美の国あきたの誇りとプライド “秋田心”と出会う旅EOS R6 Mark II×あきた舞妓(秋田県)
公開日:2025年4月18日

仕事や趣味、遊びのボーダーを軽やかに飛び越え、人生を愛(いと)しむ人を紹介する「itoshino」。この企画では、全国各地で「好き」をかたちにしている人のもとへitoshino編集部が訪問。その活動やライフスタイルをお伝えします。
今回のキーワードは、秋田の人が胸に秘める地元への誇りとプライド=「秋田心」です。この言葉を事業の中心に据えて、かつて秋田で栄えた「あきた舞妓」の復活に力を注ぎ、伝統文化と芸能の息吹を現代の価値として発信しているのが、株式会社せんの皆さんです。秋田といえば「秋田美人」ですが、その実体は何だろう? という素朴な疑問から出発し、現在の道に進んだ松岡さんを訪ねて、冬の秋田県に出発! フォトグラファー・オカダキサラさんがEOS R6 Mark IIで撮り下ろした写真・動画とともにお楽しみください。
「あきた舞妓」復活! 消えかけた川反芸者の伝統を現代に
秋田市の中心に位置する繁華街・川反(かわばた)は、明治時代から続く「川反芸者」と呼ばれる芸者文化の中心地です。今も耳にする「秋田美人」という言葉は、この川反の芸者文化に由来しています。もともと秋田美人とは、容姿端麗なだけでなく、教養やおもてなしの精神を兼ね備えた女性を指します。
しかし、時代の流れのなかで川反の芸者文化は衰退。そこで芸舞妓の再育成が始まり、2014年には「あきた舞妓」が、2019年には“一人前”を意味する「あきた芸者」が誕生しました。この芸舞妓たちは、会える秋田美人として注目されています。
2016年には活動拠点として千秋公園内に「あきた文化産業施設 松下」がオープン。芸舞妓との交流を通じて秋田の文化に触れることができる取り組みが行われ話題を呼んでいます。あきた舞妓・あきた芸者の復活と事業化に奮闘するメンバーの一人が、株式会社せんの松岡叡美さんなのです。


ここに行けば秋田美人と会える! そんな情報をキャッチしたインバウンド客も数多く訪れる「あきた文化産業施設 松下」。秋田市の新たな観光拠点として注目のスポットです。
大正時代に創業した日本料理店「旧割烹松下」の建物をリノベーションした文化複合施設で、2階には約80畳の大広間があります。週末には、あきた舞妓やあきた芸者の演舞の鑑賞やお茶会が楽しめる「あきた舞妓劇場」を開催。芸舞妓とのふれあい交流を通じて、秋田の文化に触れることができます。

株式会社せん副支配人の松岡叡美さん。
川反芸者は、その最盛期に200人を数えましたが、約30年にわたり空白の時期を経験しました。2014年には、引退した伝説的な芸者から心意気を学び、各流派のお師匠さんから舞踊や音曲の技術を授かるほか、茶道や話し方、外国語会話などの習得にも努めるなど、川反芸者の文化を現代に継承する活動が始まりました。
2019年には「あきた舞妓」「あきた芸者」が復活を遂げ、株式会社せんでは4名の芸舞妓が活動中(2025年3月現在)。秋田の誇りと地元愛を大切にし、消えかけている価値を次世代に受け継ぐことを使命としています。
「私たちが大切にしているのは、秋田の人が地元を愛する心、誇りです。それをひと言で表現するために考えたのが、『秋田心(あきたしん)』というキーワード。有形無形の素晴らしいものがたくさんある秋田で、消えかかっている価値あるものが失われないように、この宝物を次の世代に受け継いでいく。そんな使命を感じながら事業に取り組んでいます」(松岡さん)


この日、「あきた舞妓劇場」の舞台を務めたのは、舞妓のまめ佳さん(上)と芸者の和丸さん。参加申込はWebからも気軽にできて、おひとり様でも秋田の伝統文化を体験できます。お昼の部の公演は完全予約制で、松花堂弁当が付いています。舞台を降りた芸舞妓が各テーブルにあいさつ回りしてくれるサービスも好評です。このように格式は高いまま敷居を下げ、「秋田美人」に会える貴重な体験ができるとあって、県内外や海外からの観光客が訪れています。空きがあれば当日参加も可能な「昼下がりの部」もあるので、秋田に行ったらぜひ足を運んでほしいスポットです。

