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キヤノンRF70-200mm F4 L IS USM フォトグラファー・レビュー

公開日:2021年3月10日

最終更新日:2021年10月27日

ネイチャーフォトグラファー 上田優紀(Yuki Ueda)×RF70-200mm F4 L IS USM

写真家の上田優紀です。誰もが容易には目にすることができない、世界中の極地や僻地を撮影しています。今回は、RFレンズ「RF70-200mm F4 L IS USM」を持って奄美大島(鹿児島県)を旅してきました。旅や登山をしながら撮影をするとき、どうしても気になるのは、機材の大きさや重さではありませんか? RF70-200mm F4 L IS USMは、軽快に使える望遠ズームレンズとしておすすめの一本です。奄美の作品をご覧いただきながら、その魅力をお伝えします。

心を動かされた風景を軽快に切りとれる70-200mmズーム

風景写真といえば、広角レンズで撮影するイメージが強いかもしれません。でも、RF70-200mm F4 L IS USMのような望遠ズームレンズを使って風景の一部分を切りとることで、さらに自分の表現したい世界を映し出すことができます。

目の前に広がる広大な自然風景のどこを切りとるのか。撮影者の意思が写真に反映されやすいので、より自分の感性が試されると言っていいかもしれません。

これまでの常識であれば、どうしても大きく重くなってしまうのが中望遠~望遠レンズ。しかし、小型・軽量なRF70-200mm F4 L IS USMなら、手持ちや首にかけたまま長時間歩いても苦にならず、撮影に集中できました。もちろんズーム全域で、高画質で美しい風景を表現してくれます。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:70mm)・F8・1/50秒・ISO100 太古の時代を思わせるシダの森。足元もぬかるみ、歩くだけでも苦労するフィールドですが、そんな場所でも軽量な機材は撮影を手助けしてくれます。
太古の時代を思わせるシダの森 Copyright YUKI UEDA
70-200mm とは思えないほどコンパクトなレンズなので、バッグにしまうことなく山を歩けます。持ち運びにストレスがないので、撮影に集中できました。
70-200mm とは思えないほどコンパクトなレンズ
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 200mm)・F32・1秒・ISO100 夕暮れどき、わずかな時間に空が見せてくれる淡く優しい色彩も忠実に表現してくれます。望遠側200mmで切りとることで、心を動かされた風景を大胆に表現できました。
夕暮れどき、わずかな時間に空が見せてくれる淡く優しい色彩も忠実に表現してくれます。 Copyright YUKI UEDA
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離:135mm)・F16・0.3秒・ISO100 解像感だけではなく、逆光耐性にも優れているレンズなので、積極的に太陽を画面に入れられます。朝日の風景も美しく記録することができした。
朝日の風景 Copyright YUKI UEDA

小型・軽量に進化。フィールドでの機動性がうれしい

旅をしたり、山を登ったりしながら撮影することが日常の僕にとって、機材選びで最も気になるポイントの一つが重量です。

RF70-200mm F4 L IS USMは、普段僕が使っているEF70-200mm F2.8L IS III USMに比べると、かなり小さくて軽量です。全長は約119mm(WIDE時)、そして重量は半分以下となる約695gしかありません。

EOS R5にRF70-200mm F4 L IS USMをセットし、バックパックのショルダーストラップに装着した状態で数時間歩いても、重さはまったく気になりませんでした。機材が軽くなれば心も軽くなります。その余裕が、妥協しない作品をつくっていくうえで、実はとても大切なことなのです。

バックパックのショルダーベルトにカメラクリップ(Peak Design「キャプチャーV3」)を装着。カメラをセットして森を歩きました。カメラのストラップを首からさげると重く感じますが、キャプチャーV3を使えば長時間の歩行や山歩きにもラクです。
バックパックのショルダーベルトにカメラクリップ(Peak Design「キャプチャーV3」)を装着

RF70-200mm F4 L IS USMは、ボディー内手ブレ補正搭載のEOS R5やEOS R6に装着すれば、最大7.5段分の手ブレ補正効果を発揮(静止画撮影時)。暗いシーンでも手持ちで撮影が可能です。薄暗い山の中では、どうしても三脚を立てなければ撮れない場面があります。しかし、一瞬だけ差し込む木漏れ日などは、三脚を立てていたら撮り逃してしまいます。自然風景は待ってくれません。EOS R5とRF70-200mm F4 L IS USMの組み合わせなら、そんな瞬間も逃しません。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 70mm)・F13・1/8秒・ISO100 絶対に三脚を使わなくてはいけなかった場所でも、光学式手ブレ補正とEOS R5のボディー内手ブレ補正の協調制御による強力な手ブレ補正効果のおかげで、手持ち撮影が可能に。日当たりが弱く、植物に覆われている状況でも、手持ちのままスナップ撮影の感覚で、緑に輝く森を美しく表現できました。
緑に輝く森 Copyright YUKI UEDA
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 70mm)・F8・1/20秒・ISO100 カヌーに乗りながらマングローブの森を撮影。EOS R5との組み合わせで得られる最大7.5段分の手ブレ補正効果により、手持ちで撮影できます。
マングローブの森 Copyright YUKI UEDA
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 70mm)・F18・3.2秒・ISO100 森の木漏れ日が滝を照らす一瞬に出合いました。水流を長秒時露光で表現するため、今回は素早く三脚にカメラをセットして撮影。コンパクトで機動力に優れたレンズだからこそ、こんなシーンも逃すこともありません。
森の木漏れ日が滝を照らす一瞬 Copyright YUKI UEDA
小型のトラベル三脚なら、より装備がコンパクトになり、どんな場所でも気兼ねなく持っていくことができます(写真は、ベルボンの小型トラベル三脚 UT-63II)。RF70-200mm F4 L IS USMは、三脚座が不要(そもそも三脚座が不要な設計)。いままで以上に素早く三脚にセットが可能なので、より多くのシャッターチャンスをつかめます。
ベルボンの小型トラベル三脚 UT-63II

