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初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸

Lesson 26 AIノイズ除去機能でファインプリント 高感度でもクリアかつシャープに仕上げる

高感度撮影時
ノイズ低減

近年のデジタルカメラは高感度性能が向上し、これまで容易に撮影できなかった暗い室内や夜間など光量の少ない条件でも対応できるようになりました。ISO感度を上げるほど、ノイズによって画像がざらついて粗い感じになります。以前はノイズが目立つためISO感度を上げることは消極的でした。ところが、昨今では高感度でもノイズが少なめの傾向で、ISO感度を積極的に上げられるなどシーン対応力が大きく向上しています。

デジタルカメラには「ノイズ低減」または「ノイズリダクション」と呼ばれる、高感度撮影時にノイズを低減する機能があります。キヤノンEOS Rシリーズには静止画撮影メニューに「高感度撮影時のノイズ低減」という項目があり、ノイズ低減処理の効果を変更できます。効果を強めるほど画像のざらつきが抑えられますが、その代わりに被写体の質感が甘くなるなどシャープさが損なわれます。効果を弱めるとシャープな描写になりますが、ノイズによるざらつきが目立ってきます。

高感度撮影時のノイズ低減の効果の違い

高感度撮影時のノイズ低減の効果の違い

ISO 25600

ノイズ感と解像感は「あちらを立てればこちらが立たず」の関係です。空などの平坦な部分などはノイズによるざらつきが気になりやすい反面、特にシャープに見せる必要はありません。反対に細々した部分はディテール優先でシャープネスを強めても、ノイズは絵柄に埋もれてしまうためざらつきが目立ちにくい傾向です。つまりちょうど良いバランスで仕上がる設定は写真の絵柄によって違ってくるのです。輝度ノイズと色ノイズのバランスを確認しながらきめ細かく緩和できるので、ノイズ低減処理はRAW現像ソフトで行ったほうが良いでしょう。

Digital Photo professinal[ディテール調整]ツールパレット / Adobe PhotoshopLightroom Classic [ディテール]パネル

インターネットで画像を公開するなどパソコンのモニターで見るより、プリントのほうがノイズによるざらつきや、ノイズ低減処理によるディテールの甘さに目が向きやすい傾向です。小さいサイズだとそうでもなくても、大きくプリントするほど気になりやすくなります。だからといってノイズを取り除き過ぎるのは逆効果で、少しざらついていたほうが良い場合もあります。奥行きが感じられたり、被写体が立体的に見えたりするなど粒状感がプラスに働くのです。プリントサイズや用紙の種類に応じて、適正な鑑賞距離で観察しながらバランスの良い設定を見つけましょう。

AIノイズ除去機能
活用する

近年はAIによるノイズ除去機能の登場で、解像感を損なうことなくノイズのざらつきが低減され、従来のノイズ低減処理よりもクリアかつシャープな画像が得られるようになりました。その効果はSNSなどインターネットで公開する画像では効果が分かりづらいのですが、プリントを楽しむ人にとってはすごく有利な機能といえるでしょう。

Neural network Image Processing Toolで
プリント画質を向上

キヤノンのNeural network Image Processing Toolは、Digital Photo Professional専用の高画質処理ツールです。ディープラーニング技術を生かした画像処理を行い、RAW現像時に「デジタルレンズオプティマイザ」(レンズ補正)、「ノイズリダクション」(ノイズ低減)、「デモザイク」(ジャギー、モアレ、偽色抑制)を適用可能。超高感度で撮影した画像も、ノイズによるざらつきを低減しながらも解像感が損なわれないなど、従来のノイズ低減処理とは得られる画質が大きく異なります。回折現象により描写が甘くなった画像の解像感の向上など、このツールを活用することでより高画質のプリントに仕上げることができます。

Digital Photo Professionalの[拡張機能]メニューからNeural network Image Processing Toolをダウンロードします。インストール後、使用するには有料プランへの加入が必要です。Canon IDアカウントを作成し、月間プランまたは年間プランのいずれかを申し込みます。どちらも31日間無料で試用できます。