秋田で「秀よし」といえば知らない者はいない名酒。秀よしを醸造している地元屈指の酒蔵、鈴木酒造店とあきた舞妓がコラボして生まれた日本酒が「純米大吟醸 あきた舞妓」です。
株式会社せんでは、こうしたコラボ商品の企画のほか、あきた舞妓が笑顔を振りまくラッピングタクシーや、芸舞妓の派遣事業などを通じて、秋田を盛り上げる観光PR活動も展開しています。あきた舞妓の魅力を広めながら、地域文化の保存と発展に努めているのです。
ところで「秀よし」は、ほとんどが地元で消費されることから、県外での購入は非常に困難とされる名酒なのだとか。それならば……。誘われるように秀よしの故郷、秋田県大仙市へ足を延ばすことにしました。
美酒王国・秋田。杜氏・蔵人の“心”を乗せる伝統の酒造り
創業は1689年(元禄2年)。335年の歴史を誇る「秀よし」、すなわち鈴木酒造店がある秋田県大仙市は、「大曲の花火」の開催地としても有名です。江戸時代中期に秋田藩主・佐竹公が酒の品評会を開き、「秀でて良し」と激賞されたことが「秀よし」の由来とされています。現在も家族経営で、地域の良質な材料を使用して日本酒を醸造しています。秋田の伝統文化を支える酒蔵を訪ねました。


「私たちは地元で採れる良質な米と天然水を原料に、秋田の食文化に合う酒造りを心がけています」と語るのは、元禄時代から数えて19代目となる鈴木酒造店代表・鈴木松右衛門さん。秋田の料理と共にこの酒を楽しむことで、より深い味わいを体験できる。秋田の食を引き立て高め合う。日本酒と食事が一体となって、その魅力が成立することを酒造りの理念としている酒蔵です。
鈴木さんの言葉からも、秋田を愛する心、誇り、「秋田心」が、しみわたるように伝わってきます。


7つの建物が登録有形文化財指定を受けている秀よしの醸造所。前蔵、中蔵、仕込み蔵の3つに分かれており、間口からは想像もできないほどの奥行きがあります。酒を貯蔵する鉄製タンクの容量は7000リットルもあって壮観です。
「あきた舞妓」の活動はスタート当初から応援しており、「純米大吟醸 あきた舞妓」でのコラボにつながったそうです。
「秋田を盛り上げる意味では、同じ業界の仲間のようなものですから」と鈴木松右衛門さんは語ります。かつて酒席で歌われていた幻の小唄「酒の秋田」があきた舞妓によって復活したことが、特別にうれしかったそうです。

杜氏(とうじ)とは、酒造りの責任者のこと。秀よしで杜氏を務める石沢繁昌さんは、この道42年の経験を持つベテランです。5つの酒蔵を渡り歩き、秀よしでは20年のキャリア。酒造りの工程を管理・指導し、製品の品質を向上させるために長年努力を重ねてきました。
「酒造りには和の精神が欠かせません。それをひと言で表すのが『和醸良酒』という言葉。『和をもって醸した酒が良い酒である』という意味です。杜氏は酒造りの指導者ですが、一人で酒は造れません。従業員である蔵人たちが杜氏の気持ちを汲み取り、酒造りに情熱を注ぎ込むことで、良い酒が生まれるのです」(石沢さん)
日々の仕事にどれだけ気持ちを込めることができるか。心を乗せられるか。それが酒造りの腕に磨きをかけるのだといいます。
旧きよきものを現代、そして未来に伝える破格の大コレクション
「秋田心」をめぐる旅の最終章です。訪れたのは秋田市の郊外で、稀代の蒐集家・油谷滿夫さんが60年以上の歳月をかけて集めた明治・大正・昭和の生活用品をはじめ、さまざまなレトロなアイテムを収蔵・展示している「油谷これくしょん」です。
その数、約50万点! そのうち約20万点は「秋田市の文化を広めたい」という油谷さんの思いから市に寄贈されました。第1章で舞踊を披露してくれた、あきた舞妓のまめ佳さんといっしょに、レトロな空間を歩いてみました。

