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編み物を彩る大自然の色、癒しの色とは。

公開日:2021年4月26日

最終更新日:2021年6月24日

Photo : Tamao Izumi

編み物歴はおよそ15年!それだけ長く続けていても「編み物の息抜きにまた編み物がしたくなる」と楽しそうに笑う編み物屋の泉さん。落ち着いたトーンから鮮やかな色まで、とにかくたくさんの色を編んでつなげているのに不思議とごちゃつく印象は受けません。それは、花や野菜、海や空などの大自然からヒントを得て「きもちよい」色を使っているから?自然から受ける心地よさを編み込んだ泉さんの鮮やかな色と編み物の世界。癒されますよ。

PROFILE

泉玉青(いずみ・たまお)

編み物屋。バッグや小物を中心に、自然にある色を組み合わせたカラフルな編み物作品を制作。

日本全国、どこに行っても編み物ならば

わたしの夫は転勤族。26年の結婚生活で13回、全国各地を転々としてきました。

最初のうちは引っ越す度に新しい職場を探していましたが、毎回イチからスタートしなおすのが嫌になりまして。どんな土地でも続けられる仕事はないかな、といろいろ考えた末に思いついたのが手仕事の編み物でした。

振り返ると、実家には母が編んだ編み物がたくさんありました。花瓶の下に敷くレース編みや、わたしが生まれる時に編んでくれたおくるみなど。彼女が編み物をしていた記憶は全くありませんが不思議なもので、わたしも編み物をはじめたくなったのです。しかし、もし母が編み物ではなく刺繍を楽しむ人だったら今、わたしが夢中になったのも刺繍だったかもしれませんね。

親戚には木工作家や画家など腕一本で生計をたてる人が多く、それが関係するのかわかりませんが、わたしも小さい頃から手先が器用でした。ですが編み物に関しては最初からつまずいてしまいます。ひとりじゃどうにもならず、母に助けを求めました。くじけることなく難所を突破できたのは、彼女のおかげ。手助けがなければ編み物を続けていたかわかりません。それ以降は大きな壁にぶつかることなく、どんどん編み物の世界にのめり込んでいきました。

編み物を仕事にしているのに、ちょっとした息抜きにまた編み物がしたくなってしまう。そのくらい、新しいモチーフを編むのが楽しいのです。

自然の中にある色がきもちいい

編み物のいいところは、材料と体ひとつあればどこででも編めること。今住んでいる海の近くの自宅には中庭があって、そこでは鳥のさえずりをBGMにのんびりとひなたぼっこをしながら編む時間がとってもきもちいいですね。最近はウグイスが鳴いていました。

夫が休みの日には、自宅近くの海辺にテントを張ってもらって富士山を見ながら編むことも。海の向こうに見える富士山はそれだけで格別ですが、夕焼けの景色はもっとすごい。富士山の側に太陽が沈んでいくと、赤やオレンジ、紫、ピンク、群青色など圧倒されるほど美しい色彩のグラデーションが空にあふれます。「ああ、この色を編みたい!」。いつもたまらなく、心の底から思いますね。

空や海以外にも、植物の自然な彩りもわたしの好きな色です。好きなものにはとことんのめりこむB型で(逆に言えば、関心のないものには全く興味が湧かないのですが)、編み物のほかに家庭菜園もはまって25年間つづけてきました。引っ越す度に市民農園を借りますが、抽選になっても絶対ハズれません!とにかく好きでしようがないので、野菜の神様が気をかけてくれているのかな、と思うほどです。

そこで毎年収穫する野菜はぴかぴかしていて、すごく綺麗。春と言えば、絹さやの花でしょうか。赤紫にピンクが混じる姿がとってもかわいいし、さやの若々しい緑もたまらない。これから色づくプチトマトの青い実が徐々に赤みを帯びるグラデーションもずっと見つめていられるほど。そうして自然のものを見ていると「色の組み合わせは無限だなあ」としみじみした気持ちとともに「花や果実の色を美しく思う感覚が編み物の色合わせにも活きているんじゃないかな」とも思いますね。

わたし自身はあまり意識してきませんでしたが最近、わたしの編み物作品を見てくださる方から「作品の写真を見ていると癒されます!」とよく言われます。なんでだろう、と不思議ですけれども、それはもしかしたら色のおかげなのかもしれません。

今までの転勤先は基本的に自然に囲まれた田舎ばかりで、いつでも清々しい緑に囲まれていました。そうすると当たり前のように、自然の美しさに触れる機会が多くなります。自然の中にいるだけで、人の心は癒されるものです。そこで心地よいと思った色を、わたしはそのまま編み糸の色選びでも選んでいるのかもしれませんね。たくさんの色を使って、どれだけカラフルな編み物にしても、土や草、花や空から受け取った気持ちいい色、健やかな色だからどことなく自然の気配が感じられて嫌な感じがしないのでしょう。

自分好みの色と光を探して

気づけば写真を撮る時も自分にとって心地よく感じられる色を探してきました。撮影してから色の調整(レタッチ)はあまりしないので、撮影のときが勝負です。

おまけ話ですがわたしはフィルムの使い捨てカメラをつかってきた世代なのでデジタルカメラを手にしたときはうれしくて。「何枚も撮れる!すごい!」と。それが楽しくて夢中で何枚も何枚も撮っては、自分の好きな光加減を探していた気がします。

いちばん好みだったのは、室内で朝方に撮るしっかりとした自然光。どことなく青白くて、きれいな印象に映る光だと思います。その光を捉えるのに、ちょうどいい定位置が部屋にあるので、そこで白い紙を引いて今でも撮影していますね。光が強ければ、レースのカーテンを1枚ひいて調整することも。そうして撮影すると糸そのものの、本当の色が写真でも見える気がします。

逆に夕方の光はあんまりわたしの好みではありませんでした。オレンジが強く、ほっこりする感じ。ですが、好みは人それぞれだと思います。たくさん写真を撮って、自分だけの光と色を探してみると、楽しいですよ。

そんなふうに好きなものずくめにしているからか、たまにお昼ごはんを食べるのも忘れて気づいたら夜になっていることもあります。でも一本の毛糸がどんどん思い通りのかたちになっていく過程も、出来上がったときの達成感と相まってやはり「かわいい!」と胸が弾む感じも全部がたまりません。

そうやってこの先も飽きることなく、編み物を続けたいものですね。


好きをかたちにするヒント

自分の好きな色と光を見つける

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

光を意識してみよう

作品の撮影をするときには、光の加減を意識してみましょう。自分にとって思い通りの写真が撮れる時間帯を探してみて。

色のヒントは自然の色から

作品作りのうえで大切な要素となる色を知って、色合わせを楽しみましょう。作品を撮影するときにも参考にしてみてください。

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編み物を彩る大自然の色、癒しの色とは。
https://personal.canon.jp/articles/life-style/itoshino/list/knitting
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/knitting/image/thumbnail-main.jpg?la=ja-JP&hash=DC47386F7899CF8D250A462787570C41
2021-04-26