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印度カリー子さんの、365日毎食スパイスカレー生活。

公開日:2021年8月25日

最終更新日:2022年6月30日

Photo : IndoCurryKo , Kurouzu Setsuna

いまやテレビに雑誌に書籍に引っ張りだこの印度カリー子さん。彼女にとってのスパイスとカレーは「つまらなかった自分の人生を変えた」と言うほど鮮烈な影響を与えたもの。多忙な日々でも毎日スパイスカレーを食べ続け「一方的に愛情を注ぎ続けても嫌がられない」とうっとりする、その溢れ余る愛しさはどこから?自分の半生をスパイスとカレーに捧げる彼女の生き様とともに、食への向き合い方に革命を起こした「マインドフルネスイーティング」について話を伺いました。

PROFILE

印度カリー子(いんどかりーこ)

スパイス初心者のための専門店・香林館(株)代表取締役。「スパイスカレーをおうちでもっと手軽に」をモットーに、スパイス関連プロダクトの企画販売ほか、レシピ制作、コンサルティングなど幅広く行う。

出し惜しみなき愛情を一心に注ぐ

私にとってスパイスカレーは、まさに恋人。常に考えているし、もっと知りたいし、その魅力をみんなにも知って欲しい。もし相手が生の人間だったらきっと「重い」と一蹴されてしまうかもしれませんが、私の生涯をかけて愛情を注いでも嫌がられることはありません。スパイスカレーならば。本当にカレーって、いいですよね。

振り返ると、瞬間的に「スパイスカレーに今、恋に落ちました!」みたいなタイミングって実はないんです。じわじわと興味が深まって自然なかたちで私の生活から切っても切り離せなくなっていったのが事実です。

でもそう思うようになるまではやりたいことも夢も特にない、サークルにも入らずやることがないから勉強するような、率直に言えばつまらない人間でした。だからこそスパイスカレーとの出会いは、私に「私だけの人生が始まった」と思わせてくれた特別なもの。そして自分の人生をかけて関わっていく価値のあるものだと感じさせてくれたものでもあります。

「スパイスから作るカレーを日本の家庭に広めること」。
19歳のときに人生で初めて抱いた夢は今、叶いつつあります。

個性あふれるスパイスが日本の食卓に根付くまで

スパイスカレーに出会って間もない頃、私はスパイスの組み合わせの妙に驚き、たいそう感銘を受けたのでした。乾燥した樹皮や実などの個性的なキャラクター揃いのスパイスからは到底カレーが作れるとは思えませんでしたから。ですが、ただレシピの通り調合するだけ。それだけでよく見知ったあの味が、自分の手から生み出される。そのことにひどく感動したものです。

それと前後して、ほんの数種類のスパイスと、日常的に手に入る素材の掛け合わせによるアレンジの可能性は無限大で日本の家庭料理にもなり得るポテンシャルを秘めているとも思いました。「どうしてこの魅力にみんな気づかないんだろう」とも。しかしそれもそのはずで、当時スパイスカレーの作り方はおろかスパイスについてはよく知られておらず、ましてやどこで手に入るのかもよく分からない状態だったのです。

ならばこの課題を解決さえすればスパイスカレーの魅力を日本中に届けられる。そんな気持ちから半ば衝動に突き動かされて、印度カリー子としてスパイスセットを販売することを決心。覚悟こそあれ現実は厳しく、商品化までに多くの工場から断られ相手にされないこともしばしばでした。悔しい想いで挫けそうになりながらも初めて心から実現したいとまで思えた、これだけは誰にも邪魔されたくないと願いながら作り上げたスパイスセット。完成しウェブサイトで初めての受注が入ったとき「私の夢が、誰かに必要とされていたんだ」と感無量だったのをよく覚えています。

伝えたいイメージを描き、写しとる

そんな大好きな恋人(スパイスカレー)の魅力を、より多くの人に知ってもらいたい。その上で、写真の見せ方は重要です。

絶対に撮らないと決めているのは、料理に寄った写真。ただ美味しそうな写真では「食べたい」気持ちを喚起させても自宅で作るまでに至らなかったり、作ったとしても一過性のもので終わったりします。そうではなくもっと家庭料理のように日常的に作り続けて欲しい。そう思うと、従来のカレー写真には足りなかった抜け感やナチュラルさ、ヘルシーさといった要素を盛り込んで見せることに意識を向けて強いコントラストをつけず、余白感を大事にするようになりました。

