片渕ゆりがインスタ リールに挑戦〈もっと、エモーショナル〉vol.3
公開日:2024年4月30日
フォトグラファーの片渕ゆりさんが最近出会った“残したい”と感じたシーンを撮影し、毎回1本のエモーショナルなInstagramのリール(Reels)として4回にわたって発表する当連載。「私の撮影スタイルは、“被写体を探す”というよりは“情景に出会う”。琴線に触れるエモーショナルな体験がまずあって、それを忘れたくないから撮っているのだと思います」と話す片渕さんですが、第3回となる今回は、“撮りたい動画撮影”を実現するため、惹かれる被写体の宝庫である水族館を訪れました。カメラは前半2回で使用したEOS R50から、フルサイズのミラーレスカメラEOS R8に持ち替えての撮影です。「動画電子ISのおかげで手ブレをほとんど感じることなく、またフルサイズならではの堂々たる描写に大満足でした」と片渕さんが話すその魅力も、撮影した動画とともに紹介していきます。
PROFILE
佐賀県出身・東京在住。大学卒業後、コピーライターとして働いたのち、どうしても長い旅がしたいという思いからフリーランスに。2019年から旅暮らしをはじめ、XやnoteなどのSNSで旅にまつわる文章や写真を発信している。2021年、『旅するために生きている』を上梓。
1.片渕ゆりの〈もっと、エモーショナル〉
2.美しい光と水のゆらめき、そして生きもの
「やさしい光が入る水の中で、ゆらめくクラゲ。水、光、生きものという3つの要素が組み合わさる大好きな被写体で、今回の動画の中で一番のお気に入りです」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「もともと『水』『光』『(植物も含む)生きもの』が組み合わさるものに強く惹かれます。夏の時季にときどき見られる特設の水槽やお祭りの金魚すくいなどは静止画で好んで撮る対象。今回、動画を撮る前に映画『リトル・マーメイド』の実写版を観ていたのもあって、連想的に芽生えたのが『水族館』でした。海の生きものを撮ってみたい、海中の世界を撮りたい…。できることなら海の中に行ってみたいけれどなかなか叶わないので、日常の範囲内でそれを実現できるところはどこかと考え、行き着きました」。
「水族館での撮影は2時間ほど。順路通りに回ってアシカなどの海獣類も撮りましたが、やっぱりより水や光を感じる被写体に惹かれていたと思います」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「クラゲがたゆたう水槽の外側に、一定周期で水が流れてくる。細かいたくさんの水泡とそこに反射する光がいかにも美しく、撮影をしました」。
レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STM
3.被写体に共鳴するように、ゆったりとした気持ちで
「静止画の場合、水のゆらめきと生きものの動き、光の入り方のすべてが納得できるベストショットを撮ろうとすると、どうしても撮影はせわしなくなります。高速連写で撮ることも多く、対象と自分の行為にミスマッチを感じることはよくありました。動画だとそれがない。一連のシーンを楽しみながら、ゆったり泳ぐ生き物に対して自分も同じテンポ感で撮ることができ、静止画と動画では心の在り方がこんなにも変わるのだと実感しました」。
「撮影は“狙う”というよりも“待ち”の姿勢でのんびりと。このときも、2匹のウミガメがいい具合にこちらへと泳いできてくれるこの瞬間まで、しばらくカメラを回していました」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
またそれは、EOS R8の暗い中でもAFが的確で、なおかつ正確にトラッキングしてくれる性能によるところも大きかったと思います。カメラの操作を頑張るよりも、自分はただ撮ることに集中できました。
「かなり暗い中での撮影でしたが、EOS R8はすぐさまサメにフォーカスし、その後も迷うことなくピントを合わせ続けてくれました」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「ピューンと水面に向けて泳ぐペンギンも、迷わず追尾。ちなみにこの動画は、“上がっていく=ハッピーエンド”的なイメージで〆に持ってきています」。
レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STM
4.やりたかった手法での撮影に挑戦
「ただ撮ることに集中できたこともあって、前回まではカメラワークやピント送りなどのテクニック的な側面を意識して撮影していましたが、今回は派手な動画をつなぎ合わせるようなものではなく、水のゆらぎや泳ぐ魚など、その瞬間をそのままに表現したいと思いました。なので、今回のシーン動画はすべて、被写体の動きが際立つよう、カメラは固定で撮影しています」。
「カメラは動かさずに、生きものの動きや水のゆらぎをストレートに表現。動画の撮影でやってみたいと思っていた手法で、今回のイメージにも合っていると感じています」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「視点が散漫になると被写体をカメラで追いたくなるときもありますが、そこは我慢。このときは中央のクラゲに狙いを定めています」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