最短撮影距離は0.6mと、かなり被写体に近づけます。普通ならレンズ交換する場面でも、そのまま撮影が可能。さまざまなシチュエーションを押さえられる一本という印象を受けました。

心が動いたその時に躊躇なくシャッターを切ることができ、いままで以上に作品の幅が広がる。そんな確信が持てました。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 200mm)・F4・1/200秒・ISO100 最短撮影距離は0.6m。レンズを変えることなくブーゲンビリアにもグッと近づくことができます。開放時のボケも美しく、暖かい奄美大島を象徴するような一枚になりました。
ブーゲンビリア Copyright YUKI UEDA

ボケ感やシャープな描写も優秀。心から撮影を楽しめる一本。

機材の軽量化は、さまざまな撮影において心身ともにストレスを減らしてくれます。その一方で、軽く小さくなれば、その分レンズの質が落ちるのでは? と気にする方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、RF70-200mm F4 L IS USMは、ボケ感や描写力にも優れたレンズ。UDレンズ4枚を効果的に配置することで、ズーム全域で色収差が補正され、撮影シーンや被写体にかかわらず想像以上の高画質を実現しています。

例えば、まだ日が昇る前の暗い海岸や夕暮れの雲や太陽の光など、繊細な描写が求められるシーンでも、忠実にその世界観を表現してくれました。さらにボケ感もなめらかで美しく、改めてこのレンズの描写力の高さに驚かされました。

EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 70mm)・F14・1分15秒・ISO100 NDフィルターを付けると、肉眼よりもさらに感覚的な風景をとらえることができます。一日が始まる前の静かで厳かな海岸。豊かな描写力をもつレンズだからこそ表現できる重厚感です。
一日が始まるは前の静かで厳かな海岸 Copyright YUKI UEDA
夕方や朝焼けなど空と大地の明暗差が大きいシーンでは、ハーフNDフィルターが欠かせません(写真は、角形フィルターを装着)。露出をオーバーすることなく自然な空の色を表現することができます。
ハーフNDフィルター
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 200mm)・F18・1/160秒・ISO100 日没前の雲からもれる壮大な光芒を撮影。雲や光など、繊細さを求められるシーンでの描写性の高さに驚かされました。
日没前の雲からもれる壮大な光芒 Copyright YUKI UEDA
EOS R5・RF70-200mm F4 L IS USM(焦点距離: 200mm)・F4・1/400秒・ISO100 手前の枝でAFが迷いそうな場面でしたが、EOS R5の優れたAF精度によって、枝に止まった瞬間のメジロにも素早くピントを合わせることができました。さらにボケ味も美しく、空の青と緋寒桜のピンクのコントラストにより、春がもうすぐ近くまでやって来ていることを教えてくれました。
枝に止まった瞬間のメジロ、空の青と緋寒桜のピンクのコントラスト Copyright YUKI UEDA

RF70-200mm F4 L IS USMを使った最初の驚きは、やはり軽快さ。70-200mmというレンジのレンズを数時間も手に持って歩いたりしたのは初めての経験でした。高画質や高い表現力は言うまでもありませんが、手ブレ補正機能やAF性能、最短撮影距離など、欲しかった機能がすべて入っており、このレンズがカバーできる幅の広さに、さまざまなシーンで助けられました。

登山や旅行では、機材の重さは撮影に大きな影響を及ぼします。旅に持っていくレンズだと、70-200mmが最も重いものになる人も多いのではないでしょうか。より小型化・軽量化されたRF70-200mm F4 L IS USMは、多くの風景写真家にとって革新的な変化をもたらすでしょう。もし軽量化がもたらす瞬発力を重視するのであれば、EF70-200mm F2.8L IS III USMユーザーにとっても、新しい選択肢に入ると思います。

RF70-200mm F4 L IS USMは、これまで見逃してしまっていた瞬間にも出合わせてくれる。そんなことを期待させるレンズでした。

PROFILE

上田優紀(うえだ・ゆうき)
上田優紀(うえだ・ゆうき)

1988年、和歌山県出身。京都外国語大学を卒業後、世界一周の旅に出発。1年半かけて45カ国を訪ねる。帰国後、アマナに入社。2016年よりフリーランスの写真家となる。近年は、ヒマラヤの8000m峰を中心に撮影。

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キヤノンRF70-200mm F4 L IS USM フォトグラファー・レビュー
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/review/rf70-200mmf4l-review
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