五島の風でつくるクラフトジン「GOTOGIN」再エネ100%への挑戦EOS R5 Mark II×GOTOGIN(長崎県五島市)
公開日:2024年11月29日
仕事や趣味、遊びのボーダーを軽やかに飛び越え、人生を愛(いと)しむ人を紹介する「itoshino」。この企画では、全国各地で「好き」をかたちにしている人のもとへitoshino編集部が訪問。その活動やライフスタイルをお伝えします。
今回登場するのは、大手酒造メーカーのサラリーマンだった男性たちが、理想の酒づくりを目指して立ち上げた「五島つばき蒸溜所」です。創業の地に選んだのは、縁もゆかりもなかったという長崎県五島列島の福江島。日本列島の西の果てにある島に移住して、クラフトジンの蒸溜所を立ち上げた門田クニヒコさんをたずねて、いざ旅に出発!フォトグラファー・木村文平さんがEOS R5 Mark IIで撮り下ろした写真・動画とともにご覧ください。
プロフィール
門田クニヒコさん
“祈りの島”五島列島で、日本の風景を表現するジンづくり
長崎県の西部に位置し、大小152の島々からなる五島列島。全域が西海国立公園に指定され、透明度の高い海と美しいビーチが数多く存在し、リアス式海岸、海蝕崖など多様な地形も魅力的。そして五島は「祈りの島」としても知られます。世界遺産に認定された潜伏キリシタンの歴史が息づく教会群が点在しています。
今回訪ねたのは、五島列島の南西端に位置する福江島。長崎から30分のフライトで島に到着。クルマで海岸沿いの道を走り、「この先は本当に目的地?」と少々不安になる道を下った入江に、目指す「五島つばき蒸溜所」がありました。
2022年、福江島の小さな入江の村にクラフトジンの蒸溜所を作ったのは、酒造メーカーを退社して起業を決意した蒸溜家・門田クニヒコさんと、門田さんに誘われて島に移住してきた小元俊祐さんと鬼頭英明さんです。3人とも大手酒造メーカーに長年勤務していた商品開発やマーケティング、原酒づくりを手がけるブレンダーのプロ。
「お酒は、その土地を表現するもの。僕たちが目指しているのは、風景のアロマが香るジンをつくることです。ジンというお酒は、製法や香料に決まりごとが少ない、とても自由度の高いお酒です。ジンであれば日本の風土を表現する酒づくりができると思って始めました」(門田さん)
五島つばき蒸溜所があるのは、島北部の奥地にある半泊(はんとまり)という集落。かつては潜伏キリシタンが生活していた場所で、信者たちの祈りの場所である半泊教会に隣接した敷地にあります。地域の歴史的背景を反映させようと、蒸溜所の建物は修道院を思わせるデザインに。島の風景と歴史に溶け込んだ蒸溜所です。
「西の果ての小さな島ですけれど、この島の人たちが誇りに感じて、大事にしてきた歴史や文化、風土がたくさんあります。僕たちはそれをお酒のおいしさに変えたい。島の風景をお酒で表現したいのです」(門田さん)
誕生したGOTOGINは、「五島の風景が香るジン」と評判になり、いまや予約待ちの人気商品です。販売数800本を目標にスタートしましたが、現在製造本数は月3000本に。製造から検品まで全工程手づくりのクラフトジンで、海外展開を視野に入れています。
「定年退職したら、南国でラム酒の原酒づくりでもしたいと思っていた」と語るのは、ブレンダーの鬼頭さん。30年以上ウイスキーづくりで培った技術と感覚で「伝説のブレンダー」といわれた人物です。
この地で湧き出る天然水を使い、島内で採取される椿の種子のほか17種類ものボタニカル(ジンのフレーバー付けにハーブやスパイスのこと)の一つ一つを吟味し、個性的なアロマをまとめあげてGOTOGINというハーモニーを生み出す魔術師。
人の記憶と香りは密接に結びついているそうですが、グラスに注ぐと香り立つGOTOGINのほのかに甘く爽やかなアロマは、島で見た海のブルーや風の心地よさを思い出させてくれます。
「飲んでくださった人が五島の風景に思いをはせて、いつかこの島に足を運んでみたい。世界中の人々から、そう感じてもらえることが目標」と語る門田さん。蒸溜スペースの拡張も予定していて、月産5000本の実現に向けて動いています。
風景のアロマと風土に根付く「物語」を封じ込めたGOTOGINに、2024年秋、新しい物語が加わりました。それは「国内初の100%再生可能エネルギーでお酒をつくる蒸溜所」という物語。詳しくは次章へ!
