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伝統工芸に挑み、超越し、進化させる藍師・染師集団BUAISOUEOS R8×TOKUSHIMA(徳島県上板町)

公開日:2023年11月17日

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/4000秒・ISO200

TEXT:itoshino編集部 PHOTO:嶌村吉祥丸

仕事や趣味、遊びのボーダーを軽やかに飛び越え、人生を愛(いと)しむ人を紹介する「itoshino」。この企画では、全国各地で「好き」をかたちにしている人のもとへitoshino編集部が訪問。その活動やライフスタイルをお伝えします。
今回登場するのは、新世代の藍師・染師グループ「BUAISOU」です。「ジャパンブルー」とも呼ばれる阿波藍(天然の藍)で染め上げたプロダクトで知られ、ナイキやジミーチュウとなどのトップブランドとのコラボや、世界各国でのワークショップや展示会の開催など活動領域はグローバルです。
そんなBUAISOUの拠点は、徳島県東北部に位置する上板町。なぜ四国の小さな町の工房に世界が注目? 今回は、そんな謎を解き明かそうと、BUAISOUのメンバー大須賀一真さんを訪ねて、フォトグラファー・嶌村吉祥丸さんと四国・徳島への旅に出発しました。EOS R8で撮り下ろした写真・動画とともにご覧ください。

PROFILE

大須賀一真(おおすか・かずま)

1991年生まれ、埼玉県出身。美容師、庭師などの職業を経て、藍の職人に憧れて2019年からBUAISOUのメンバーに。藍の栽培から染料づくり、染色、製品づくりまですべての工程に従事している。

江戸時代に栄えた「阿波藍」の伝統を現代に

BUAISOUが拠点を構える徳島・上板町は、かつては氾濫を繰り返す “暴れ川”として知られた吉野川流域の町。氾濫で運ばれる土により肥沃な土壌が育まれ、江戸時代から藍の栽培と藍染めの染料となる蒅(すくも)の産地として栄えました。徳島産の高品質な蒅は「阿波藍」と呼ばれ珍重されてきた歴史があります。

BUAISOUが唯一無二の存在である理由は、藍の栽培から蒅づくり、染色、デザイン、製作まで自らの手で一貫して行うこと。すべてが手づくり。世界に一つだけの工房です。伝統的な藍染めの継承のみならず、新しい技術と発想を盛り込み伝統を超えていくことを目指して、日本の藍染めでグローバルに挑んでいます。

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/80秒・ISO800

新世代の藍師・染師の一人が、大須賀一真さんです。シャツやバンダナ、手ぬぐいなどのBUAISOUオリジナル製品を一枚一枚丁寧に染め上げる大須賀さんの手はいつもブルーに染まっています。

「もともとブルーが好きで、BUAISOUのアパレル製品やSNSでの発信のファンだったのですよ」と語る大須賀さん。ファッションや写真への感心が高かった大須賀さんのアンテナに引っかかったBUAISOUは、「かっこいいお気に入りブランド」の一つでした。

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/200秒・ISO800

藍の栽培から染めの工程まで徹底して天然素材、手作業にこだわるBUAISOUは、だんだん大須賀さんにとって憧れの存在になっていきます。

「BUAISOUに出会って初めて藍染めを知りました。しかも、藍の栽培は畑の土づくりから、染めて製品にするまで、すべてBUAISOUだけでつくっている。衝撃でしたね。また、海外でのワークショップなどを通じて日本文化を発信する姿勢にも強く惹かれていきました」(大須賀さん)

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/250秒・ISO800
EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/400秒・ISO800

2017年、BUAISOUのメンバーとして迎えられた大須賀さんは、生まれ育った埼玉県から徳島県に移住します。

「BUAISOUで藍染めができるなら、迷わず徳島に住みたいと思いました。友人にはあまり会えませんが、一人の時間も大切。海にも山にも近い環境が、ぼくにはフィットしています。来てみたら、ここにはすべてがありました。BUAISOUがそのきっかけをくれました」(大須賀さん)

世界に認められたBUAISOUと天然藍の魅力

BUAISOUというユニークなネーミングは、メンバーが無愛想だから……ではなく、日本で初めてジーンズをはいたとされる白洲次郎が東京郊外に建てた邸宅「武相荘」が由来。「いつか自分たちでジーンズづくりを手掛けたい」との思いから付けた名前です。

吉野川に近い、周囲を田畑に囲まれたBUAISOUの工房は、古い牛舎を自分たちでリノベーションしたもの。BUAISOUにしかできない天然の藍染めを求めて、世界中から有名ブランドやバイヤー、VIPたちが訪ねてくるのです。

EOS R8・RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM(焦点距離 28mm)・F8・1/125秒・ISO1600

5人のメンバーは「藍師」として藍を栽培し、「染師」として藍染めの製品づくりを手掛けます。分業ではなくすべての工程にメンバー全員が触れて理想の藍染めを追求することで、BUAISOU独自の価値を生み出しています。センターが大須賀さん。

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/400秒・ISO800

「型染め」の技法で手ぬぐいを染める準備。この日はTシャツやバンダナ、手ぬぐいなどBUAISOUオリジナル製品に取りかかっていました。手ぬぐいは1日20本、Tシャツは1日5着ずつ程度を染め、何度も水で洗いを掛けて仕上げます。メンバーにはこうした個々の作業と、全員で行う畑作業、染め液の仕込み作業などがあります。黙々と作業に没頭する表情は、真剣であると同時に楽しそうでした。