白いうつわを多用するのも同じ理由です。かわいいものが好きな女性や、ボディラインを気にされる女性にとっても「食べてみたい」と思ってもらえる印象のカレーを作りたくて。

アジアンテイストで、マニアックで重い。ハイカロリーで食べたら太りそう。そうした固定概念から離れたイメージを演出できるよう小物らしさ、可愛らしさを心がけました。

ほかにも意識していることはいろいろとありますが、まずはなにより「おいしそう〜!」と思いながら撮ってあげることでしょうか。自然と美味しい部分を見つけようと、脳みそが働き始めますよ。

ただ食事に意識を集中させる

美味しさを見つけようとする脳の働きを食事の場でも意識すると、豊かな食事体験をもたらすことにもつながります。

たとえばスパイスカレーを食べるときに、積極的に意識を身体中に張り巡らしてみてください。目でカレーの色を観察し、鼻からスパイスの香りを感じ、口に入れたときの食感やスパイスの軽さや重み、咀嚼し混じり合う味わいに意識を向ける。時間の経過とともに変化する食べ物の状態まで感じながら食べていく。

そうすると脳が活性化して、ふわあっと喚起されるような感覚が生まれます。衝撃を受けた時や良質な映画を見た後のように。

一連の行為は五感を使って食べる「マインドフルネスイーティング(食事瞑想)」と言われるものでスマホを片手にいじりながら、本を読みながら、音楽を聴きながらではできません。ただ目の前にある食事に意識を研ぎ澄ませる。言うなれば、心と体をともに満たす行為。1日に3回、心を整える時間があると捉えていただければいいと思います。

これはスパイスに馴染みのあるインド人がやっても何も意味がありません。食事とスパイスの距離が遠い日本人であればこそ、未知のものに対して注意深く、潜在的な魅力に気付ける可能性があるんです。(逆に、インドの方であれば味噌汁やおにぎりを食べてもらうのがいいでしょう)

余談ですが、私は毎日家カレーを食べる度に手食(てしょく)を行っています。手でカレールーを混ぜればゴツゴツしているだとかボソボソしているとか、地肌から伝わる感覚を受け取ることができますし、どの素材をどんなふうに混ぜようかということもスプーンではなく自分の手をつかうと行為に対する実感がより強く湧きます。ご飯を口に運ぶ前からどんどん脳みそが活発になっていくのを感じますよ。

最初は慣れないので食べにくいですけれども、この食べにくさもポイントで。どんな風に体を使えばいいのかだとか、カレーに向き合っていることが非常にわかりやすく感じられると思います。

そういうことからも身近な材料で日常的に作りやすいスパイスカレーは、このマインドフルネスイーティングにうってつけです。食べるほどに綺麗になるし、愛情をいくら注いでも注ぎすぎることはない。もう、最強の恋人です。

スパイスカレーが日本食になる未来は見えている

これは大袈裟でもなんでもなく10年後、日本の食卓にはスパイスが必ず常備され、コンビニにもスパイスが当然のように並んでいると確信をもって言えます。

そうなったらすっと印度カリー子は消えていって、その後にはスパイスカレーだけがみなさんの食卓に残る……。夢を叶えた先にあるその状態こそ私の夢であり、理想そのものです。

好きをかたちにするヒント

カレーをもっと楽しむひと工夫

好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。

スパイスをラベルで整理しよう

様々なスパイスを集めるようになったら、ラベルをつけて整理するのがおすすめ。スパイスカレー作りに慣れてくると、見た目と香りでスパイスを判断できるようになるかも?

「美味しい」を写真に残す

旅先で美味しいカレーに出会ったときには、まずはお皿を真ん中にいれて撮影する「日の丸構図」で撮影してみましょう。おしぼりなどの余計なものをとりのぞいて、余白をつくることを忘れずに!

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印度カリー子さんの、365日毎食スパイスカレー生活。
https://personal.canon.jp/ja-JP/articles/life-style/itoshino/list/curry
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https://personal.canon.jp/-/media/Project/Canon/CanonJP/Personal/articles/life-style/itoshino/list/curry/image/thumbnail-main.jpg?la=ja-JP&hash=2FF4938608CA372556CC21087116D88A
2021-08-25