第2回 RF28-70mm F2 L USM
公開日:2019年8月14日
「RFレンズってどうなのかな?」「いい評判は聞くけど、なかなか手が出ないよね……」と気になっている皆さんのための連載です。
RFレンズに興味津々のフォトグラファー・中西祐介さんが、毎回1本のRFレンズを本気で試し撮り。〈買い〉かどうかを率直に判定します!
今回試すのは「RF28-70mm F2 L USM」。いわゆる「絞り開放F2通しの標準ズーム」ではありますが、ただ者ではない雰囲気が……。
中西さん、いかがでしたか?
このRFレンズ〈買い〉ですか?
写真と語り:中西祐介(フォトグラファー)
まずは最初の一枚から。梅雨時の海に出かけて、青い傘をフレームの下ギリギリに入れて空を大きく入れ込んで撮影しました。画面の端はレンズの力が一番落ちてしまう部分なのですが……気になるゆがみもにじみもなし。画面の隅々まで力がこもった写真にできました。
大きくて重たいレンズですが、この仕上がりを見てしまうと納得。きっと大きな画面で見たくなりますよ。
子どもの頃、海に来ると夢中で集めたカラフルな貝殻。そんな記憶を思い出しながら、絞りを開放F2にしてピントの合う範囲を浅く、フワッとした写真にしてみました。
F2.8とF2では、ボケ味だけじゃなく表現できる世界感も違うんですよ。この差はとても大きい。ボケ味は柔らかくて美しいけど、フォーカス部分はシャープ。これまでのズームレンズにはなかった世界ですね。
軒下の風鈴に水滴が付いていました。雨の日には雨の日の空気感があります。この空気感を表現するには、レンズの力が大きく影響します。このレンズは、 空気感を取り込む含有量が圧倒的に多い印象です。もちろん数値化したスペックでは表せませんが、温度や風の流れ、雨粒が落ちてくる音などが写真から感じられる。これは間違いなくレンズの力ですね。
ホオズキの背景に鮮やかさが欲しいと思っていたら、ちょうどピンク色の傘が。背景のボケ味が優しいレンズなので、メインの被写体がさりげなく際立ってくる! このボケ味、ストーリー性を作り出すために必要な条件なんですよ。背景の2つの電球が丸くボケてくれたのもお気に入りのポイント。ただ、最短撮影距離は0.39m。正直、もうちょっと「寄り」で撮れたらなあ!
何を撮ったと思いますか? じつは曇り空を反映した水たまり。見る角度によって映り込む風景が変わるところが面白いです。水面に反射する像はボンヤリと映ってしまうものですが、フォーカス部分はバチっとシャープで、アウトフォーカス部はなだらかなボケ味を出してくれました。撮影条件が厳しい条件のときこそ、レンズの性能や実力の差がよく見えてきます。
窓からは柔らかくて優しい光。この空気をそのまま写し止めたくて自然光で撮影しました。これもRF28-70mm F2 L USMを信じたから。カメラを構えると背景からの逆光が思ったよりも強く、フレアでモヤっとした写真になるのではと心配しましたが、杞憂だったようです。その場で感じた光の量を全てこのレンズが受け止めてくれました。想像したとおりの仕上がりに大満足!
開放絞りがF2なのだから、F2で撮ってみようじゃないかとチャレンジ。雨降る夜の東京スカイツリーを手持ちで撮影しました。手持ちですよ! 展望台付近はモヤっていますが、拡大するとシャープな描写に息を飲みました。さすがの高解像度。
「単焦点レンズと同等の画質」といわれますが、確かにズームレンズとしては驚異的な画質。このレンズでしか撮れないものがあると納得!
写してみたかったのは、雨の日のしっとりとした空気感。この写真で驚いたのは、しっとりとした空気そのものが写真の中で生きていること! 湿度、温度、葉っぱの表面を濡らす雨の質感も含めた、肉眼では感じ取れない情報が写っている。光の捉え方もハイライトからシャドウ部に向かってなだらかにトーンを作っていて、本当にいいレンズだなあと見入ってしまいました。
これまでにない情報密度。ズームレンズとは思えない別格の画質。
RF28-70mm F2 L USMは、比較の対象が見つからない「オンリーワン」のレンズです。F2の単焦点レンズを何本も持っているのと同じ威力があるというのかな。ズームレンズでは得られない画質が得られる別格ズーム。この一本で広角から中望遠域を単焦点レンズにも勝るとも劣らない高画質でカバーできるのだから、考えようによってはコストパフォーマンスも優秀!
ただ、小型高倍率ズームレンズのような携帯性、利便性には乏しい。大きくて重い。手ブレ補正機構(IS)なしなのが気になる人もいるでしょう(IS搭載だったらもっと大きく重くなっていたかも)。でも、それらを補ってあまりあるダイナミックな世界観を描き出せる。すべて「最高画質を追求するため」と納得させる描写力がある。これは「すごい」の一言!
その魅力を一言で言うなら、こういうことだと思います。