第7回 RF70-200mm F2.8 L IS USM
公開日:2020年1月22日
「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
RFレンズに興味津々のフォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!
今回試すのは、いよいよ「真打ち登場」と言っていいでしょう! 中望遠ズームレンズ「RF70-200mm F2.8 L IS USM」。一眼レフ用の定番中の定番レンズ「EF70-200mm F2.8L IS III USM」に比べて長さは約1/4短縮、重さは1/3の軽量化を実現しています。
さて、期待高まるその実力は? 「辛口コメント」は飛び出すのか?
中西さん、いかがでしたか?
このRFレンズ〈買い〉ですか?
写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)
RF70-200mm F2.8 L IS USM 一本だけを持ち出して、夜の街中をブラブラ歩きながら撮影してみました。昼間は感じ取れないさまざまな色や形の光を見つけては、レンズを向けていきました。
一眼レフ用のEF70-200mm F2.8L IS III USMは被写体に向けて気合いを入れてパシャっと撮るイメージでしたが(重さもずっしり)、今度の RF70-200mm F2.8 L IS USM は、被写体を見つけたら静かにスッとシャッターを押せる。軽快に持ち歩いてスナップできる感覚でした。これまで長く愛用してきた「70-200mm」とは全く違うフィーリング。とても気持ちがいい。
これまでにこんな気持ちで夜景を撮ることはなかったので、新しい感覚・感触ですね。レンズが小型、軽量化され機動力がアップした恩恵でしょう。
夜の東京タワーには、さまざまなストーリーが潜んでいるようで、とても好きな被写体の一つです。以前なら、このようなシーンを撮るために三脚にカメラを据えてじっくり構えて撮影しました。でも、いまは各所の夜景スポットで三脚の使用が禁止されるようになりました。それだけ夜景を撮る人が増えたということでしょう。
三脚がNGなら、思い切って手ブレ補正機構(IS)を信じてシャッターを切ります。5段分の手ブレ補正のおかげで、これまで見えていなかった世界まで見えるような気がします。
Licensed by TOKYO TOWER
EF70-200mm F2.8L IS III USMで不満だったのは「最短撮影距離が長い」ことでした(1.2m)。「もうちょっと被写体に寄りたいのに、寄り切れない!」なんて場面がありました。
RF70-200mm F2.8 L IS USM の最短撮影距離は0.7m。これはすごいことです。その差50cmが、行動範囲を大きく変えてくれます。この違いは、これまでの「70-200mm」を使ってきた人にはすぐ理解してもらえるはず。
今まで被写体に寄り切れずレンズ交換で対応していた場面でも、このレンズなら一本で勝負できる。これこそ RF70-200mm F2.8 L IS USM の機動力であると実感しました。
RF70-200mm F2.8 L IS USMのデザインで目を引くのは、繰り出し部分です。「旧型のようなインナーズームがいい」という声も聞きますが、私としては繰り出し式ズームで問題ないと感じました。
繰り出し部分の材質や構造もよく考えられているようで、グラつきを感じませんし、剛性もかなりありそう。
繰り出し式ズームを採用して全長を大幅に短く、軽量化した。その恩恵のほうが大きいですね。
剣道の稽古中に撮影を試みました。防具を身に着けた人物の強い存在感を表現するために、片側からストロボを使い、強い陰影をつけています。
一番気を使ったのは防具の「質感描写」です。その理由は、防具の質感こそが、一枚の写真の中にあるストーリー性に大きく影響するからです。
EFレンズの「70-200mm」も大変優秀でしたが、RF70-200mm F2.8 L IS USM の描写性能は同等以上。写真でしか表現できない「質感」を眼前に浮かび上がらせてくれました。
撮影協力:立教新座高等学校剣道部
左手で砂時計を持ち、右手でカメラを構えました。片手でカメラを持つのはあまりよくないかもしれませんが、手ブレ補正機構の効果と最短撮影距離が短いおかげ(70㎝)で難なく撮影ができました。
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片手撮影はカメラを落下させる危険性があるため、おすすめしません。
比較しては申し訳ないのですが、EFレンズの「70-200mm」を片腕でラクラクと支えるのは困難でしょう(笑)。ましてや手に持ったモノを撮るのは、最短撮影距離の関係でほぼ不可能。その意味でも RF70-200mm F2.8 L IS USM は、旧タイプにはないメリットがあると感じます。
この写真では、砂時計のガラスの質感を見せるために逆光で撮影。ガラス表面の微妙な部分をイメージどおりに描写できました。
部屋にあった招き猫を撮影しました。背景にある月のような丸い光は裸電球です。きれいに丸く、ナチュラルにぼけてくれました。まるで満月のよう。この背景があってこその一枚です。
シャープに映るフォーカス部分から、なめらかにフォーカスアウトしていくボケの階調がとても美しいレンズです。
夕日が強く差し込んできた教室です。こんな条件ではフレアが起きやすい場面です。でも、RF70-200mm F2.8 L IS USM は「SWCコーティング」の効果もあって、フレアなど逆光時に起こりやすい現象を抑えてくれます。この効果が優秀すぎて、意図的に少しフレアを生かしたいとき、逆に困ったりするかもしれません(笑)。
厳しい光の条件で撮影するほど、細部にまで先進的な技術力が行き届いているレンズであると実感します。
仕事で撮影したアスリートのポートレートです。ポートレートの定番レンズといえば、EFレンズの「70-200mm」。私これまでポートレート撮影で使用してきたレンズの多くが、EF70-200mm F2.8L IS III USMでした。
なぜ中望遠ズーム「70-200mm」なのか。やはり限られた時間内にさまざまなカットを撮影するために最小限のレンズ交換で撮り切れるズームレンズが必須であること。被写体に寄ったり引いたりして撮るため、手持ち撮影が基本になるため軽快に扱える機動力も重要です。
約1kgにまで軽量化されたRF70-200mm F2.8 L IS USM は、手持ちで動き回って撮影していても持ち疲れしないので大変助かりました。
撮影協力:日本馬術連盟、馬場馬術選手 原田喜市選手(蒜山ホースパーク)
「RFでよかった!」と思える中望遠ズームとして〈買い〉です!
EF70-200mm F2.8L IS III USMも完成度が高いレンズだったのですが、RF70-200mm F2.8 L IS USM は、そのさらに上を行く高画質。しかも、ミラーレス時代ならではの小型・軽量化を実現しました。
最短撮影距離が短くなったほか、これまで感じていた改善してほしい点を全て入れ込んで製品化してくれたところに、RF70-200mm F2.8 L IS USM というレンズへのキヤノンの並々ならぬ意気込みを感じます。
私自身、「70-200mm」はもっとも使用頻度が高いレンズだけに「辛口コメント」をしようと思っていましたが、それは必要ないようですね。
その魅力を一言で言うなら、こういうことだと思います。