着物アレンジで自分だけの「カワイイ」をつくる。令和の、自由でおしゃれな和装コーデ!
公開日:2021年8月4日
最終更新日:2022年10月24日
「着物に一目惚れ」したと話す、着物クリエイターのみさまるさん。その想いは歳を重ねるほど深まり、貯めたお金で着物を買い集めてはスタイリングする日々。そうして生まれた和装×洋装の独自のスタイルは、かつて着物を日常着として自由に着こなした日本人のしなやかさを思わせます。日本文化の代表格だからと言ってルールに捉われず、自分の感性のままに着物を楽しむ。クラシックもアレンジスタイルも両どりする、着物の奥深さに迫ります。
PROFILE
幼い私を虜にしたもの
キリッとした襟元に風になびく袖、上質な生地感、華やかなピンクの着物……。七五三で初めて着物を着せてもらったとき「世界にはこんな可愛い服があるのか!」と驚きました。写真撮影時には「もっと撮って!」と言わんばかりにノリノリでポーズを決めまくり、すっかりモデル気分。しかも撮影が終わってからも着物を脱ぐのを嫌がり、そのまま家に帰ろうとして大人たちを困らせてしまう。ほんの数時間の間で、それほどまでに着物に夢中になっていました。その日から「大きくなったら絶対に着物を着る!」と着物への熱い憧れを抱くようになったのです。
正式な着物の着こなしにはたくさんの小物が必要です。着物と帯だけでなく襦袢(じゅばん)、半襟(はんえり)、襟芯(えりしん)、腰紐、伊達締め(だてじめ)、足袋、帯締めに帯留め、帯枕(おびまくら)、草履などなど。当初は、初めて聞く言葉の多さに頭がクラクラし、「それにこれらを全て揃えるにはいくらかかるんだろう?」と不安になったのをよく覚えています。
そんな私の心強い味方となったのが、着物を手頃に買えるネットショップや、リサイクル着物、お手入れの簡単なポリエステル素材の着物。アルバイトで貯めたお金で少しずつ買い集めたそれらをベースに「まずは自分なりに無理なく楽しめる範囲から着物を楽しもう!」と始めたのが、着物と洋服を組み合わせた和洋折衷のコーディネートでした。それはたとえば、着物の下に着る襦袢の代わりにタートルネックを合わせたり、帯を締めずに着物の上からスカートを履いて袴風にしてみたりというもの。足袋と草履の代わりに、靴下とブーツを組み合わせたこともありました。
着慣れた服や靴を組み合わせれば手軽に着物コーデを楽しめる上に、見た目も明治時代の女学生のようで可愛いのも魅力。時々王道の着こなしをすることもありますが、着物を始めた当初から今もずっと和と洋を組み合わせたスタイルをベースに着物を楽しんでいます。
着物の代替え品にした洋服や小物は全て前から持っていたものなので、追加コーディネートにかかった費用は実質ゼロ円(!?)。かつて着物は高価なものであると知り「大人になっても買えないかもしれないな……」と諦め半分な気持ちになったものですが、そうして念願の、自分なりの着物デビューを果たしたのでした。
色を見せる、動きを見せる、着物を見せる
折角のオリジナルコーディネートだからこそ、その日の着こなしの良さや魅力を引き出した写真を撮ることにも全力で楽しんでいますし、SNSを通して着物の可能性や魅力を発信する活動していることからも写真の撮り方にはこだわっています。
まず、着物の色を「見せたい」場合の撮影について。この場合には特に着物の色を鮮明に映したいので、太陽の光で色が飛ばない曇りの日や時間帯を狙い、極力日陰の場所で撮影します。もうひとつ忘れてはいけないのが、背景と着物の色被り。着物のシルエットの線がボケてしまわないように背景の色合いにも気を配っています。
全身をすっきりと見せる、プロポーション重視の撮影ではカメラ位置をおへそ辺りにして広角レンズを使うことも。脚を長く見せることができます。また、脚をガッツリ見せるコーディネートではヒールの高い靴を履き、軸足とは逆の脚を限界まで前に出して膝を少し曲げてみてください。思っている以上に脚が長く綺麗に見えますよ。
着物の袖やスカートのヒラヒラした「服そのもの」を見せたければ、カメラの前で実際に回ったり歩いたりして、動きのある写真を撮るように。これはシャッターを切るタイミングが難しいですが……着物コーデの魅力を引き出すためなら何度でも挑戦します。
こうやってお気に入りの着物のコーディネートを写真に残せば、後々その写真を見返して「やっぱりこの着物可愛いな!」と気分が上がったり、過去のコーデや着付けから「好きなスタイルの系統が変わった気がする」、「以前に比べたら着付け上手くなったかなぁ……?」など、自分自身の変化やちょっとした成長に気付けたりするのも面白いです。
新時代の着物スタイル
好きな着物コーデでお出かけや写真撮影を楽しむだけではなく、少しでも着物に関する情報や知識を得たいと思い、書籍やネット記事もたくさん読むようになりました。そこで着物には普段着であっても守った方が良いとされる暗黙のルールやしきたりがあることを知ります。
「浴衣は襟付きであっても冬に着るのはやめた方が良い」、「枝付きの桜が描かれた着物は桜の季節にしか着れない。しかし桜が満開の頃に着るのは野暮」、「紋付きや留袖、振袖など格の高い着物は普段使いNG」、「衿を抜きすぎると玄人感が出るのでやめた方が良い」など。
ほとんどの人はこれらに納得してルールを守るよう努めると思うのですが、私は「着物のルールを破ったらどうなるの!?」「普段着としての着物はもっと自由で良くない!?」と考えるようになります。
私は今までずっと自分の好きなように着物を楽しんできて、一部の着物好きには怒られたり苦言を呈されることもしばしばですが、着物のルールを破っても別に命を取られることはないし、街歩きをするにしても堂々と歩いていれば誰からも何も言われません。
2019年2月に立ち上げた大阪着物オフ会のメンバーもみんなルールに囚われていません。年齢も小学生から70代までと幅広く、王道の着物スタイルにこだわる人もいれば、誰も見たことがないような面白いアイディアの着付けのコーデを披露したり、男性が女物の着物を着たり(逆もまた然り)、襦袢(じゅばん)を表着(襦袢は着物の下に下着として着るのが一般的ですが、あえて上着にして着ること)にしていたり、アンティークの着物にこだわっていたりと本当にみなさん自由そのもの。年齢も性別も育った環境も違うけれど、全員に共通して言えるのはお互いの個性を尊重しているということ。
これはあくまでも一例ですが、ここからもわかるように現代では王道のスタイルだけではなく着物の装いも豊かに多様化しているのです。
着物は本来「着る物」であり、習い事やパーティ、冠婚葬祭にしか着ない特別な衣服ではなく日本人の普段着でした。現代では日常的に着物を着る人は少ないですが、今でも着物を普段着とする人にとっては(少なくとも私からすれば)、着物はひとつひとつ決まり事を守らないと着られないような特別な衣服ではありません。
多様な着こなしや着物に対する価値観を認め合うことが令和の着物文化の醸成に繋がると信じて、今後も自由に着物を楽しみたいと思います。
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