キヤノンRF14-35mm F4 L IS USM フォトグラファー・レビュー
公開日:2021年9月30日
最終更新日:2021年10月27日

風景写真家の八木千賀子です。自然との出会いの瞬間を大切にしながら「物語」を描くように撮影しています。目の前に広がる風景を余すことなく写せる超広角ズームレンズは、風景写真の撮影に欠かせません。RF14-35mm F4 L IS USMは超広角域をカバーしながら小型・軽量、そして近接撮影能力を高めた高画質なLレンズです。超広角~標準域の効果を活用した作品をご覧いただきながら、このレンズの魅力をお伝えします。
超広角14mmで広がる、遠近感を強調したダイナミックな表現。
滝の裏側から水の流れを見上げました。距離が近いので標準域では収まりきらないシーンですが、WIDE端14mmにより迫力ある一枚となりました。流れ落ちる水流に光が当たり、まるで光芒が差し込んでいるようでした。

風景写真を撮影するうえで超広角ズームレンズは欠かせません。RF14-35mm F4 L IS USMは、EFレンズのEF16-35mm F4L IS USMと比較してWIDE端が2mmも広がりました。14mmと16mmはわずかな差ですが、14mmのほうが広がりのある風景をダイナミックに表現することができます。
超広角特有の強烈なパースペクティブ(遠近感)によって、手前にある被写体から画面奥の被写体まで入れて撮影できます。また、被写体までの距離が近いシーンでは、目で見た感覚とは異なる迫力のある表現が可能です。
超広角14mm特有のパースペクティブにより画面に遠近感が生まれます。濃霧の効果も相まって、ヒマワリ畑がどこまでも続いているようでした。

RF14-35mm F4 L IS USMはWIDE端14mmからTELE端35mmまで、ズーム全域で解像感の高い撮影ができます。超広角の強烈なパースペクティブを活用した構図では画面周辺のディテールが気になるものですが、隅々まで画質を損なうことなく撮影できました。
超広角レンズというと周辺部の「ゆがみ」をイメージするかもしれませんね。でもこのRF14-35mm F4 L IS USMは、ゆがみの少ない超広角ズームレンズです。WIDE端を使って遠近感を強調することもできますが、カメラを水平に構えるようにするとゆがみを抑えたワイドな風景を撮影することができます。
PLフィルターを使って湖底に沈んだ倒木を描写。朽ちていく倒木と、かつてそこに根を張っていた森を対比しました。WIDE側を使って手前まで画面に入れることで遠近感が生まれ、主題を明確にすることができます。

手前のキャベツ畑をメインに少し低い位置から撮影。ゆるやかな曲線を描く地平線を意識しました。画面右上のカラマツ林がアクセントになり全体のバランスを取っています。

セミの抜け殻に朝日が射し込み黄金色に輝いていました。太陽を入れることで視線が誘導され、写真に奥行きが生まれます。RF14-35mm F4 L IS USMの特殊コーティングによりフレアやゴーストは低減されています。

もっと遠くへ! フィールドの足取りが軽くなる小型・軽量設計。
一歩足を踏み入れるとそこにはシダの森が。WIDE端で手前から奥まで描写することで、足元のシダが手を大きく広げ、まるでここから先の侵入を拒んでいるようでした。

RF14-35mm F4 L IS USMを初めて手にしたとき、思わず「軽い!」と口に出してしまいました。RF15-35mm F2.8 L IS USMに比べて重量は約300g軽く、全長は27mmほど短くコンパクト。風景写真の撮影にはどうしても多くの機材を持っていく必要がありますが、これだけ小型・軽量であればフットワークも軽くなります。深い森や高い山にも携行できるので作品の幅が広がるでしょう。
繰り出しズーム方式を採用しているRF14-35mm F4 L IS USMですが、WIDE側もTELE側もほんの少し繰り出すだけ。バランスのよい仕上がりの一本となっています。
雨で湿度を含んだ森。大木に守られるように若木たちが生き生きと輝いているようです。うっすらと霧が入ることで、神秘的で美しい森の表情を垣間見ることができました。



