第3回 RF24-240mm F4-6.3 IS USM
公開日:2019年9月25日
「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
RFレンズに興味津々のフォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!
今回試すのは「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」。広角24mmから望遠240mmまで撮れる「光学10倍ズーム」で、EOS RPとのレンズキットも登場。1本あれば便利そうで、しかもお値頃。気になる画質は……。
中西さん、いかがでしたか?
このRFレンズ〈買い〉ですか?
写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)
このレンズでまず撮ってみたかったのはスポーツ。さっそく中学校のラグビー部に依頼して撮影しました。プレー中の選手には近づけないので、広角24mmからレンズ交換なしで240mmまで使えるのはとても便利。望遠側が200mmではなく240mmまである。この40mmの差はとても大きい! ねらっていた表情が撮れて満足です。お子さんの運動会にもかなり使えそう。
RFレンズで気軽に使える10倍ズームが誕生したことで、Rシリーズの使い勝手が向上しそうです。
撮影協力:立教新座中学校ラグビー部
では、旅行用の一本としては? それを試すために EOS RP と RF24-240mm F4-6.3 IS USM だけを持って日帰り旅行へ出発。行き先の埼玉・秩父は、子供の頃、よく遊びにきた思い出深い場所です。レトロな雰囲気の食堂のショーウィンドウにレンズを向けました。
反射するガラス越しの撮影では画像がボンヤリしがち。でも、メニューの文字までシャープに描写しています。
シャープな部分と優しく淡いイメージを一枚に収めることができました。
駅にあったアナログの温度計。思わずレンズを向けました。ゆったりとした時間が流れていて、いいなあと思いながら一枚。駅のベンチに座って電車を待っている時間もいいですよね。
EOS RP と RF24-240mm F4-6.3 IS USM のセットはとても軽快。カメラとレンズをバックに仕舞うことは一度もありませんでした。ずっと撮っていられる。レンズ交換が必要ないからシャッターチャンスを逃しません。さっと構えてパッと撮れる。これって旅では重要です。
電車での日帰り旅。気になるのは荷物の重さ。RF24-240mm F4-6.3 IS USM は、大きくて重いのでは? と警戒していましたが、意外にも EOS RP とのバランス良好。これで10倍ズームが使えるのだから、気持ちも軽い!
画質を追求したLレンズのようなボケ味や高画質は期待できないにしても、これまでの10倍ズームとは比べ物にならないくらい画質は進化しています。とくにカメラを始めたばかりの方には「最初に買うべき一本」としておすすめ。価格とのバランスは「良心的」と言っていいかも。
秩父駅で下車してちょっとレトロな街並みを散策。きれいな白い暖簾が気になりました。この日は曇天と雨を繰り返す天気だったので、余計にすっきりとした白に惹かれました。撮影した時は気がつかなかったのですが、よく見ると暖簾の質感がしっかり描写されています。
高倍率ズームとしては、かなり優秀な描写をしてくれるレンズですね。これならこの場の空気や温度も写し込めそうな気がする。いいレンズだなと思いました。
軒下の風鈴に目がとまりました。結構高いところにあったので、両手を目一杯に上げて、バリアングル液晶を下に向けてノーファインダーで撮りました。かなり不安定な状態でカメラとレンズを支えていたので手ブレしそうでしたが、拡大してチェックすると……。
望遠側で開放F値(F6.3)という暗さ。シャッター速度は1/25秒と遅くなりましたが、レンズの暗さは約5段分の手ブレ補正が支えてくれる。さすがです。
ただ、テレ端(240mm)の繰り出しはご覧のとおり、かなり出ちゃいます。
日帰り旅も終盤。夕暮れ時に天気が回復して、光が射してきました。そして遠くの空に、いかにも夏らしい入道雲が見えたので一枚。雲はすぐに形を変えてしまうもの。ズームレンズの利点を生かして面白い雲を撮ろうと何度もシャッターを切りました。こんなとき24mmから240mmまでの10倍ズームの効果は絶大でした。
光の急激な変化によって撮りたいイメージも変わる。そのリズムに合わせてストレスなくシャッターを切ることができました。一期一会の瞬間を逃さない。レンズとボディのバランスがいいから、撮影に集中しても疲れません。
いよいよ旅の終わり。日が暮れてきて、三脚がないと撮れないかな? と思うシーンでも約5段分の手ブレ補正を信じてシャッターを切っていきます。この写真は、シャッター速度1/25秒。ISO感度を上げればもっと速いシャッター速度で切れるのですが、シャドウ部のノイズを抑えてハイライトからのトーンをきれいに出したいと思い、できるだけ感度を低く設定しました。
やはり5段分の手ブレ補正は効果大。イメージどおりの写真で旅を締めくくることができました。
「Lレンズは高嶺の花」そんな皆さんに〈買い〉推奨。
「RFシリーズのLレンズにはちょっと手が出ない」という人にとっては待望のレンズでしょうね。これに RF35mm F1.8 MACRO IS STM の2本を持っていれば、ひとまずどんな被写体にでも対応できそう。
高倍率ズームというと画質面が心配でしたが、そこはRシステムの進化。想像以上にシャープな描写でした。Lレンズの高画質でなければ納得できない! という超こだわり派でなければ、間違いなく〈買い〉でしょう。
レンズの造りを頑張りすぎないことで、この大きさに収めて、多少の光学的な弱点はDLO(デジタルレンズオプティマイザ)が補うという開発者の思想が感じられます。その意味で、すごく現代的(モダン)なレンズですね。
その魅力を一言で言うなら、こういうことだと思います。