RF100mm F2.8 L MACRO IS USM インプレッションー写真家・川合麻紀
公開日:2023年7月27日
「寄って撮る」「ボケを変えて撮る」
写真表現が広げられるレンズです
「彩り写真家」として華やかな色彩に満ちた
写真作品を
発表する川合麻紀さん。
川合さんが愛用するマクロレンズ、
RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの
魅力や
お気に入りのポイントを紹介します。
川合麻紀
彩り写真家。色彩や配色にこだわった花写真やイルミネーションをメインに
作品づくりをしている。多重露出、ブレやボケなどを生かした表現も
得意とする。並行して、企業や行政機関などの広報用撮影も行っている。
タンポポの綿毛の上の滴に、背景に置いたバラの花を映し込んでいます。まるで水滴にバラが閉じ込められたみたいに見えますね。RF100mm F2.8 L MACRO IS USMの最短撮影距離で撮影。タンポポの綿毛の上の滴は3mm程度。画面縦方向に対して、1/6弱くらいのサイズ感になります。レンズ先端から被写体までの距離は8.6cm程度です。
本格的なマクロ撮影を楽しみましょう
本格的な
マクロ撮影を楽しみましょう
表現を広げ、マクロ撮影を
追求するのに最適なレンズ
小さな花や昆虫撮影にぴったりなマクロレンズ。RFレンズには焦点距離の違うマクロレンズが現時点で4本あります。その中で、被写体をより大きく撮影できるのが、RF100mm F2.8 L MACRO IS USM。最大撮影倍率1.4倍の本格的なマクロレンズです。もちろん遠くも撮影できます。F2.8の明るい中望遠レンズとしての使い勝手もよく、無意識に被写体に寄っても問題なくピントが合い、遠距離も超近距離もストレスなく撮影できます。APS-Cセンサーのボディーなら最大撮影倍率は1.4倍以上になります。フルサイズのカメラならクロップしてさらに大きくしてもいいと思います。
ページ下方ではSAコントロール機能を紹介しています。私がこのマクロレンズを買った理由の一つがこの機能です。ボケ味を2通りに変化させることができます。またオールドレンズなどの柔らかい描写を楽しんでいる方にもうれしい機能です。いろいろな表現方法の可能性として一度使ってみてください。コツは被写体に寄りすぎず、背景を少し広めにして構図を作ること。ちょっと変わったボケ味、ぜひ楽しんでください。
小さな被写体が
「大きな世界」として写せます
植物は普通に眺めていても美しいのですが、マクロレンズで寄ってみると、小さな虫の目線になり、大きな世界に変化します。ムスカリの一つ一つの花はベルのようなかわいい形状、桜の花も空に飛んでいくようなイメージ。ファインダーをのぞいたときの発見を楽しみましょう。
アップで撮影するほど
違うものにも見えてくるマクロ撮影
蝶の羽を一番大きく撮れる状態、1.4倍で撮影してみました。キラキラと輝いて、まるで宇宙、星がキラキラとまたたく夜空のようです。見る人に被写体を明かさなければ蝶とはわからないかもしれません。マクロ撮影の面白さの一つには、実際に目で見ているものとは違って見えることが挙げられます。花びらの縁や棘などもアップで撮影してみると何か違うものに見えてきます。そんな発見を楽しんでみましょう。
クッキリ見せたい時は
絞りを絞ってみても
マクロレンズは小さなものを大きく撮ることができるレンズです。小さい被写体といえば、自然の物だけでなく、アクセサリーや時計などを被写体にしてもいいですね。お気に入りの小物や、自分で作った雑貨、小さなお菓子などの撮影にも使ってみてください。ダリアの花に、指輪を固定して撮影してみました。被写体にすごく寄って撮影すると、ピントの合う範囲はとても狭くなるので、少しクッキリ見せたい場合には絞りを絞ってみてもいいと思います。この写真は絞りをF8.0にして撮影しています。
SAコントロールリングで
ボケ描写を操って独特の表現を楽しみましょう
SAコントロールリングで
ボケ描写を操って
独特の表現を楽しみましょう
ボケの輪郭を柔らかく↔硬く
調整することができる機能です
「SAコントロールリング」を−(マイナス)側に回すと、ピント位置よりも後ろ、背景のボケの輪郭が柔らかくなり、ピント位置より手前のボケの輪郭が硬くなります。+(プラス)側は背景が硬く、前ボケが柔らかくなります。+側、−側のどちらに回しても、ピントを合わせた被写体はソフトフォーカスになります。
「SA−」「SA+」での描写を活用
メイン被写体をにじませながら
背景ボケも
柔らかくして
ファンタジックな印象に
「SA−」の写真はSA−2です。画面中央近くの枝垂れているミモザの枝にピントを合わせています。ピントを合わせた部分はソフトフォーカスになり、背景の桜は少し渦を巻いたようにフワーっとぼけます。手前左のミモザの花は輪郭がリングボケになります。「SAコントロールリング」を中央付近に戻すと、背景や前景の雰囲気は普通に近くなり、ピント部分もシャープになります。「SA±0」の写真はノーマルの状態で撮影したものです。
EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/500秒・ISO 400(2枚とも)
「SA+」でのにぎやかな背景ボケで
楽しい雰囲気の写真に
背景の「シャボン玉ボケ」で
面白い表現が可能です
「SA+」の写真はSA+2です。ピントは画面中央近くの光を浴びたムラサキハナナです。ピント部分がソフトになるのはSA−と同様。背景のミツバツツジは輪郭が硬い「シャボン玉ボケ」になり、炭酸飲料の気泡のようなにぎやかなボケになりました。前ボケはソフトになり渦巻くのですが、この写真では分かりません。背景のボケの印象は、被写体と背景との距離で大きく変わるのでいろいろな条件で試してみてください。「SA±0」の写真はノーマルの状態で撮影したものです。
EOS R5・RF100mm F2.8 L MACRO IS USM・F2.8・1/350秒・ISO200(2枚とも)
手ブレ補正を生かして
軽快に手持ち撮影を行いましょう
手持ち撮影で気軽に
高画質なマクロ撮影が可能です
RF100mm F2.8 L MACRO IS USMは手ブレ補正効果が5.0段※。ボディー内5軸手ブレ補正機構を搭載するボディーとの組み合わせでは、協調制御で最大8.0段※の補正力があります。100mmのレンズの手ブレ限界がおおよそ1/125秒だとすると、数値上は2秒まで補正できるということになります。ただ通常の撮影では風での被写体ブレもありますし、大きい倍率で撮っているとちょっとの動きが大きく影響するので、このアジサイの撮影では1/125秒で撮影しています。状況に合わせて感度設定をするといいと思います。 ※CIPA規格に準拠。
抽象画を描くように
いろいろなものに寄ってみましょう
温室で植物の葉に寄って構図を作ってみました。画面が葉っぱだけになるように寄ってみると、模様だけが浅い範囲で浮き上がって見えました。自然の造形はそれだけで芸術的です。抽象画を描くように、いろいろなものに寄って撮影してみましょう。ブラさないように、ISO感度の下限を1/125秒にして撮影しています。