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アイシングクッキーが、私の可能性を見つけてくれた

公開日:2022年9月2日

最終更新日:2022年9月26日

Photo:Fiocco
立体的なアイシングクッキーの作品の写真

閉じこもりがちで、人とのコミュニケーションが決して得意ではなかったと話すアイシングクッキー作家のFioccoさん。そんな彼女の手を引き、新たな世界へと引っ張り出してくれたのがアイシングクッキーと、彼女が生み出したクッキーの国に住む女の子「Fioccoちゃん」でした。自らの分身のような彼女があちこちへ旅をするうちに、作家としてのFioccoさんも自分の表現の可能性を見出すように。子どもの頃、憧れた童話や絵本のなかのやさしく平和な世界観は、いまや国内外の企業やファンから支持されています。そんな彼女にとってのアイシングクッキーについて、お話をお聞きしました。

プロフィール

Fiocco(フィオッコ)さんのプロフィール写真
Fiocco(フィオッコ)

アイシングクッキー作家。作品はすべて型からデザイン、制作。かわいらしく、オリジナリティあふれる作品は国内外問わず幅広いファンに支持される。

アイシングクッキーが作家としての夢を叶えてくれた

一度は美大で美術を学び作家となることを夢見た私。ですが時代や環境、自分の臆病さのため、一歩踏み込むことができず会社勤めをする社会人となりました。

アイシングクッキーを作り始めたのも、作家としてどうにかなろうと意気込んでいたわけではありません。子どもが産まれ、かわいいお菓子を作ってあげたいなと思って何となしに始めただけだったんです。

作り始めた頃のアイシングクッキーの写真

けれども思いがけず、作ることの面白さにどんどんのめり込んで……。自分だけの時間に没頭できるのが久しぶりだったこともあるでしょうし、「こうしたらもっと良いものができるんじゃないかな?」と、クリエイティブな感覚がむくむくと自分から生まれてくる。それで「ああ、私にも自分なりに表現したいものがあったんだ」としみじみと思ったんです。

学生時代は「何を描いたらいいんだろう」とずっと悩み続けていました。絵を描くことも、工作をすることも、裁縫することも、ものづくりは好き。けれども、なにか自分の表現となるような要素が見つけられない。そんな葛藤から作家業は自分には向いていないと判断したはずなのに、アイシングクッキーを作っていると、あれもこれもと作ってみたい世界がキラキラと目の前に浮かんでくる。「ようやく出会えた」、そんなことを思いました。

クッキーの国に住む「Fioccoちゃん」の旅する物語

アイシングクッキー作家Fioccoとして活動する私が創り上げるクッキーの世界には、同じ名前の「Fioccoちゃん」という女の子が登場します。彼女はこの世界の主人公的な立ち位置となるキャラクター。今まで手がけてきた作品たちも、基本的にはFioccoちゃんが中心となり、世界中を旅しては新しい動物と出会ったり、なにかの出来事を体験したりします。

お団子のFioccoちゃんとたくさんの楽器や動物のアイシングクッキーの写真
旅するFioccoちゃんの写真

旅するFioccoちゃんが出会うのは、たとえば、ネイティブアメリカンがかつて移動用の住居として使用していたティピーテントに暮らすキツネや、ニットで編まれたお菓子の家に暮らすテディベアたち。この、ひとつひとつのシーンに物語があるんです。

クリスマスが間近に迫る頃、Fioccoちゃんが出会ったテディベアたちは、サンタさんが子どもたちに贈るプレゼントにされるばかりで、それを不満に思っていました。「どうして僕は贈られるばかりで、僕にプレゼントはないんだ!」。そう思ってテディベアは、クリスマスイブの夜、今日は寝ずに朝までサンタを待つぞと固い決意をする……そんなお話。ちょっとくすっと笑えるような、かわいさがにじむようなお話です。

立体的なアイシングクッキーの作品の写真
立体的なアイシングクッキーの作品の写真

Fioccoちゃんはクッキーの世界の住人ですから、私がクッキーを焼いてデコレーションをすればするほど、どこにでも行けるしだれにでも会える。まるで人形遊びのようにそのひとつひとつのシーンを作りながら物語を生み出していくと断片的に、すこしずつ彼女の世界が広がって、どんどん色づいていく。そうやって想いを馳せながらのアイシングクッキー作りはワクワクします。

