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台湾から日本へ、夢を追いかけて。日本の現代建築の美しさに魅せられて。

公開日:2021年2月25日

最終更新日:2021年3月25日

Place : 京都市京セラ美術館(メインビジュアル)
Text & Photo : Lee Yun Chen(東京建築女子)
Edit : Yuria Koizumi

生まれ育った台湾を離れ、身ひとつで日本移住を決意した「東京建築女子」こと建築士の李さん。彼女を突き動かしたのは日本に点在する現代建築作品への並々ならぬ情熱。その熱量が失われることはなく、今でも休みになれば現代建築を巡る「旅」へ。その先々で出会う場所の気配や一瞬のうちに生まれる「物語」をていねいに記録に残す彼女。その人生に大きな影響を与えた作品群との対話には、自分の感性や「愛しさ」を深く耕す手がかりがありそうです。

PROFILE

李昀蓁(りーゆんちぇん)

建築士。東京建築女子として各地の美しい建築写真を撮影するSNSが注目される。

憧れの土地で始まる、建築を巡る人生の旅路

ずっと憧れた日本の、美しい現代建築。
学生時代からいつか必ず日本を訪ね、心惹かれる現代建築作品を見に行きたいと夢にみてきた。大学院に進学してからは、何回も日本へ旅行したけれど素敵な建築物が多すぎるし、どんどん新しく設計されていく。

全ての建築作品を巡り終えるには、まだまだ先が長い。ならば「日本で生活しながら心ゆくまで存分に建築作品を巡る旅をしよう、夢を叶えよう」と2015年、とうとう東京に住み始めた。
日本語学校へ通いながら、時間ができればあちこちの建築物を見て回る日々。1年後、順調に建築事務所への就職が内定。憧れの土地に根を下ろし、日本中の建築を巡る旅の続きが約束された。天気のよい休みの日には都内の建築物を巡り、長い連休があれば少し遠いところへ。北は北海道から南は沖縄まで日本各地を巡り、最近では広島や尾道、京都の新しい建築作品を見に足を運んだ。

京都市京セラ美術館にて

心で「視る」

スケッチで旅や景色を記録する人がいると思うけれど、私は写真や文章で思い出を残すタイプ。

撮影の時に意識するのは、自分の五感を解放して体全身で空間の雰囲気を感じること。天井が高いロビー、奥行きのある長い廊下、陰影(いんえい)があるスペース……。自分の心に触れる空間ならば、きっと素敵な写真になるだろう。自分が美しいと感じたらすかさずカメラでシャッターをきる。それだけでいい。

それともうひとつ。光の捉え方も重要な要素。1日のうち、同じ光は2度とない。刻一刻と光は表情を変える。影の位置や濃淡、色味の変化。その微妙な違いこそが建築物と、その空間の美しさをより際立たせる。だから私はわざわざ特定の時間と光を狙って、撮影に出ることはしない。作品と出会ったそのとき、その瞬間の姿を残す。光を活かすというよりも、その瞬間ごとに光が映し出す空間の様子を偽ることなく、ただ素直に記録する感覚なのだ。

そんなことを続けていると、すごく綺麗な日差しの姿を捉えることもできるし、曇りで薄絹に覆われたような建築そのものの独特な雰囲気が立ちのぼる瞬間に立ち会えることもある。どれも光の気まぐれで生まれる、刹那の風景だ。

かたちにのこすこと

旅先で撮影した写真とともに書き添えるのは、建築にまつわるいろんな気づきや物語。

建築家が作品を手がけたきっかけから土地を活かした設計の背景、住み手や使い手のために考えられたコンセプト、空間の作り方、そして作品を前に感じた自分の想いなどだ。

自分も建築に関わる仕事をしているので、建築設計上の困難や妥協すべきところ、または法的な制限や限界が分かる。その分、建築家がそれらを突破し、今までにない発想で空間を設計し、意匠と設備を融合すること、さらには建材としてあまり一般的ではない素材を取り合わせ、素敵な建築を完成することにすごく感銘を受ける。友達から「建築を見る時、すごく生き生きしているね」と言われるのもそのためだろう。

確かに建築を見る時、語る時、撮影する時、普段よりも気持ちが高まる。「もっともっと知りたい、撮りたい」が湧いてくる。その度に、自分がこんなにも建築を好きなのだと気づかされる。

そうした溢れんばかりの想いの丈を写真と一緒にまとめたものは、自分のFacebookページやInstagramでシェアしたり、ブログで発信したりする。まるでフォトブックの1ページのように。

それは、パソコンやアプリが撮影日ごとに勝手に写真を分類してくれる便利な時代になった分、かえって「なんか物語が足りないなぁ」と感じることがあるから。

台湾で出版した書籍もそうした想いから今まで撮り、書きためてきた思い出たちをかたちにしたものだ。

そうして一冊にまとめられた私だけのフォトブックは、膨大な写真データの中から、写真とともにその時に感じた「想い」を探す時間を短縮することができるし、友人たちに自分の旅物語を簡単に伝えることができるツールになる。それに紙に印刷された特別感があり、ものとしての大切さが生まれる気がするのだ。

そういえば旅行の計画を立てる時、私は星だらけの地図を開いて行き先を決める。新しい建築作品を知るごとにつける星マーク。日本で生活してからの習慣なのだ。ひとつひとつの星へ旅立つこと、そこで撮影した写真がまたひとつ素敵な出会いになること。そこで湧き上がる想いとともに、新たな物語を編み出すこと。それは私にとって心と体を癒す行為でもあり、忙しい日常のなかから私を救い、支えることでもある。

そんなかけがえのない時間が待ち遠しくて、たまらない。


好きをかたちにするヒント

建築を美しく残してみよう

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

建築を綺麗に撮る

建築を綺麗に撮影するときのポイントは「光」。窓から光が綺麗に入る時間帯を見極めると、光と影のバランスで建物の美しさをより際立たせることができます。

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台湾から日本へ、夢を追いかけて。日本の現代建築の美しさに魅せられて。
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/life-style/itoshino/list/architecture
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2021-02-25