再エネ先進の地、五島市の「浮体式洋上風力発電」プロジェクト
五島つばき蒸溜所が、国内初の100%再生可能エネルギーでお酒をつくる蒸溜所に生まれ変わる──。五島市では全国に先駆け、海と風と活用した洋上風力発電に取り組んできました。電力の56%が風力や太陽光などの再生可能エネルギーで発電され、日本全体の再エネ率(約22%)を大きく上回っています。いわば五島は、再エネの先進地。その最前線と、このプロジェクトに関わった島の人物に話を聞きました。
福江島の東端部、崎山沖に設置された浮体式洋上風力「はえんかぜ」を上空から。浮体式洋上風力の特徴は、海上に浮かんで風車を回すこと。海面下の3本のチェーンが岩盤と固定されているので、台風の通り道であっても倒れません。もちろん地震、津波などにも強いのです。
ちなみに「はえんかぜ」とは南東の風という意味。「はえんかぜは、幸せを運ぶ」という言い伝えがあるそうです。
欠航も危ぶまれる波を乗り越え、海上タクシーではえんかぜに接近。はえんかぜは全長172mの構造物で、間近で見るロータ(羽根)の全長は80mもあり大迫力です。
朝焼けに映える洋上の風車。五島では年間を通して風速7mの極めて強い風が吹くこと、島の近くでも水深が100mもあることなど、浮体式洋上風力に適した条件がそろっていました。2026年には8基が稼働し、洋上ウィンドファームが完成予定。この電力を利用することで、五島つばき蒸溜所は環境負荷を最小限に抑えつつ、持続可能で高品質なGOTOGINの生産が可能になる、というわけです。
こちらのダンディなおじさまは、福江島の漁業関係者のトップだった熊川長吉さん。五島ふくえ漁業協同組合の元組合長です。
環境に優しい浮体式洋上風力だからといって、好き勝手に建設できるわけではありません。じつは福江島周辺では海草が壊滅的に減少するなど、漁場の悪化が問題になっていました。そこへ風力発電施設を立てたらどうなるのか……。漁場へのさらなる影響を心配する声があるなか、熊川さんが海域の漁業関係者800人を説得し、建設が認められることになりました。
「島に吹く風は、島の宝です。この風を活用して、自分たちの水産業をよくしようと思っただけ」と笑顔の熊川さん。人並みならぬ努力で成し遂げた漁業関係者の合意形成により、再生エネルギーへの道が開かれました。
海中にあるはえんかぜの構造体には海草や貝が生息し、多くの魚が集まってきました。豊かな漁場が復活したのです。
島と風力発電の共存共栄に動いた人物がもうお一人。福江商工会議所の会頭・清瀧誠司さんです。清瀧さんは地元企業と連携して地域新電力「五島市民電力」を設立。地域でつくった再生可能エネルギーを利用した電力供給ができるようになりました。まさにエネルギーの地産地消。また、はえんかぜの製造拠点を福江島に誘致して、大きな雇用を生み出しました。島の経済を循環させる仕組みをつくったのです。
五島市は2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする「ゼロカーボンシティ」の実現を目指しています。清瀧さんのビジョンと行動力により、五島市は再エネの先進地域として注目を集めているのです。
福江島のシンボル、鬼岳(標高315m)。ススキで覆われた斜面を強い風が駆け上がっていました。この風を生かした洋上ウィンドファームは、2026年1月に完成予定。ふるさと五島を思う人々がつむぐ物語に、次のページが加わろうとしています。
GOTOGINが未来に伝えたい「風景づくり」
五島つばき蒸溜所が目指しているのは、再生可能エネルギーを活用した持続可能な未来の「風景づくり」です。GOTOGINから見えてくる未来の風景は、地域と環境が調和した社会の姿なのかもしれません。
福江島の沖合約5km、水平線に浮かんでいるように見えるはえんかぜ。GOTOGINの美しいボトルの向こうに、五島の未来をつくる風景が見えるでしょうか?
