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第11回 RF85mm F2 MACRO IS STM

「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
フォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!

今回試すのは、開放F2の明るい単焦点の中望遠レンズ「RF85mm F2 MACRO IS STM」。最大撮影倍率0.5倍のマクロ機能やハイブリッドISを備えながら、気軽に持ち出せそうなコンパクトさが、イイ感じな一本。実際のところは? 気になりますね!
中西さん、いかがでしたか?

このRFレンズ〈買い〉ですか?

写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2・1/800秒・ISO320
作例1

夕日が落ちていく冬の午後5時。雨上がりのアスファルトに、光の線が作られていました。地面にカメラを置いて、超ローアングルで撮影。逆光の当たる落ち葉にフォーカスしながら、背景に光の世界を描きました。

新しいレンズを手にしてファインダーを見るとき、いつも肉眼では見えてこない世界が広がることを期待しています。RF85mm F2 MACRO IS STMは、そんな思いに応えてくれるレンズでした。光の「表情」や「匂い」まで、一枚の写真に閉じ込めていけそうな予感です。

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2・1/125秒・ISO1600
作例2

RF85mm F2 MACRO IS STMは、撮影倍率が0.5倍のハーフマクロレンズです。被写体に踏み込んで寄っていける気持ちよさは、マクロレンズならではの魅力。特に花の撮影では、マクロだからこそ表現できる世界を作り出せます。

こちらの写真は、機動力を生かすために手持ちで撮影しています。手ブレ補正機構(IS)は、スローシャッターだけではなくマクロ撮影でも大きな力を発揮します。手ブレ補正がなければ間違いなく三脚が必要な場面ですが、手持ちでフォーカス部分から背景へのボケのグラデーションをきれいに表現できました。このボケ味が、写真に柔らかな奥行きを出してくれるのです。

STMモーターの特徴でしょうか。マクロ域でわずかな動作音が聞こえました。静粛な動作音のEF100mm F2.8L IS USMをお使いの方は、少し気になるかもしれません。

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2・1/25秒・ISO1600
作例3

明るく見えるこの写真は、日が落ちかけている時間に撮影したため、ISO感度を上げて絞りを開放F2に設定しました。シャッタースピードは1/25秒。手持ち撮影ではかなり厳しい条件でしたが、手ブレ補正のおかげで安心してシャッターを切ることができました。機材の進化が撮影者を自由にしてくれますね。

RF85mm F2 MACRO IS STMは、角度ブレとシフトブレという2つのブレを同時に補正してくれる「ハイブリッドIS」を採用しています。また、EOS R5やEOS R6との組み合わせによる協調制御で、8段分という驚異的な手ブレ補正効果が得られます。

ただ、手持ちで最短撮影距離いっぱいのマクロ撮影をするなら、条件にもよりますがシャッタースピードは1/25秒以上ほしいところ。1/15秒にチャレンジしましたが、さすがに被写体ブレ、手ブレが気になりました。無理な手持ち撮影にこだわるよりも、素直に三脚を使用しましょう。

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2・1/50秒・ISO160
作例4

葉っぱに付いた水滴がとてもきれいだったので、グッと寄ってみました。水滴の質感を表現するために最短距離まで寄り、大きなボケ味にしたいので絞りは開放F2で撮影しました。

パソコンで写真を確認したとき、解像度の高さに感動しました。私が撮りたいとイメージしていた世界が、しっかりと表現されていたからです。日頃から「絞り開放から満足のいく画質で撮れるレンズ」を使いたいと思っていますが、 RF85mm F2 MACRO IS STMは、それを見事に実現しているレンズであると感じます。

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F3.2・1/1000秒・ISO400
作例5

RF85mm F2 MACRO IS STMは、マクロレンズであると同時に「単焦点レンズ」としての存在感もあります。中望遠85mmのレンズは、被写体とほどよい距離感を取れて、柔らかいボケ味が得られることから「ポートレートレンズ」といわれます。この写真は、馬と人が持つ優しい関係を表現したくて撮影しました。

馬の肌の質感や光のトーンの再現は、現場で思い描いたイメージどおり。撮影後の画像編集でさまざまな調整は可能ですが、やはり写真の決め手となるのはレンズの力。それが最も重要なのだと再認識しました。

撮影協力:乗馬クラブエトワール

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2.8・1/125秒・ISO2000
作例6

次は厩舎に移動して人馬を撮影。厩舎の照明は、外光と蛍光灯のミックスになっていました。奥からの強い自然光を生かして、幻想的な雰囲気を想像しながらシャッターを切りました。このような条件では、背景の光で被写体がにじんでしまいAFの精度が気になるシーンでしたが、RF85mm F2 MACRO IS STMは迷うことなくフォーカスしてくれました。おかげで厩舎に入る独特な柔らかい光をしっかりと写真に落とし込むことができました。

撮影協力:乗馬クラブエトワール

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2.8・1/500秒・ISO250
作例7

室内にある掛け時計を切りとった一枚です。ふと気になった瞬間に、さっと構えて気兼ねなくレンズを向けられるのは、手の中でフィットするコンパクトなレンズだから。「ちょっとそこまで」の散歩写真にもぴったりで、いつでも持ち歩きたくなるレンズです。

EOS R6と組み合わせてみましたが、心地よい重量バランスで、指先で回すコントロールリングの感触も良好。レンズを手にした瞬間に、相性のよさを感じました。こうしたスペックの数値ではわからない感覚は、とても大事にしたいですね。

EOS R6・RF85mm F2 MACRO IS STM・F2・1/2000秒・ISO100
作例8

久しぶりに私が育った街を撮りたくなり、実家に立ち寄ったときに少しだけ遠回りをして駅まで向かいました。昔からある古い歩道橋を渡りながら、私が子どものころから変わらない風景を見つけてはシャッターを切っていました。

画角50mmでは広すぎて、100mmだと狭くなってしまう。85mmは、私が写真に込めたい気持ちをまっすぐに切りとれる絶妙な画角のレンズだったようです。

ハーフマクロの機能を備えた中望遠レンズ。EOS RやRPとの相性も◎で〈買い〉です!

RF85mm F2 MACRO IS STMを装着したEOS R6

RF85mm F2 MACRO IS STMは、マクロ、ポートレート、スナップ撮影にも使える、多彩な顔を持つ個性的なレンズでした。これ一本で写真の楽しみをたくさん見出せそうです。

RFレンズならではの高い解像力を持ち合わせていますし、快適なフォーカスや便利なコントロールリング、コンパクトなサイズも魅力です。RFレンズのラインアップにうれしい一本が加わりました。

その魅力を一言で表すなら、こういうことだと思います。

RF85mm F2 MACRO IS STMを一言で言うなら「85mmだから写る光のニュアンス。」

プロフィール

中西祐介
中西祐介(なかにしゆうすけ)

1979年 東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業後、講談社写真部、アフロスポーツを経て2018年よりフリーランスフォトグラファー。

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第11回 RF85mm F2 MACRO IS STM
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2021-03-12
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