第10回 RF50mm F1.8 STM
公開日:2020年12月30日
「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
フォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!
今回試すのは、標準50mmの単焦点レンズ「RF50mm F1.8 STM」。大口径F1.8のボケ味が楽しめて小型軽量。人気が高い EF50mm F1.8 STM のRFレンズバージョンともいえる一本です。価格的にも超お手頃。さて、期待のかかる「写り」のほうは?
中西さん、いかがでしたか?
このRFレンズ〈買い〉ですか?
写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)
RFレンズのラインアップに、軽量・コンパクトで被写体に寄れる単焦点レンズが登場しました。EFレンズで人気だったEF50mm F1.8 STMでは最短撮影距離が35cm、撮影倍率が0.21倍でしたが、RF50mm F1.8 STMでは30cmまで寄れて0.25倍というクォーターマクロレンズという顔も持ち合わせます。
「標準レンズ」といわれる50mmは、自分で寄ったり引いたりすることで、本当にさまざまな表情を見せてくれます。まずは手元の花に寄って一枚。RFレンズらしくキレがあって気持ちいい写真が撮れますね。
イルミネーションを撮りたくて、街を歩いたときに出合った風景です。開放F値F1.8の世界を堪能したくて、絞りは開放にしました。ふんわりとしたボケ味が、イルミネーションの色味と相まって優しい世界を作り出してくれました。こういう写真を見るとF1.8の世界に引き込まれてしまいますね。開放F値F2.8では、ここまでのボケ味は得られません。もっともっと撮りたくなります。
夕日が当たる窓辺で猫が日向ぼっこをしている姿を発見!その直後にカメラを構えていました。自宅にいるときも、すぐ手に取れる場所にカメラを置いています。コンパクトで軽いレンズなら、ちょっと気になるシーンに出合ったとき、すぐにカメラを手に取れます。力まずにそっと構えられる気がして、この感覚がとても気持ちいい。身近にある世界を少し特別な時間に変えてくれるレンズなのかもしれません。
晩秋から冬にかけて低い位置から差し込む光にひかれ、ブラブラとカメラを持ち歩くことが多くなるこの季節。何気ない風景に目を向ける時間が多くなります。
とてもきれいな芝に目が止まりました。夕方近くになると短時間で光の量が変化してしまうので、露出をこまめに変えていきます。RF50mm F1.8 STMは、周辺部まで繊細な描写をしてくれます。うれしくなりますね。
RF50mm F1.8 STMのフォーカスリングは、コントロールリングを兼ねています。レンズ側面にあるスイッチで切り替え可能。私はカスタムメニューでコントロールリングに「ISO感度」を割り当てていて、ファインダーを見ながらコントロールリングを回してISO感度を変えています。
普段はマニュアル露出を使っていて、右手でメインダイヤルとサブ電子ダイヤルを操作して「絞り」と「シャッタースピード」を、左手でコントロールリングを操作して「ISO感度」を変えることで、瞬時の露出変化に対応しています。
私のライフワークである「馬と人」の撮影のために、千葉県にある乗馬クラブを訪ねました。被写体になってくれる馬と厩舎で対面。夕方に差し掛かっている時間だったので厩舎内に光が入りません。そこで絞りを開放にしてISO感度を上げることで対応しました。
馬を撮るときは優しい目に注目することが多いため、撮影直後にその部分から確認します。開放絞りではありますが、優しさあふれる目を見事に表現してくれました。
撮影協力:パートナーホースクラブ
次は馬と人のポートレートです。毎日同じ時間を過ごしている人馬の間にある「絆」を表現したくて撮影を続けています。柔らかく優しい空気を表現したかったので、絞り値を開放F1.8に設定。大きいボケ味を期待して撮影しました。
「開放F値にすると描写が甘くなるのでは?」という心配は、まったくの杞憂。絞り開放からシャープな描写が得られます。「3人」の表情を見ながら、この場に流れる時間を写し出せました。
撮影協力:パートナーホースクラブ
夕日を見ていたら、足元に一輪だけタンポポがあることに気がつきました。バリアングル液晶モニターを使って、地面スレスレのローアングルでカメラを構えて寄っていきます。こんなときは手ブレがとても気になります。RF50mm F1.8 STMはIS非搭載ですが、EOS R5のボディ内手ブレ補正機能に期待してシャッターを切りました。7段分の手ブレ補正効果があるので安心です。
フォーカス部分から背景の空に向かって、きれいにボケのトーンを作りたかったので、絞りはここでも開放F1.8を選択。なだらかに背景をぼかしてくれる描写が、本当に気に入りました。
これまで被写体に寄って撮影していましたが、標準50mmで遠景を撮ってみました。無限遠のフォーカス位置でも、しっかりと解像してくれますね。中望遠、準広角、そしてマクロと多くの顔を持つ標準50mmの単焦点レンズという存在の奥深さを改めて知ることができました。
コンパクトでキレのいい描写力。コスパの良さも含めて迷わず〈買い〉です!
私が写真学生だったとき、先生から「単焦点50mmは、最も核になるレンズだ」と教わりました。「自分の体を動かしながらレンズが持つ表情を見つけて、その効果を確かめてみなさい」という教えだったのかもしれません。そして写真の楽しさを教えてくれたのも50mm。RF50mm F1.8 STMを使ってみて、改めてそのことを実感しました。使えば使うほど違った世界を見せてくれるレンズ、もっと使い込んでいきたいですね。
その魅力を一言で言うなら、こういうことだと思います。