拡張機能
画像を選びます。複数の画像を選んで、まとめて画像処理を行うこともできます。[拡張機能]メニューで[Neural network Image Processing Tool]を選びます。
出力ファイル形式 ニューラルネットワーク ノイズリダクション ニューラルネットワーク レンズオプティマイザ ニューラルネットワーク デモザイク
  1. 1
    出力ファイル形式
    出力するファイル形式を選びます。[.CRN]を選ぶと、カメラが記録した.CR3形式のRAWデータを基に、Digital Photo Professional専用の.CRN形式のRAWデータを生成します。macOSで扱うときや、他社製の画像編集ソフトで処理するときなどは[.CR3]を選びます。
  2. 2
    ニューラルネットワーク ノイズリダクション
    ノイズが多い画像と少ない画像の組み合わせを大量に学習させた結果に基づいて、撮影した画像からノイズを除去した画像を推測します。その情報を利用することで、従来よりもノイズの少ないクリアな画像が得られます。
  3. 3
    ニューラルネットワーク レンズオプティマイザ
    従来の画像処理では補正しきれない回折現象による解像感の低下を、レンズの設計値に基づいて学習されたディープラーニング画像処理により補正し解像感を向上。従来よりも被写体を高精細に描写した画像を生成します。対象レンズで撮影した場合に適用されます。
  4. 4
    ニューラルネットワーク デモザイク
    各画素にR、G、Bの信号を持つRGBデータと、いずれかの信号しか持たないRAWデータの組み合わせを大量に学習させた結果に基づき、RAWデータからRGB画像を推測。モアレやジャギーなどが少ない画像を生成します。ニューラルネットワーク デモザイクは効果を調整できません。また、出力ファイル形式が[.CR3]のときは適用されません。

[実行]をクリックすると画像が生成されます。初期設定値での画像処理の結果を確認し、必要に応じて[ニューラルネットワーク ノイズリダクション]と[ニューラルネットワーク レンズオプティマイザ]の効果を調整します(左方向:弱/右方向:強)。生成された.CRN形式、または.CR3形式のRAWデータを現像しプリントします。

ISO 12800
使用プリンター:PRO-S1
キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]

Adobe Photoshop Lightroom Classicで
ノイズを除去

Adobe Photoshop Lightroom ClassicやAdobe Camera RawにもAIによるノイズ除去機能が搭載されています。対象となるのはRAWデータで、JPEGデータには適用できません。[ディテール]の[ノイズ軽減]の項目で[ノイズ除去]を選ぶと[強化のプレビュー]ウィンドウが表示されます。

プレビューが生成されたら、[ノイズ除去]で[適用量]を調整します。プレビューを長押しすると強化前の状態を表示できます。[強化]をクリックすると、新しいDNGファイル(RAWデータ)が生成されます。

ISO 12800
使用プリンター:PRO-S1
キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]

Digital Photo ProfessionalとAdobe Photoshop Lightroom Classicのどちらも手動でのノイズ低減処理では、輝度ノイズの緩和を強めるほどノイズによるざらつきは少なくなりますが、それに比例して解像感が損なわれます。だからといってシャープネスを強めるのは逆効果で、写真らしさがなくなり絵画のような仕上がりになりやすいです。バランスよく調整することがポイントですが、AIによるノイズ除去を行ったほうが早くて簡単できれいです。

フォトコンテストの組写真部門の応募作品や写真展で複数のプリントを並べたとき、ISO感度の違いによる画質の差が気になることがあります。従来のノイズ低減処理ではノイズ感と解像感がトレードオフの関係にあるため、ISO感度が近い写真を組み合わせるなどセレクトで妥協することもあるでしょう。でもAIノイズ除去機能を利用すれば、低感度と高感度、超高感度の写真が混在していても違和感は少なく、プリントのクオリティーを統一しやすくなります。

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あなたの写真が変わるプリント講座【実践編】Lesson 26 AIノイズ除去機能でファインプリント
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/tips/print-howto/lesson26
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/tips/print-howto/image/1.png?la=ja-JP&hash=0A7FFD82FECAE1787B196782EB84DD05
2025-03-31