5.ステップアップのためにメリハリを意識
「今回の動画制作で意識したのは、1本通してのメリハリです。前回までの動画に対して、今後の課題としてメリハリをつけていくことをフィードバックとしていただいていて、それをクリアしたいという気持ちがありました。シーン動画はすべて水族館で撮影したものですが、編集の際に動画の明暗、動き、色味に注意しながら1本通しての展開を決めていきました」。
「メリハリは1本のシーン動画の中でも意識。たとえばこのシーンなら、明るい背景と逆光で陰になった魚という明暗を、編集でシャドウ部分を下げ強調しています」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「こちらも明暗でメリハリを意識したシーン動画。上の動画と同じ編集を行っています」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
1本を通した明暗のメリハリは、じつは『リトル・マーメイド』の構成を参考にさせてもらっています。最初は明るいシーンからはじまり、ストーリー展開とともにだんだん暗く、そしてハッピーエンドに向けて明るくなっていくという展開です。撮影は総当たり戦さながら順路に従って撮れるだけ撮って、編集時にメリハリのバランスを見て残したいカットを盛り込んでいきました。
「こちら「明るい動画から始まって、だんだん暗く、そして明るく。その一連の中で、“暗さ”を理由に選んだのが、タカアシガニを写したこのシーンです」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
6.使って実感したCanon EOS R8の魅力
「EOS R8はフルサイズでありながら、女性でも両手で持つと手にすっぽりと収まるサイズ感。とても軽くもあり、長時間の撮影でも負担を感じません」。
「EOS R8を使ってみて驚いたのが、すべてにおける性能のよさ。撮っているそばからもう違っていて、背面モニターで見る映りがとても美しく、フルサイズならではのボケ感や光にうっとりしました。実物以上に盛るのはあまり好きではないけれど、肉眼では見えない世界を楽しませてくれるのも映像の魅力だと思っていて、それをより享受できるのはやっぱりフルサイズなんだろうなとも思いました」。
「このシーン動画は、実際に目で見るよりも映像のほうが幻想的できれい。小さな魚の群れの煌めきやボケ具合が本当に美しく、フルサイズならではの表現に感じられました」。
レンズ:RF50mm F1.8 STM
「また、EOS R8は電子式手ブレ補正機能で動画の手ブレを軽減することができる“動画電子IS”のおかげで、手持ちの撮影でもほとんど手ブレをせず、手ブレ補正の編集も不要でした。それに暗い場所でもたっぷりと光を取り込んでくれるし、色の再現も素晴らしい。初めてフルサイズで動画を撮影してみて、その実力を目の当たりにした感じです」。
「このシーン動画は、実際に目で見るよりも映像のほうが幻想的できれい。小さな魚の群れの煌めきやボケ具合が本当に美しく、フルサイズ「薄暗い水族館での撮影でも、EOS R8は驚くくらい手ブレしませんでした。あとから動画を見直してもそれは実感でき、編集において補正をかけていません」。
レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STMならではの表現に感じられました」。
「カメラの設定はシャッタースピードを1/50秒に固定し、ISOで明るさを調整しつつ撮影していきました。カメラ側でほかに設定を変えたということはなくて、また特別な機能も今回は使っていません。なので紹介する動画は、編集でシャドウを下げたり、コントラストを高めたりした程度。EOS R8で撮影した動画は編集しても色や画質が破綻せず、それも魅力だと感じました」。
「全体的にコントラストは高く、シャドウ部分をより暗く下げる編集をかけていきましたが、色も画質も美しいままにキープされていました」。
レンズ:RF35mm F1.8 MACRO IS STM
「それでいて、いかにもフルサイズといった面構えをしていない。大きくていいカメラを持つと良くも悪くも緊張感が生まれるけれど、EOS R8はいい意味でそれがありません。約2時間の撮影中ずっと手に持ち、構えている時間も長かったと思いますが、ずっしりと腕にくるような重さを感じることはありませんでした。小さくもあり、撮り手だけでなく写り手のことも緊張させないだろうから、次回はポートレート動画に挑戦してみたいなと少し考えています。
レンズは単焦点のRF50mm F1.8 STMとRF35mm F1.8 MACRO IS STMの2本を使いました。どちらもこう撮りたいと思い描いたイメージそのままに映し出してくれたと感じます。描写は2本とも申し分がなく、画角の都合だけでどちらにするかを選びました。
EOS R8は、手ブレにも強いし、本当に画質も素晴らしい上、写り手のことも緊張させないサイズ感なので、次回はポートレート動画に挑戦してみたいなと考えています」。
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