「透明」が支える、わたしだけの世界。
公開日:2021年6月25日
最終更新日:2022年9月2日
「透明愛好家」として、自分の心持ちも生み出すものも透明であることを意識し続けるtomeiさん。水のように、誰しものこころにやわらかく透き通った心地よさを湛えるように。そんなふうに存在し続けたいと願い、制作を続ける彼女の写真は心から美しく感じる瞬間を素直に写しとったものばかり。移ろいゆく天気や時間に囚われることなく、そのゆらぎさえもおおらかに受け止めます。
PROFILE
透明の人
「ないものがある」。
そんな曖昧を抱えた「透明」の存在に
心惹かれて「好き」と言葉にするようになったのはつい最近のことです。
幼い頃は海というものが好きで、
海を訪れた時の高揚感と、
どこからともなくやってきて砂浜に打ち上げられた不思議な漂着物のことを
覚えています。海のカケラだと思っていたそれは、シーグラスでした。
その透き通るものをみつめている時間はあっという間で、思い返せば、その美しさに心奪われるあまり時間が融けてしまったと感じていたからなのだと思います。
月日は流れ、美しいと思っていたものが「透明」だったと気づかせてくれたのは
数年前に趣味で始めた写真でした。
ゆらぐ水面の波紋。ガラスの瓶。
感覚的にいいなと思ったものを集めてみた時にふと「透明」という存在を意識するようになりました。「ないものがある」というこの曖昧さは当時、好きなことが曖昧になっていた自身と重なるところもありました。
数年前までの自分は、胸を張って言えるほど好きなことを極めたことがなく、
海に流されるがままの漂流物のような生き方をしていました。
何者でもないことに言い知れぬ気持ちを抱えていた時に、「ああそうか。自分もまた透明だったのかもしれない。
透明という空気や水のように、流動的で曖昧な存在のような。」
と曖昧であることをすんなり受け入れられたのは透明がきっかけだったのです。
そして同時に好きなことを、何か一つに絞って極める必要もなければ
周りと比べる必要もない事。毒にも薬にもならないけれど、水のように人々の生活に寄り添う
慎ましさを教えてくれたのもまた透明です。
幼い頃、浜辺で自分が透明なシーグラスを拾ったように
透明は私を人生の荒波からすくい上げてくれたのかもしれません。
透明を生み出しつづける理由
作り続けるということ。味わうということ。
夏の深い青空、秋の散りゆく葉。季節の移り変わりというのは、暮らしに溶け込む、ごくありふれたものの一つです。
身近な幸せというのは触れてみることで実感することも多く、
透明なものを作り続けることを通して、
その気持ちを忘れないようにしているのかもしれません。
透明を生み出す行為、すなわち料理は日々なにかを食べて生きる私たちにとって切り離すことのできないことです。自分のためだけではなく、誰かを想い、こしらえ、贈る。料理をするという行為には、自分だけではなく他者の存在が確かに含まれるのです。そして料理を作れば、食べる楽しみも待っています。食べるということは私たちが息を吸うことと同じくらいなくてはならない行為です。
「食べること」は料理を作ることで自分と自分以外の誰かにも
贈ることができる良さがあります。
「料理を味わうように季節を味わう。
季節を味わうように料理を味わう。
そして与え、共に味わう。」
味わうということは日々の暮らしで忘れてしまったことに対して
気づきを与えてくれるからこそ、私は透明をつくり続けているんだと思います。
透明を纏う世界について
ここで、私が好きな「透明」をかたちにする時に大切にしていることについて綴っていきたいと思います。
2年前の冬に撮影した1枚の写真。写真の配信を始めて間もない頃、暮らしの中で現れた光の揺らぎ。美しいなと思った気持ちを残しておきたくてシャッターを切りました。
このふとした瞬間を積み重ねていくことで自分の「好き」がより一層形として残しておけるように思います。
バタフライピーティーにミルクを注いだ瞬間。
透明の料理はいつも花や季節など日常からヒントを得ていて、
この作品は空を連想して制作しました。後ろから差し込む柔らかな光が深い青をより鮮やかに。ミルクを注いだ一瞬は一秒一秒経つごとに姿形を変えていく、変わりゆく空のようです。
夜空のリングゼリーケーキ。星空という日が沈んだ夜にしかみられない世界を
太陽が昇る暖かな朝におもてなしした作品。
キーワードは「夜と朝の対話」。
透明の、あるようでない矛盾した存在と、夜が朝に含まれる、という矛盾した存在を重ねて作りました。一つの作品を作るときに物語や暮らしの中での気付きを透明の中に閉じ込めています。
透明なものをカメラにおさめるとき、
晴れの日、雨の日、天気によってその見え方は様々ですが、
変わりゆく様もまた魅力の一つだったりします。
透明を撮る時は、その日の空気感を楽しみつつ、その都度工夫を凝らしています。
例えば、雲のない澄み切った空が見える日は、
透明を光に透かして、輝きと陰影を強く残しています。
曇りや雨の日のような優しい明るさに包まれた日は、全体の色をふんわりと浮かびあがらせることができるので、
淡い色合いのものと相性が良かったりします。
その日によって撮れる環境や透明なものも異なるので、世界にたった一つだけの写真ができあがります。
同じ時間が二度とおとずれないように、同じ写真は一つもありません。
写真を見返した時にそのかけがえのない時間が記憶と一緒に思い起こさせます。
割れたり、蒸発したり、時間によって見え方が変わる、透明というものは
幼い頃も今も私を楽しませてくれる存在です。
透明のある日々
いつも自宅兼アトリエで透明なものを作っていますが、ものづくりをする時は、自身が心地よいと感じる空間作りもまた大切にしています。
透明を引き立たせるように、白を基調とした落ち着いた色彩の空間。
周りに置く物は必要最低限。全体的にシンプルな世界観にすることで、
自分の頭の中が少しスッキリするような気持ちになるのです。
ただ、何もない部屋なのかというと、実はそうでもなくて、アトリエには、透明なものもたくさん飾ってあります。
グラス、時計、どれも自分が好きなものばかり。写真集や本も置いてあります。
「シンプルさは大切にして、心には彩りを。」という言葉のように、
自分の心が嬉しくなるようなものを空間に溶け込ませるのもまた大切にしていることの一つです。
選りすぐりの「好き」を散りばめることで、
その部屋にあたたかみが生まれてくるような気がするからです。
私が透明愛好家として発信をしつづける背景には、自分自身をみつめること、空間も心も余白が大切であることを
気づかせてくれた「透明」があります。
「目にはみえなくて、いつもあり続けている。」
そんな透明を纏う世界がこれからも穏やかでありますようにと心から願っています。
「透明」をかたちに残す
好きなものを飾ったり、写真に残したり、アルバムにしたり。あなたの「好き」をかたちにするアイデアをご紹介します。
透明感のあるテーブルフォト
透明感のある写真を撮るときにはいくつかポイントがあります。被写体の選び方や撮影のときに必要な道具についてチェックしてみましょう。
光で変わる写真のイメージ
光について少し意識をするだけで、実は写真が格段に変わります。初心者だからこそ知っておきたいコツをチェックしておきましょう。
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