五島つばき蒸溜所の天井部分にある美しいステンドグラスは、島内にステンドグラス工房を構える作家が制作したもの。椿の種子をあしらった蒸溜所のシンボルマークが中央に、その周辺を包み込むように五島の美しい海やビーチ、空や風、山の風景が象徴的にデザインされています。
蒸溜所に隣接する半泊教会は、1922年に建設された歴史的な建造物です。蒸溜所が誕生した2022年は、100周年記念のミサが行われる年でした。不思議な縁を感じた門田さんたちは、教会守として管理を手伝っています。
蒸溜所と教会は、それぞれが五島列島の魅力を伝えるスポットに。蒸溜所では「風景のアロマ」を体感できる見学ツアーを提供し、教会は潜伏キリシタンの歴史を学ぶ場所として多くの訪問者を引き寄せています。
潜伏キリシタンの歴史と地域文化の保護、再生可能エネルギーへの完全シフト、そして持続可能な製造プロセスの確立を目指す取り組み。五島つばき蒸溜所のクラフトジンづくりは、五島の歴史と現在、そして未来をつなぐ壮大なプロジェクトなのかもしれません。
「お酒は、その土地を表現するもの」。五島への旅を終えて、GOTOGINの香りを楽しみながら、門田さんの印象的な言葉を思い出していました。
EOS R5 Mark IIで切りとる旅の終わりに。
EOS R5 Mark IIを初めて使用した印象は、色ノリ、色の再現性が非常に優れていることでした。海や空の青、木々の緑、人物の肌色など、自然の色彩が鮮やかに表現できました。
現場で見た色がそのまま出力されるのが印象的でした。複雑な光条件下、例えば蒸溜所での撮影でも、自然光と人工光が混在する環境で肌色と空間の色を適切に調整できます。
全体的に色転びが少なく、撮って出しでも美しい画像が得られました。あとからの色調整も容易なので、作業効率が高い。普段、ホワイトバランスはマニュアルに設定していますが、EOS R5 Mark IIの高性能を考えると、オートホワイトバランスでも十分な結果が得られたでしょう。
次世代のAF「デュアルピクセルIntelligent AF」によって、動体の認識能力が向上していて、フォーカスの精度が飛躍的に高まっていました。動き回る子どもの撮影をしたときにEOS R5との違いを感じました。
デザインも刷新され、グリップ感が向上。長時間の撮影でも快適です。カメラの信頼性が高いため、撮影への意欲が高まり、撮影自体のモチベーションが向上するカメラでした。
木村文平(きむら・ぶんぺい)
1979年、山形県生まれ。鶴岡市で100年続く老舗写真館に生まれる。大阪芸術大学写真学科卒業。大阪の印刷会社に勤務後、東京にて独立、フリーランスのフォトグラファーとして雑誌やWeb、広告などで幅広く活動。著書に『雰囲気写真の撮り方 ナチュラルな光を活かすデジカメ撮影術』『いいね!と言ってもらえるはじめてのゆるふわフォトレッスン』がある。
旅の風景を作品に仕上げるなら
好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。
次世代AFを搭載「EOS R5 mark II」
次世代のAF「デュアルピクセル Intelligent AF」を搭載した「EOS R5 Mark II」は、旅にぴったりのフルサイズカメラ。風景の中を移動する野生動物や、朝もやに浮かぶ山々など、様々なシーンで正確な被写体認識とAFトラッキングを実現します。心ひかれた旅の風景を、作品レベルのクオリティで撮影してみませんか?
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