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キヤノンRF100mm F2.8 L MACRO IS USM フォトグラファー・レビュー

公開日:2021年4月21日

最終更新日:2021年10月27日

彩り写真家 川合麻紀(Maki Kawai)×RF100mm F2.8 L MACRO IS USM

写真家の川合麻紀です。さまざまな被写体の「色彩」に注目した作品づくりをしています。花の季節は、光と色がとろける様子にウキウキ、ドキドキ!花の撮影に活躍してくれるのが、小さな世界を大きく撮れるマクロレンズです。今回は、RFレンズシリーズ初の「100マクロ」として注目のRF100mm F2.8 L MACRO IS USMで撮影した作品をご覧いただきながら、このレンズの魅力をお伝えします。

大きく進化した性能でユニークな描写が楽しめる「RF100マクロ」。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/350秒・ISO400
光が灯っているようなチューリップの膨らみ。前景と背景に同じ種類のチューリップをふんわりぼかして入れてみました。
光が灯っているようなチューリップの膨らみ Copyright MAKI KAWAI

これまでRFレンズのマクロレンズとしては、「ハーフマクロ」のRF35mm F1.8 MACRO IS STMとRF85mm F2 MACRO IS STMがラインアップされていました。ハーフではなく「等倍」のマクロレンズを心待ちにしていた方は多いでしょう。RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは、なんと等倍以上。最大撮影倍率「1.4倍」のマクロレンズです。

5.0段(EOS R5やEOS R6との協調で最大8.0段)の手ブレ補正効果、ナノUSMによる高速AF、独創的なボケ感が楽しめる「SAコントロール」の搭載など、これまでマクロレンズの定番として使い慣れたEF100mm F2.8Lマクロ IS USMの基本性能が大きく向上。一本で多彩な表現が楽しめる面白いレンズに仕上がっています。外観デザインはすっきりとした印象。手持ち撮影でのバランス感が良好です。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/1500秒・ISO400
青空の背景にピンクの強い早咲きの桜を浮かべて。前にも桜を入れて桜色をふんわりまとわせフレーミングしました。
青空の背景にピンクの強い早咲きの桜を浮かべて。前にも桜を入れて桜色をふんわりまとわせフレーミング Copyright MAKI KAWAI
EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/125秒・ISO400
カタクリは「春の妖精(スプリング・エフェメラル)」と呼ばれる花の一つ。妖精がダンスしているようなイメージで、背景にはキラキラの丸ボケをあしらいました。
カタクリは「春の妖精(スプリング・エフェメラル)」と呼ばれる花の一つ。妖精がダンスしているようなイメージで、背景にはキラキラの丸ボケをあしらいました。 Copyright MAKI KAWAI

撮影倍率アップと強力な手ブレ補正効果で、楽しく自由な撮影が可能に。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/2秒・ISO800
最大撮影倍率1.4倍で撮影。ラナンキュラスの花びらをフリルのように。
ラナンキュラスの花びらをフリルのように。 Copyright MAKI KAWAI

RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの最大撮影倍率「1.4倍」は、EF100mm F2.8Lマクロ IS USMにエクステンションチューブEF25IIを併用したときの最大撮影倍率「1.37倍」よりも上。RF100mm F2.8 L MACRO IS USM一本で、かなり小さな被写体の撮影まで対応できます。

ちなみに、撮影倍率「等倍」のレンズを使って直径1cmの被写体を最短撮影距離で撮影すると、撮像素子面では1cmの大きさで写ります。最大撮影倍率「1/2倍」のハーフマクロのレンズなら撮像素子面では0.5cmの大きさで写ります。

撮影倍率「等倍」(左)と「1.4倍」(右)を比較してみました。1つの花の直径は約7mmです。
撮影倍率「等倍」(左)と「1.4倍」(右)を比較してみました。1つの花の直径は約7mmです。 Copyright MAKI KAWAI

マクロレンズを選ぶとき、「最短撮影距離」(カメラのセンサー面から被写体までの距離)と、「ワーキングディスタンス」(レンズの先端から被写体までの距離)もチェックしておきたいポイント。RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの最短撮影距離は26cm、ワーキングディスタンスは8.6cmです。しっかり被写体に寄れるマクロレンズです。

マクロレンズだからといって、必ずしも最短撮影距離ばかりで撮るわけではありませんが、思い切って寄れるほうが撮影の自由度が増しますね。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F4・1/6秒・ISO1000
縁のフリルがかわいらしいムスカリの花。1.4倍で撮ればベルのような形状の面白さまでわかります。
縁のフリルがかわいらしいムスカリの花 Copyright MAKI KAWAI
EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/125秒・ISO200
オオイヌノフグリを最短撮影距離で。花は日陰に、背景は日の当たる地面です。花は直径5mmぐらい。真横から見ると宇宙人のようですね。
オオイヌノフグリを最短撮影距離で。 Copyright MAKI KAWAI
地面にカメラを置くようにして、バリアングル液晶モニターでライブビュー撮影。影ができるのでレンズフードは外しました。
地面にカメラを置くようにして、バリアングル液晶モニターでライブビュー撮影

手ブレ補正効果は、EEF100mm F2.8Lマクロ IS USMが4段だったのに対して、RF100mm F2.8 L MACRO IS USMでは5.0段になりました。さらに、ボディー内5軸手ブレ補正機構を搭載するEOS R5やEOS R6との組み合わせでは、協調制御で最大8.0段分の補正効果が得られます。

最大8.0段の手ブレ補正効果の安心感は、想像以上でした。例えば、部屋でテーブルフォトや花撮影をするときにも、手持ちで気軽に撮影できます。屋外の撮影でファインダーをのぞかずにライブビュー撮影するときにも、手ブレ補正があると心強いですね。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/45秒・ISO200
地面すれすれに咲く花をバリアングル液晶モニターを使って撮影。ファインダーをのぞかない撮影では手ブレが心配なのですが、1/45秒でも問題なく撮影できました。
地面すれすれに咲く花をバリアングルで撮影。 Copyright MAKI KAWAI

前後のボケ具合を変化させられる「SAコントロールリング」が楽しい!

