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創造力のゆくえ-由井友彬編-

創造力のゆくえ

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映像作家/写真家
由井友彬

クリエイティブは、
実体験の記憶×哲学的妄想

EOS R8で映し出した2つのストーリー。
撮影意図の異なる作品それぞれから紐解く、
由井さんにとってのクリエイティブとは。

小さいボディーに秘めた力

最初に「クリエイティブフルサイズEOS R8」について聞いた時、まずはその小ささと、小さいボディーに秘められた「力」に驚きました。このカメラを使ってどんな映像を撮ろうかとすごくワクワクした気持ちで話をしていたのを覚えています。実際に使った際にも「これで十分じゃん」と周りのスタッフと話していました。このボディーの中には映像を撮るためのスペックがしっかりと備わっていると感じます。

気軽に持ち出して、気軽に撮った「祖母の時」

「EOS R8を気軽に持ち出して気軽に撮影をする」をテーマにカメラとRF35mm F1.8 MACRO IS STMの単焦点だけを持って祖母の家に向かいました。すべてを一人で行う“一人プロダクション”で制作したんです。本当に何も決めずに撮影を始めて、ある意味ドキュメンタリー撮影のような手法をとって、作品の構成も撮影を行いながら決めていきました。朝から祖母を撮っていると、その独特の時間の感覚のようなものが面白かったので、「祖母のありのままの生活」をテーマに決めました。ありきたりな感動ではなく喜劇のような明るい祖母の午前中を表現しました。それが「祖母の時」という作品です。

EOS R8は生活に溶け込むくらい小さなカメラで、祖母と生活をしながらカメラを回していても大げさに見えないからか、祖母も緊張せず、ありのままの姿を撮影することができました。照明を使わず自然光で撮影をしていても、出来上がりの画をイメージしながら撮ることができました。普段から気軽に持ち出せるカメラで、なおかつ素晴らしい画が撮れるカメラというのはかなり貴重です。これからもっと身近な人や物事を撮る機会を増やしたいと思いました。

答えのない美しさを描く作品「無限」

「無限」という作品の始まりは、「8」という数字です。キヤノンにとって「8」というナンバリングは初めてということ、漢字の「八」は末広がりを意味していること、ローマ数字の「8」を横にすると「∞」になること。これらから着想を得て「無限」というテーマが生まれました。

「無限」という抽象的なテーマには答えのない哲学的な要素があり、答えがないからこそ溢れてくる個々の気持ちや希望、隠れた光を、ストーリーに落とし込むことで、それが広がっていく美しい瞬間を映像化したいと考えました。「無限」とはなんなのか、人によって思うことや感じることはさまざまだと思うんです。だからこそ、本編の最初のセリフは「無限ってあると思う?」と問いかけになっています。その問いに明確な答えはなく、登場人物の彼ら自身にも答えはないけれど、答えがないからこそ、その先に希望を持つことができる。そして美しい瞬間が広がっていく、そんな場面をカメラにおさめたいと思いました。今現在は意味を持たずとも心に残っていつかぽっと出てくるような映像にしたかったんです。

本編は完全オリジナルにこだわり、セリフの一語一句を慎重に選択していきました。3人のキャラクターが定まってからは、彼ら自身が会話を繰り広げていくのを聞いているような感覚の中で脚本を書き上げていったので、とても楽しく感じました。誰もが経験のある友達との会話に哲学の要素が加わって、時間軸も少し複雑な構成なので、見る人によっては少し不思議な場面に出くわすかもしれません。そういった場面から、それぞれ違った「何か」を受け取ってくれれば、と思います。

綺麗な映像を撮った上でBTS(Behind the Scene)映像で「実はこんな小さなカメラで撮ってます」と種明かしをしたら面白いなと思っていたので、本編と同時にBTSの制作もしました。僕のような職業として映像を撮っている方にもどんな環境や機材で撮影を行っているのか、わかりやすいようになっています。「この場面ってこんな風に撮ってるんだ」と、いかに映像制作においてもEOS R8に汎用性があるか着目してもらえると嬉しいです。

こんなに素晴らしい画が撮れる!という部分を全力で見せたかったこともあって、後々編集で誤魔化さなくても1カット1カットがきちんと見えるように、いつも以上に演出に力を入れました。素晴らしい演技を見せてくれた演者の方々にはとても感動しています。制作のチームも本当に素晴らしく、全員が良い作品にするために動いてくれた本当に素晴らしい現場でした。体力的な苦労はたくさんありましたが、どれも本当に良い思い出です。

良いものを作ろう、という空気感

「祖母の時」「無限」に限らず日頃制作する時に考えていることは、現場の空気感と目の前の作品がどうやったら今よりも良くなるのか、そのために今自分に何ができるのか、ということです。カメラからディレクションまでワンマンでやる際には自分自身とカメラから出る雰囲気がよくなるように。チームで動く際にはチーム全体で「良いものを作ろう」という空気感が生まれるように周り全体を見るようにしています。その空気感が作品にも映ると思っていますし、良い雰囲気の中で生み出される映像を作る、その瞬間が楽しいし、好きなんですよね。

クリエイティブとは、記憶と妄想の掛け合わせ

僕自身まだまだ半人前なので難しいことは言えませんが、僕にとっての「クリエイティブ」とは実体験からくる記憶と妄想の掛け合わせを行う感覚があります。ゆえに、普段の生活の中に存在しているようなフワッとした印象があって一言では表現できないかもしれません。日常生活の中に普通に存在していて、いざという時に引き出しのように引っ張り出してくる行為がクリエイティブのイメージに近いかもしれない、と思っています。

その中でも今回の「無限」は、誰もが経験したであろう「青春時代の友達とのくだらない会話」と「哲学的妄想」を掛け合わせているので、自分の思うクリエイティブを少しは映像にできたかな? と思っています。今回の製作を終えて、もっと「芝居」を撮りたいという気持ちが強くなって、そのためにももっと演技の演出を勉強したいなと感じました。今回の制作で改めて芝居を撮る楽しさを味わってしまったのは、自分にとって止められない何かを生み出してしまったような気がしています。もうすでに「次はどんな話を書こうかな」と考えているので、また新たに映像化への挑戦をしたいですね。

映像作家/写真家・由井友彬

映像作家/写真家
由井友彬

石川県出身。元々は美容師を志して18歳の時に上京し、美容関係の学校に通った後、3年間都内美容室に勤務。その後、大学に入学し哲学を専攻、アメリカに留学する。留学中のアメリカで映像の仕事を開始。その後は拠点を東京に移し映像作家として活動中。H.I.S.やANAなど旅行関連の映像制作で力をつけ、現在はMVやビューティ、企業の広告など幅広く活躍。海外で経験を積んだシネマティックな演出と、人の心情を表した映像表現が特色。

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創造力のゆくえ-由井友彬編-
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