立体的なアイシングクッキーの作品の写真
ハロウィンのアイシングクッキーの作品の写真

そんなFioccoちゃんは、私にとっての分身のような存在なんです。お団子ヘアをよくしているのも私と一緒。私が子どもの頃に憧れた世界のようなもののなかを遊んでもらうというか……。大好きだったエリック・カールさん『はらぺこあおむし』のような絵本の中の、やさしい平和な世界をみんなに楽しんでもらえたらなと思っています。

アイシングクッキーは「食べられるアート」

私が思うアイシングクッキーのいちばんの魅力は、食べられるアートであること。お気に入りの作品はどうしても食べられなくて観賞用になってしまうことがあるけれど、クッキーが湿気てしまわない内に仕上げたりラッピングしてプレゼントにできるようなデザインを意識しています。アート的でありながらあくまでお菓子の域をギリギリでない。それが私のこだわりです。

雪だるまのアイシングクッキーの作品の写真
中からお菓子が出てくるアイシングクッキーの作品の写真

ですから完成したアイシングッキーを写真に撮るときも美味しそうに見えることが大事。アイシングクッキーの特徴でもある半立体のぷくっとした質感がわかるように、自然光で一方向から光が当たるようにするときれいに美味しそうに見える気がしています。

それから写真の枠の中でも、ひとつの物語が感じられるような配置にするのもポイントですね。これは写真を撮る前のテクニックにはなりますが、作品のテーマから連想される小さなアイテムをあらかじめ用意して、効果的に余白に配置するんです。アイシングのお花だったり、お砂糖のパーツだったり。それを組みあわせて、ひとつの世界観を作る。これもちょっとおままごとの要素がありますね(笑)。

制作途中アイシングパーツの写真
アイシングパーツを使って作った作品の写真

小さなパーツはアイシングとコルネでさくっと作ることができますが、Fioccoちゃんのような大きなかたちは自分でクッキー型を作っています。これは周りに結構びっくりされることですね。家族からも「そこまでやるの?!」と(笑)。

自作のクッキー型の写真

確かに「どうしてそこまで」と思われるかもしれませんが、私にとっては自分の思い描く世界観を完成させるには市販の型では不十分だから、というとてもシンプルな理由なんです。自分の理想とするフォルムやラインがあって、それをただ実現したいだけ。

絵画に例えるとクッキーはいわばキャンバスのようなものです。学生の頃も、もとめる形態やサイズがなければロールでキャンバスを買ってきて自分の手で木枠に張っていました。必要なことのために道具を作る、自然で当たり前の作業なんです。

それにクッキーの型って案外簡単に作れるものなんですよ。ホームセンターで簡単に手に入るアルミの薄い板を買ってきて、細いリボン状にカット。それを作りたい形に合わせて曲げていく。最後に切り込みを入れて繋げたら完成。今は3Dプリンターなどでも作れるようですね。

絵本の世界を再現したアイシングクッキーの作品の写真
絵本の世界を再現したアイシングクッキーの作品の写真

そうやって自分の頭の中にある世界を、アイシングクッキーという形を借りて作る。そうしているうちに閉じこもりがちで、言葉での表現が苦手な私の世界はどんどん開けていきました。これがなければ出会えなかった人もたくさんいますし、アイシングッキーがあるから喜んでもらえた人もいます。

一度は諦めた自分の生き方のようなものをもう一度見出してくれたものでもあり、人とつながるためのコミュニケーションの手段でもある。今では、日々の暮らしの中でも、アイシングクッキーのことを考えない日はないほど、自分とは切っても切り離せないものとなりました。

アイシングクッキーは世界と私とをつなぐ、とても重要な役割をもつ、大事なものなんです。

好きをかたちにするヒント

アイシングクッキーの魅力を伝えよう

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

かわいいクッキーを並べて、おしゃれに写す

こだわりの手作りクッキーが焼けたら、そのかわいさを写真に残してみませんか。テーブルフォトのライティングとスタイリングのコツを見て、お気に入りの一枚に挑戦してみてくださいね。

メルヘンな世界観を演出!お菓子の家を作ってみよう

メルヘンでかわいいお菓子の家。キヤノンのプリンターがあれば、ペーパークラフトでも作れます。アイシングクッキーと組み合わせて、あなただけの世界を表現してみませんか。

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アイシングクッキーが、私の可能性を見つけてくれた
https://personal.canon.jp/articles/life-style/itoshino/list/icingcookie
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/icingcookie/image/icingcookie-thumb.jpg?la=ja-JP&hash=F788D7314B080B4F84B2C99BBE09912D
2022-09-02