膨大な民族文化資料が展示されている油谷これくしょんは、個人のコレクションとは思えない規模です。廃校となっていた旧金足東小学校で展示が行われるだけでなく、保存のための整理やアーカイブ化も進められています。
残されたモノの価値を問うトークイベントや、収集品を通じて地域コミュニティとの対話の場が設けられており、地域文化の理解と伝承を促進する役割を果たしています。

かつての教室には、それぞれテーマが設定されています。この部屋は懐かしい駄菓子屋を再現したような雰囲気です。デッドストックのお菓子やおもちゃ、使い古された看板などが、所狭しと並んでいます。レトロなものに触れることができ、知らない時代のアイテムにも懐かしさを感じます。ここは誰もがタイムトラベラーになれる場所です。

昭和や平成の時代に子どもだった世代なら、実際に触れたことのある学校の備品や、詰め襟の学生服、戦前の教科書など、教育関連のレトロアイテムが展示された部屋。廃校を利用した展示施設だけあって、時空を超えた不思議空間になっています。

まめ佳さんが珍しそうにのぞき込んでいるのは、未整理の資料を収めた箱。整理・分類が終わったら、また新しい展示として公開されます。発掘を待つ化石のような、宝の山のような空間でした。

今回の旅では、株式会社せんによる「あきた舞妓」の復活、330年以上の歴史を持つ秋田の地酒「秀よし」、そして地域の文化資源を収集・保存・展示する「油谷これくしょん」を訪ねました。
共通しているのは、地域の文化を守りつつ、未来に向けた新しい価値創造のための活動であることです。それぞれの活動を通じて育まれる「秋田心」が、地域に対する愛情や誇りを深め、コミュニティの結束力を高める重要な要素なのかもしれません。
EOS R6 Mark IIで切りとる旅の終わりに。


今回秋田の撮影に使用したEOS R6 Mark IIは、普段から撮影によく使っているカメラです。手が小さい女性でも扱いやすいサイズがうれしいですね。ボタン配置が優れていて、右手だけでほとんどの操作ができます。
EOS R6 Mark IIは、価格と性能のバランスがいいですよね。画素数やAF速度などの性能で、高級機種と同等の機能を備えつつ、コストパフォーマンスの面でも優れています。フルサイズ機ですから、仕事にも作品づくりにも適しているカメラです。
秋田での撮影では、舞踊の動画やスチルを撮りましたが、AFが被写体をしっかり追いかけてくれるため、ピントを気にせずに画面のバランスや構図に集中できました。また、酒蔵など暗い場所での撮影でも粘り(ノイズが出にくく画像編集の耐久性があること)を発揮し、雰囲気とディテールを保ちながら仕上げることができました。
動画もほとんど手持ちで撮影し、踊りのシーンだけ三脚を使用しました。手ブレ補正が効果的で、スナップ的に撮った動画でもじっくり編集できるクオリティーがあると感じます。これからも仕事や作品づくりに使っていきたいですね。
今回の秋田取材以外の場面で撮影したスナップもご覧ください。



写真家プロフィール
オカダキサラ
1988年、東京生まれ。2010年、武蔵野美術大学造形学部映像学科卒業。2012年、東京綜合写真専門学校卒業。在学時の課題をきっかけにストリートフォトを撮り始め、「街が見落とした奇跡の現場」をテーマに撮影に取り組んでいる。「1_WALL」「Juna21」「コニカミノルタフォトプレミオ」などに入選。2023年、第1回キヤノン「GRAPHGATE」優秀賞を受賞。2024年、作品集「新世界より」(ケンエレブックス出版)を出版。私家版作品集をコンスタントに制作、発表。ウェブサイト「fashionsnap.com」、都築響一氏発行のメールマガジン「ROADSIDERS’ weekly」で写真コラムを連載中。

旅の風景を作品に仕上げるなら
好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。
軽快に、高画質で撮れる「EOS R6 mark II」
フルサイズとしてはコンパクトなサイズ感と、素早いAF性能が魅力的な「EOS R6 markII」は、旅のお供にぴったりのフルサイズカメラ。暗い場所でも高画質を保ち、手ブレ補正が効いて、スナップ動画も高品質に仕上がります。心ひかれた旅の風景を軽快に、かつ作品レベルのクオリティで撮影してみませんか?

本ページに掲載されている画像、文書その他データの著作権は著作者に帰属します。
また、無断で複製、転載することは、著作権者の権利の侵害となります。