このページの本文へ

カリグラフィーの魅力。それは晴れ舞台に華やかさと祝福を添えること。

公開日:2021年3月25日

最終更新日:2021年7月30日

Text :Maki Shimano
Photo :Seiji Mizuno, Umihiko Eto, Maki Shimano

カリグラフィーとは、文字をアートのようにデザインすること。例えば、結婚式や誕生日、入学祝いや卒業祝い。人生の記念すべき日、「おめでとう」の気持ちを込めて一筆したためる。その時、ほんのひと手間に愛を込めること。それこそカリグラファーの島野真希さんが、モダンカリグラフィーに魅了され続ける理由なのだそう。自分の「好き」と、誰かの笑顔が両立する「愛しいもの」のお話は、心が満たされる幸せにあふれていました。

PROFILE

島野真希(しまの・まき)

カリグラファー。モダンカリグラファーの草分け的存在として、ウエディングをはじめ幅広く活動。

「ひと手間」=自分らしさの軌跡

朝起きてから眠りにつくまで、2人の小さな男の子と全力投球で過ごすわたしの日々に、パッと華やかすぎるまでの彩りを与えてくれたのがモダンカリグラフィーの世界。

元々ブライダルの業界に身をおいていたことも、幼少期から書を嗜んでいたことも、センスを感じる洗練された空間やトレンドが大好きなことも……今までの人生の点と点がすべて繋がる感覚で導かれるように出逢ってしまった。

こんな素敵な手書き文字でウエディングをもっと自由に自分らしくお手伝いができたら。そこが全ての始まりだ。

モダンカリグラフィーは創り出す世界観すべてで自分を表現する。

文字そのものの個性の影響が大きいのは当たり前だが、そこに感じる空気感にはその人らしさが滲み出る。表現するカラーパレット、紙などの質感、合わせる小物たち、写真の撮り方や見せ方、その創り出すアイテムすべてに「らしさ」が出る。

始めた当時、こんなに「自分らしく」とか「自由に個性を表現する」なんてことは身近ではなかった気がする。振り返ると、その頃は自分でつくった見えない枠からはみだすことを何となく遠慮していた。しかし、時代の変化が追い風になった。ちょうどInstagramやYouTube、PinterestなどのSNSが広まり、豊かな個性や感性に触れられる世界が一気に広がった時期。世界中から発信されるアイディアに触れて、「こんな風に書きたい!」、「こんなものを作りたい!」と、触発されたのはわたしだけじゃないはず。その流れに乗って、わたしのカリグラフィージャーニー(文字の旅)と「らしさ」も、同じくSNSで広がっていった。

何がそんなに魅力的なのか。
なぜこんなにも私を魅了し続けるのか。

そんなことを掘り下げて考えてみると、やはり「ひと手間かける」が好きだから。
それも好きなものたちの組み合わせで、足したり引いたり。

このひと手間は、正直なところ、あってもなくても相手にはわからないことや伝わらないことも多く、極論を言ってしまえば自己満足なのだ。

でもそこには多くの想いや、かけた時間があり、ちょっと無責任に相手にどう感じたか評価を委ねるような目に見えないやり取りも含まれる。そして何より単純に自分自身が「可愛い!」とか「素敵!」と思えるものを生み出せるひと手間が楽しすぎるのだ。

大切な人に贈るプレゼントを選ぶとき、どんなものなら喜んでくれるかな?と考えるだろう。
それと似ているかもしれない。

自分らしい文字を取り入れたグッズの数々は、どれもひと手間かけているものばかり。かつそこに至るまでの「らしさ」も感じられて大好きだ。

例えばマスキングテープと身近な筆ペンを使ってブロックのような模様を描き、そこに手書き文字を乗せて簡単なカードを作ったり、お花を束ねるリボンに文字入れをしてみたり、手書き文字をソフトに取り込んでバルーンに貼りつけてみたり。

普段使いだけでなくシーズンごとにも楽しめるので、クリスマスパーティーではちょっとした席札に名前を書いておもてなししたり子どもたちのお菓子を入れる袋をおめかししたり。

鶴を折って、それに名前を書けばおめでたい行事にも使える。
モダンカリグラフィーを含む手書きの世界は、非日常だけでなく日常をより豊かに彩りをもたせてくれるものなのだ。

愛でるほど、癒され、高められる

仕事柄、1日の生活の中で手書き文字を見ない日はない。
書く時間は時代の変化とともに減っていることは事実かもしれないが、それだけ逆に手書きが愛しい。その瞬間、そのときの自分自身を等身大で表す大切な証のような気がする。

だからこそ、モダンカリグラフィーのもうひとつの魅力は「目に見える分かりやすい成果と癒し効果」かもなぁなんて。

先ほど等身大の自分を表す大切な証と書いた通り、手書き文字は生き物だ。
どんな世界も同じだと思うが、頑張った分、愛でた分、必ずそれが成果となって返ってくる。
はじめから上手く書ける人なんていないのだが、「好き」は強い。

「好き」なことはどれだけ時間をかけてもそれを努力だと思わず、無限に続けられるからだ。
むしろその時間は逆に癒しなのである。

わたし自身その瞬間は自分のゾーンに入って、紙とペンが擦れる音、滲みや掠れなどの筆跡、紙や画材の香り、自分自身の心地いい呼吸やリズム、五感をフル稼働しながら楽しむ癒しの時間になっている。

その好きなものを愛でる時間を継続できればできるほど、線の美しさやバランス感覚、センスなどが目に見える成果となって返ってくるとわたしは思う。

モダンカリグラフィーの魅力をウエディングきっかけで伝え始めて7年以上の月日が経ち、ウエディングの世界だけでなく子どものパーティー、グリーティングカード、手帳、様々なプロダクト製作など活動がかなり広くなった。そして「わたしも書けるようになりたいので教えてほしいです!」というお声かけから始まったレッスンは2016年の立ち上げ以来、今もなお月に100名以上の方が習いに来てくださる。

自分らしい手書き文字がもたらす世界はわたしだけでなく皆の心を豊かにしたり、整えたり、癒したり様々な効果があるんだと大変嬉しく思うし、好きなものを通じた繋がりが広がって幸せだ。

この先も「ひと手間」を大切に、等身大の自分を少しずつでも高めていきたい。


好きをかたちにするヒント

カリグラフィーを添えて自分らしさを

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

手作りのパーティーデコレーション

お気に入りのカリグラフィーでパーティーのデコレーションをつくってみましょう。「ひと手間」であなたらしさを取り入れて。

手紙にカリグラフィーを添えて

手紙の封筒の宛名にも、自分らしいカリグラフィーを取り入れてみてはいかがでしょうか。シンプルな封筒はいろいろな工夫ができそうです。

043660C6ECE94E29948DD6EED7C7750C
カリグラフィーの魅力。それは晴れ舞台に華やかさと祝福を添えること。
https://personal.canon.jp/articles/life-style/itoshino/list/calligraphy
2
https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/calligraphy/image/thumbnail-main.jpg?la=ja-JP&hash=D1BC477B818285BB1DF41180DFAA9793
2021-03-25