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/640秒・ISO1600
EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/4000秒・ISO1600

広い工房にはエアコンはなく、熱を使って蒸す工程もあるためなかなかの暑さ。ときおり水田からの風が入ってきてブルーの暖簾を揺らします。大須賀さんは、染料に浸け染めたTシャツを絞り、井戸から組み上げた水を張ったステンレスの大型シンクで水洗い。一枚一枚洗っては絞り、また洗って。まるで製品と対話するように仕上げていく大須賀さんの横顔に、BUAISOUの丁寧なものづくりの姿勢が現れているようでした。

自分たちの手で藍を育て、BUAISOUの色をつくる

BUAISOUの製品づくりのサイクルは、蓼藍(たであい)という品種の藍の栽培から始まります。冬に始まる土づくり、春には苗床に種まき、畑への定植、夏に向けて水やり、除草を欠かさず、ようやく刈り取りとなります。秋口から収穫した藍の葉を4カ月ほどかけ発酵させて蒅をつくり、その蒅を仕込んで、ようやく藍液(染料)の完成。すべて手作業、天然素材のみで理想のブルーを出すのがBUAISOUの流儀です。

大須賀さんを訪ねたのは夏も盛りの時季。工房近くの畑での収穫作業に同行しました。

MOVIE(藍の収穫作業。ある一日の大須賀さん)

雨上がりで蒸し暑さの増すなか、黙々と藍の刈り取り作業に没頭する大須賀さん。クワを手に、ザッ、ザッとテンポよく刈り込んでいきます。すぐに生えては伸びる除草作業も欠かせません。夏は晴れたら刈り取り、もしくは除草の日々。重労働なのです。

「ラクではありませんが、畑作業にはすぐに慣れました。庭師の経験がここで生きるとは思いませんでした。いろんな経験がつながっていくものなのですね」(大須賀さん)

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/4000秒・ISO200
EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.2・1/1600秒・ISO200

肩に掛けた縄で、刈り取った藍を束ねます。繰り返し使っているうちに縄も藍色に染まりました。グリーンとブルーのコントラストがきれいです。藍の畑に立つ姿は、ファッションフォトのようにスタイリッシュな印象。

EOS R8・RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM(焦点距離 50mm)・F5.6・1/4000秒・ISO200

収穫作業を終えた大須賀さん。自然の摂理とサイクルに逆らわない仕事のスタイルが確立しているからなのか、シンプルな力強さを感じます。

EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.8・1/3200秒・ISO200
EOS R8・RF50mm F1.2 L USM・F1.8・1/3200秒・ISO200

BUAISOUのアイドル番犬さくらと、吉野川堤防の道を散歩する大須賀さん。散歩は日課であり貴重な息抜き時間でもあるそうです。

「徳島での暮らしは快適すぎて(笑)。若い後輩もできましたし、この環境に甘えることなくもっとチャレンジしたい気持ちがあります。でも、つい頑張りすぎる性分なので、逆に頑張りすぎず、自分を解放していくことも大事ですね」(大須賀さん)

感覚を研ぎ澄ませて藍染めに没頭しながら、気負わず気ままに過ごす時間を大切にしている大須賀さん。遠くに見える後ろ姿にも、静かに燃える意思を感じました。

EOS R8で切りとる旅の終わりに。

BUAISOUの工房裏手で。EOS R8を構える嶌村吉祥丸さん

「ひと言でまとめるなら、EOS R8は優秀だと思います。現代のカメラは高画素化が進み、どのカメラで撮ってもある程度のクオリティで写ると思います。そのうえで、EOS R8は、すっきりしたトーンを持ちつつ、雰囲気も出て美しい。その場の空気感まで伝わるニュートラルな印象を受けました。レンズは今回、ほとんどの写真でRF50mm F1.2 L USMを使いました。重量感のある単焦点レンズですが、EOS R8との組み合わせなら軽々持つことができると思います。単焦点に絞ることで機動力が上がり、動画も手持ちで問題なく撮影できましたし、リュック1つで徳島まで来られたのもEOS R8だったから。小さい、軽い、でも写りはしっかりとしている。これがEOS R8のメリットではないでしょうか」

最後に、BUAISOUの大須賀さんを撮影した感想をうかがいました。
「じつは大須賀さんは、写真を通じて知り合った昔からの友人です。以前には合同で展示を開催したこともありました。大須賀さんと一緒に過ごした徳島は、藍という植物、自然や生き物と共に生活していることで、東京とは違う時間軸を生きている気がしました。僕自身は時間の幅がない瞬間の連続を生きている感覚ですが、大須賀さんは徳島で5年、10年、またそれ以上の大きな単位での時間軸を生きているのではないでしょうか。」

嶌村吉祥丸(しまむら・きっしょうまる)
東京生まれ。国内外を問わず活動し、ギャラリーのキュレーターも務める。主な個展に「Unusual Usual」(ポートランド、2014年)、「Inside Out」 (ワルシャワ、 2016年)、「photosynthesis」(東京、2020年)など。

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伝統工芸に挑み、超越し、進化させる藍師・染師集団BUAISOU
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/life-style/itoshino/list/buaisou
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/buaisou/image/r8-buaisou-mainvisual.jpg?la=ja-JP&hash=FF549E1B0CF394688968D7421CCE6FB0
2023-11-17