さまざまな新機能がうれしいRF100mm F2.8 L MACRO IS USM。私が一番気に入ったのは、「SAコントロールリング」です。SA(Spherical Aberration)とは「球面収差」のこと。リングを回すことにより、ピントを合わせたところから前後のボケ描写を変化させられる機能です。

プラス(+)側に回すと、後ろボケの輪郭は硬く描写され、いわゆる「バブルボケ」になります。前ボケの輪郭は柔らかく描写されます。
マイナス(-)側に回すと、後ろボケはうずを巻いたように柔らかく描写され、いわゆる「グルグルボケ」になります。前ボケの輪郭は堅く描写されます。

ピントを合わせた部分はソフトな描写になりますので、ソフトフォーカスのようなイメージの写真が撮れます。

レンズ中央部にある「SAコントロールリング」。「+」側と、「-」側に回してボケ具合を調整します。真ん中の「0」にあたる部分にのみ軽いクリック感があり、+側、-側への操作を感覚的に行えます。また、意図せずリングが回転するのを防ぐため、SAコントロールリングロックスイッチを搭載しています(リングを中央位置にロックします)。
レンズ中央部にある「SAコントロールリング」。「+」側と、「-」側に回してボケ具合を調整します。
SAコントロールリングの効果を比較してみましょう。SAコントロールリングの効果を使わない通常の撮影です。これがSAコントロールにより、どのように変化するか注目してください。
SAコントロールリングの効果を使わない通常の撮影 Copyright MAKI KAWAI
【SAコントロール:+2】フォーカス位置より後方:硬いバブルボケに。フォーカス位置より手前:柔らかなグルグルボケに。フォーカス位置:輪郭の描写がソフトに。
【SAコントロール:+2】フォーカス位置より後方:硬いバブルボケに。 Copyright MAKI KAWAI
【SAコントロール:-2】フォーカス位置より後方:柔らかなグルグルボケに。フォーカス位置より手前:硬いバブルボケに。フォーカス位置:輪郭の描写がソフトに。
【SAコントロール:-2】フォーカス位置より後方:柔らかなグルグルボケに。 Copyright MAKI KAWAI

SAコントロールリングによる描写の変化は、ピントを合わせた部分から前ボケや背景ボケまでの距離などによって変化します(最短撮影距離では効果は出にくいようです)。まずは寄ったり引いたり、いろんな条件で試してみるといいでしょう。

高画質な撮影が楽しめるRF100mm F2.8 L MACRO IS USMですが、SAコントロールリングを活用することでオールドレンズ風な独特のアジがあるボケ感が楽しめます。1本でレンズ何本分もの表現ができるレンズだと感じました。

EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/60秒・ISO200
ピントはシャクナゲのシベに合わせ、背景に丸ボケができる部分をフレーミング。「SAコントロール:+2」に設定。丸ボケの輪郭が硬くなり、バブルボケになりました。
ピントはシャクナゲのシベに合わせ、背景に丸ボケができる部分をフレーミング。 Copyright MAKI KAWAI
EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/1500秒・ISO400
少し奥の枝にピントを合わせ、手前に枝がたくさん入る構図にしました。「SAコントロール:-2」に設定して前ボケの輪郭は硬めに。全体的にソフト感を出しました。絵画風な描写がお気に入りです。
ピントはシャクナゲのシベに合わせ、背景に丸ボケができる部分をフレーミング。 Copyright MAKI KAWAI

今回RF100mm F2.8 L MACRO IS USMを使ってみて、これまで愛用してきたEF100mm F2.8Lマクロ IS USMから乗り換えてみたいと感じました。

「EF100マクロ」は根強い人気のある優れたレンズですが、私が「RF100マクロ」を使いたい第一の理由は、SAコントロールリングがあること。いままでの撮影にちょっと飽きちゃった人にも楽しんでもらえるはずです。

ボディー、レンズの進化は、自分をサポートしてくれる強い味方。ぜひ新機能を楽しみながら使いこなして、新しい表現を模索してみてくださいね。

PROFILE

川合麻紀(かわい・まき)
川合麻紀(かわい・まき)

さまざまな被写体を独特の色彩感覚で切りとる「彩り写真家」。アフリカの野生動物からカナダのオーロラをはじめ、イルミネーション、花、建築など被写体は多岐にわたる。アトリエカワイイフォト主宰。公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会会員。

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キヤノンRF100mm F2.8 L MACRO IS USM フォトグラファー・レビュー
https://personal.canon.jp/articles/review/rf100mmf28l-review
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/review/rf100mmf28l-review/image/rf10028lmis.jpg?la=ja-JP&hash=D6C2BDCA9B62EB1842F87D99D59CA60C
2021-04-21
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