プロフィール
野町 和嘉(のまち かずよし)
1946年高知県生まれ。杵島隆に師事した後、1971年にフリーの写真家となる。1972年のサハラ砂漠への旅をきっかけとして、ナイル川、エチオピアなど、アフリカを広く取材する。1980年代後半からは、過酷な風土を生き抜く人々の営みと信仰をテーマとして舞台を中近東、アジアに移し、長期の取材を続ける。2000年代以降は、アンデス、インドなどを中心に取材を続ける。
『サハラ』『ナイル』『チベット』『メッカ巡礼』『地球巡礼』など多くの写真集が国際共同出版される。ローマ、ミラノ、台北、東京ほかで『聖地巡礼』展を開催。土門拳賞、芸術選奨文部大臣新人賞、日本写真協会国際賞など受賞多数。2009年、紫綬褒章受章。日本写真家協会会長。
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