レンズの前玉部分が大きく膨らんでいる大口径の超広角レンズには、スクリュータイプの円形フィルターは付けられません。でも、RF14-35mm F4 L IS USMは超広角でありながら前玉が出ていないので円形フィルターが装着可能。風景撮影での表現が広がります。
RFレンズ「F4 L ISシリーズ」のRF24-105mm F4 L IS USM、RF70-200mm F4 L IS USMと同じフィルター径(77mm)なので、フィルターを付け替えて使いまわすこともできます。おサイフにも優しいですね。
残照に映える山肌。PLフィルターの効果により雲が浮き上がり、NDフィルターによる長秒撮影で雲の動きと、眼下の道を走る車を光跡で表現しました。

「F2.8 L ISシリーズ」(RF15-35mm F2.8 L IS USM、RF24-70mm F2.8 L IS USM、RF70-200mm F2.8 L IS USM)の総重量とでは約1kgの差。機材を携行する足取りも軽く撮影を楽しめます。

手持ちで速写できる安心感。奇跡の瞬間を撮り逃さない。
雲の隙間から太陽光が射し込み、田んぼの向こうに小さな虹を映し出していました。すぐに虹が消えてしまいそうだったので手持ちでカメラを構えました。カメラボディーとレンズの協調制御による強力な手ブレ補正効果で、稲穂が風でなびく様子も撮影できました。

RF14-35mm F4 L IS USMはレンズ内に光学式手ブレ補正機構を搭載していて、レンズ単体で5.5段分、EOS R5との組み合わせなら最大7.0段分(静止画撮影時)の手ブレ補正効果が得られます。
すぐに消えてしまう虹の撮影など三脚を設置する時間がないときや、橋の上からなどの撮影で三脚の設置に無理がある場面でも、手持ちで撮影できました。朝夕の時間帯など光量が少ない条件でも手持ちで対応可能です。三脚から自由になれるので、これまで撮影できなかったシーンや構図にも果敢にチャレンジできますね。
橋の上から川をのぞき込むように撮影。三脚がセットしにくい状況です。
さらに0.5秒のスローシャッターでしたが、手ブレ補正機構のおかげで手持ち撮影。水の動きを表現しました。

RF14-35mm F4 L IS USMの最短撮影距離は0.2m。被写体に近づいてクローズアップ撮影もでき、ボケ味も非常にきれいです。
また、最大撮影倍率は約0.38倍なので「広角マクロ」のような表現もできます。風景を超ワイドに、草花や小さな生き物をクローズアップで撮るなど、幅広い表現が楽しめます。
夕暮れ時、ソバの花で休むトンボにそっと近づき最短撮影距離0.2mで撮影。絞り開放からピントはシャープ。滑らかできれいなボケが印象的です。ズーム全域で最短撮影距離0.2mなので「広角マクロ」のような使い方ができます。

星景写真も楽しめる、フレアやゴーストを抑えた鮮明な描写力。
雲があることで空に表情が生まれ、キャベツ畑の中にポツンとあるサイロがアクセントに。超広角で星空と地上風景を広く写し込みました。

星の撮影をするとき一般的に「F値が明るいレンズがいい」といわれています。でも最近のカメラは高感度性能が上がっているので、EOS R5と絞り開放F4のRF14-35mm F4 L IS USMの組み合わせでも、十分に星景写真の撮影を楽しめます。
RF14-35mm F4 L IS USMはズーム全域で画面周辺部までクリアに描写してくれますし、特殊コーティングによりフレアやゴーストなどの発生が低減されています。逆光でも忠実な色再現をしてくれる心強いレンズです。
落雷と経年変化で半分以上が朽ちた大木。その幹の中から真上にレンズを向け撮影。逆光に近い条件でも忠実に色再現をしてくれました。いまもなお生きようと葉を青々と茂らせる姿から自然のたくましさを感じます。

風景写真を撮影していて「もう少しだけ広く撮れたらいいのに」と思うことがよくあります。そんなとき超広角で被写体をのぞいてみると、人の目では見ることのできない世界が広がります。そんな世界を表現できるのも写真の醍醐味。RFレンズで14mmから始まる超広角ズームレンズはこの一本だけ。風景撮影の必需品です。
皆さんもぜひRF14-35mm F4 L IS USMを連れてフィールドを歩き、自然と親しみながら写真撮影を楽しんでくださいね。
PROFILE


愛知県生まれ。2016年、ドキュメンタリー番組「The Photographers 3 ─心を揺さぶる風景を求めて─」(BS朝日)への出演を機に風景写真家として歩み始める。主に中部地方や伊豆諸島、八丈島の風景をテーマに光を意識した作品を撮影。八丈島ふるさと観光大使。