パソコンのモニターのように自発光で色を表現するものは赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)が基本的な3つの色で「光の三原色」(加法混色)といいます。プリントのように反射光で色を表現するものは青緑(Cyan)、赤紫(Magenta)、黄(Yellow)が基本的な3つの色で「色の三原色」(減法混色)といいます。
初心者から上級者まで あなたの写真が変わるプリント講座 解説:岡嶋和幸
公開日:2023年10月20日
カラーマッチングとは
画像を撮影するデジタルカメラと画像を表示するモニターは「光の三原色」と呼ばれる「赤」「緑」「青」を重ね合わせて色を表現します。これに対し画像を印刷するプリンターは「色の三原色」と呼ばれる「シアン」「マゼンタ」「イエロー」を重ね合わせて色を表現します。パソコンのモニターとプリントで画像が違って見えることがありますが、それは色を作り出す方法が異なるからです。その差を近づけることを「カラーマッチング」、そのために色を管理することを「カラーマネジメント」といいます。色空間についての知識、モニターのキャリブレーション、環境光の整備がカラーマネジメントの実践で必要となります。
キャリブレーションとは
モニターの表示が正しくないことが、パソコンで見ている画像とプリントの色や明るさが違って見える原因の1つです。液晶モニターやノートパソコンの多くは、さまざまな用途での使用を前提とした表示設定で出荷されています。その設定はメーカーや機種ごとに異なり、また個体差もあります。モニターの表示設定を定められた基準値にすることで画像の色や明るさを正しく表示できるようになり、プリントとの差も軽減できます。
モニターの表示の偏りを計測し、正しい値になるように調整することを「キャリブレーション」といいます。目視での手動調整も可能ですが、「キャリブレーター」と呼ばれる測色計と、モニタープロファイルを作成するキャリブレーションソフトを使用することで高精度の調整が自動で行えます。デスクトップパソコンとノートパソコンの併用やマルチ(デュアル)モニター環境など、複数のモニターの表示を統一することも可能です。
画像の色や明るさを正しく表示するためにモニターのキャリブレーションを行います。キャリブレーターとキャリブレーションソフトを使って調整するとモニタープロファイルが作成されます。これをパソコンのOSに適用することでカラーマネジメントの精度が向上します。
キヤノン推奨 モニター設定値 | ||
---|---|---|
輝度 | 120cd/㎡ | |
色温度 | D50(5000K) | |
ガンマ | 2.2 |
プリントの色は環境光の色温度に影響を受けます。そのためモニターと環境光の色温度を合わせる必要があります。キャリブレーションソフトでキヤノンが推奨する設定値にすると、用紙とモニターの白さを近づけることができます。
画像が正確な色や明るさでモニターに表示されると、RAW現像やフォトレタッチなどの画像処理できめ細かい調整が行え、プリントにも反映できます。カラーマッチングがうまく行えていれば調整とプリントを繰り返す回数も減り、そのぶんインクや用紙のコスト、印刷など作業時間を節約できるようになります。
モニターを選ぶときはキャリブレーションに対応している製品を選びましょう。モニターのキャリブレーションには「ソフトウェア・キャリブレーション」と「ハードウェア・キャリブレーション」の2種類があります。前者はどのようなモニターでも可能で、モニタープロファイルをパソコンで設定することで、モニターに表示される色をソフト的に処理して調整します。後者はカラーマネジメント対応の製品に限られますが、モニター内部の設定を直接調整するため高精度で安定したキャリブレーションが可能です。また、Adobe RGBの画像を取り扱う場合は、Adobe RGBの色域を表示できる対応モニターの使用をお勧めします。
モニターの色や明るさは変化する
モニターは使い続けているうちに色温度や明るさが少しずつ変化します。色温度が下がって白は暖色系に、明るさも暗くなります。定期的なキャリブレーションを行うことで常に安定した色や明るさを維持できます。
カラーマッチングに適した
作業環境
プリントは周囲の光に照らされ、反射して人間の目に入ります。ところが、窓から外光が差し込む日中と室内照明を点灯する夜間では、同じ場所でも光の条件が異なります。モニターは光を発しているため影響を受けにくいのですが、この「環境光」はプリントの見え方を左右します。画像処理やプリントを行う時間帯に関係なく色を正しく判断し、安定した結果を得るために環境光の整備はとても重要です。
商業印刷の世界では「D50」と呼ばれる環境光下で色を見るのが望ましいとされています。これは「作業環境を5000Kで統一しましょう」ということです。パソコンのモニターの色温度設定は、ウェブ用は6500Kが良いとされていますが、写真の画像処理やプリントでは日中の太陽光と同じ5000Kがお勧めです。
室内照明も5000Kの「昼白色」の蛍光灯やLEDライトにすると良いでしょう。演色性が高く色評価に適した蛍光灯やLEDライトもあり、それらのほうが色を正確に見ることができます。室内照明を全てその条件で統一するのが理想ですが、難しい場合はデスクライトを高演色の5000Kのものにして、プリントを見るときに照らすのも有効です。
モニターと室内照明の色温度を5000Kに統一し、室内照明は高演色の光源のものを選ぶのがベストです。画面に照明などの光が直接当たるときは、モニターに遮光フードを装着すると効果的です。パソコンのデスクトップの背景は、画像など色の付いたものだと目が影響されて正しい色の判断ができないため無彩色のグレーがお勧めです。ブラインドやカーテンで窓からの外光をしっかり遮光しましょう。色が反射して影響することがあるため、壁紙やカーテン、カーペットなどもできるだけ無彩色のものが望ましいです。
室内照明の色温度の違い
- 電球色
- 昼白色
- 昼光色
LED電球・蛍光灯の色温度 | ||
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電球色 | 3000K | |
温白色 | 3500K | |
昼白色 | 5000K | |
昼光色 | 6500K |
室内照明の光色(色温度)がプリントの見え方に影響します。電球色は黄みがかった色、昼光色は青みがかった色になり、適切な色でプリントを見ることができるのは5000Kの昼白色です。照明の明るさも重要で、明る過ぎても暗過ぎても良くありません。カラーマネジメント環境では500ルクスくらいが適しています。
室内照明の演色性
色の見え方に影響を及ぼす光源の性質のことを「演色性」といいます。自然光を基準とし、色がそれに近い見え方になるほど優れていると判断されます。演色性が高い照明ほど忠実な色が得られるのです。室内照明の演色性がいまひとつだと、撮影では被写体の色の再現、プリントを見るときは色の判断が正しくできません。撮影用の照明機材は基本的に高演色なので、プリントを見るときにも利用できます。ちなみにレストランなどでは、料理が美味しそうに見えるように演色性の高い照明が使われています。
演色性は自然光が基準
演色性の目安となるのが、色合いの再現性を表す単位として用いられる「平均演色評価数」で、単位は「Ra」です。照明器具の仕様に記載されていて、撮影のライティングやカラーマネジメントを行うときにはRa90以上のものが適しています。白熱電球の平均演色評価数は自然光と同じRa100と最大値ですが、色温度は3000K前後と低く、赤みが強いためカラーマネジメント環境には適していません。昼白色の一般的なLEDライトや蛍光灯の色温度は5000Kですが、平均演色評価数はRa85前後なのでプリントの色の厳密な判断には不十分です。
室内照明の演色性の違い
- 一般的な照明
- 高演色の照明
一般的な照明は演色性が不十分で、少し色褪せた感じに見えます。平均演色評価数がRa90以上の高演色の照明のほうが色を正確に確認でき、カラーマネジメント環境に適しています。